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兄の一生

気づいたときから、ぼくらはひとつの名前を分け合った。

この人生しか知らないぼくらにはそれが普通だった。


「お母さま、ぼくはどうなるの?」

「あなたも、王になるのよ」

「ええ? ふたりで王さまになるの?」


お母さまは首をふった。違うみたい。ぼくを抱きしめた。

「あなたたちが、ただ、わたくしの子どもとして生まれてきたなら、こんな…」

「お母さま?」


お母さまはひとりごとを言いながら泣き出してしまうことがよくあった。

ぼくは、お母さまは悪くないよ、としか言えなかった。


-----


面白い! だから授業はいつも、厚いカーテンに仕切られてたのか!

先生にも使用人にも僕達が二人いることは内緒だなんて、物語のスパイみたいだ!


お母様が乳母に任せず僕たちを育ててくれたのも、そういうことだったのかな?

二人が一人になるって何だよって感じだし、お母様は心を病まれているから本気にしても仕方ないんだけど、要は二人で公務をやりなさいってことかな。


お母様の話を聞いていると、なぜ?っていろいろ考えないでもないけど、お母様をなだめるのも疲れてしまった。

僕達の区別もつかない人達ばかりだし、どっちでもいいんだろう。それに弟の方が性格も良いし、王にも向いてると思う。


この国の王子として生まれたからには、役目は果たすつもりだから、その時が来るまでは楽しく過ごさせてもらおう。


-----


(なるほど)


盛装で現れた美しい彼女を前にして、私は自分の役割を理解した。


馬車だって一頭より二頭の方が良い。しかし人間も人間の糧となるとは、これはまた…

(倫理観を度外視することで飛躍した技術って感じですね。なかなか禍々しい感じです)


自分は弟の糧となるために生きていたのだ。母は狂ってなどいなかったのかも知れない。そんなお告げを誰から聞いたのか知らないが。

それか、私も母と同じ、そっち側になってしまったからこんな妄想をしているのか。


(弟はどうなるんでしょう…いや、関係ないか)

この国は知らないが、王家はもう終わりだろうし。


それより、最後に見たのが彼女だというのは悪くない。

なかなか劇的な終わり方だと思う。劇にするなら女優は私に選ばせてほしいが…


「まぁ、やっとドレスを見せられて満足したわ」

「もしかして、私に見せるために着て来てくださったんですか?」

「違うわ。この状況でどんな感想が出てくるか気になったの」


(やはり貴女の役を演じられる人なんて私には思い浮かばないな)


こうやって笑いあえる人生の最後なら、ハッピーエンドかも知れない。


あなたを愛したのは私だけかもしれない、それが嬉しい。

私が私であるうちに、あなたが終わらせてくれるなら、この人生が愛しい。


どうでもいいけど女の一生の作者がサッフォーだと思ってて、今すごくびっくりしてます。LiLiCoさんだと思ったらIKKOさんだったくらい大きな間違いをしてました。ジブレー達は川に沈めないかわりに水辺にて程の濡れ場もありません。

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