18歳の再会
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カルヴァドス公国の宗教的自由に対する侵害
現国家元首に対する侮辱行為
ヒーラック国軍による公国民への略奪行為
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上記が、宣戦布告に記載された主な国交断絶の理由とされた。
開戦から降伏までは、異例の早さで進んだ。
宣戦布告からたった数日。
「ここまで何もできないとは」
もはや戦地からの報告も追い付かないため正確な状況は分からないが、ジブレーの魔法が異常だということは確かだ。
(和平交渉は向こうの題目上、難しいでしょうね。停戦条件だけでも交渉できないか…)
彼の思考は、そこで止まった。
仮にも戦地である敵国の中枢に、彼女は一人、いとも容易く現れた。
「久々に会ったわね」
彼は彼女から目を離すことができなかった。
なぜ? どうやってここに? 父の死も貴女が?
様々な疑問が彼の頭を巡ったが、それを口にすることに意味がないのは明白だった。
チェックメイトになった時点でキングは相手のものなのだから。
「本当ですね。会いたかったですよ、ずっと」
どんな場所でも、表情でも、彼にとって彼女は変わらず美しかった。
「やはりあなたは赤が似合いますね。繊細に重ねられた袖の布地は夢のように揺れて、あなたの美しさをよく引き立てています」
彼は素直に思ったことを口にした。彼女は無表情のまま、瞳だけが揺れた。
「よく思いつくわね。その言葉、過去の私が聞いたら喜ぶわ」
「自然に出てくるんですよ。過去に戻って15歳のあなたを抱き締めることができたらと、恐れ多くも思いました」
「そう。15歳のあなたを引っ叩けなかったのは私も悔いが残るわ」
彼は笑顔で応え、彼女は笑顔を見せた。
そしてキングはクイーンによって倒され、ヒーラックはカルヴァドス公国の支配下に置かれた。
若すぎた王には跡継ぎがおらず、遠縁の王族を代表に据え、戦後処理が粛々と進められた。
こうしてカルヴァドス公国は隣国を手中に収め、更なる力を手にした。




