お母様のむなくそな過去
強大な国王の娘には、近隣諸国からの縁談が引く手数多だった。
そして当時、最も力のあった隣国の王に嫁いでいった。
「家柄だけの世間知らずに何ができる?」
「王子さえ産めばそれで良い」
夫は優しい笑顔の裏で、私にだけ見せる顔があった。
死に物狂いでこの国について学んでも、学んでも、夫は認めてくれなかった。
今では外交を任されることはおろか、城から出ることも許されなくなった。
「じゃあ、1人で生きていけるのか?」
「働いたことも無いくせに」
生まれた瞬間から他国に嫁ぐために生きてきた私に、他にどんな生き方があったの?
それに、私なりに、あなたを支えてるつもりだった。
どんな言葉を投げつけられても、何もかも否定されているうちに、逆らう気力も無くなっていった。
「やっと産んだと思ったら女か」
「我が国の血を絶えさせるために遣わされた悪魔なんじゃないか?」
私がうまくできないから、夫は私にだけこんなに怒るんだと思ってた。
恥ずかしくて、申し訳なくて、誰にも言えなかった。
言う相手も、もう私にはいないけれど。
「役に立たないお前は役に立たないものしか産めないんだな」
でも、娘を馬鹿にされて目が覚めた。
この子は私にしか産めないもの。
夫にだってできないわ。
あんな分からない人に傷つけられたりしない。
すっかりお飾りの王妃様には何の力もない代わりに、時間がある。
娘に読み聞かせるために、お姫様と王子様が結ばれる、素敵なお話を描いた。