シャロットの帰郷
シャロットが眠る棺は、長い時間をかけて彼女の故郷へ上陸した。
(思えば、いつも話の中心にいたのは彼女だったな)
人数の割に、静かな旅だった。
馬車と船を乗り継ぎ、ようやく一行が島に降り立ったのは、出発から5日後だった。
船着き場は賑わいがあったが、少し歩くと人の代わりに羊ばかりの草原が広がり、王都とは別世界のようだった。
目的地となる教会の門には、黒い服に身を包んだ二人の人物が立っていた。
「遠路はるばるようこそお越しくださいました。司祭のレースと申します」
「初めてお目にかかります。司祭の手伝いをしております、テラシアと申します」
二人とも黒いフードに覆われて顔は見えないが、レースと名乗った方は老人のようだった。
レースに促され、一行はシャロットの棺を教会内の祭室へ運んだ。
何度見ても眠っているようにしか見えない姿に、タリスは棺を開ける度に不思議な気持ちになった。
葬儀を終えても、火葬でもしない限り彼は自身が彼女の目覚めを待ってしまいそうな気がした。
(いや、火葬どころか、埋葬することもまだ受け止められないかもしれない)
長い時間をかけて、ロウとタリスは棺から離れた。
祭室と教会の周囲に最低限の護衛を残し、レースはロウとタリスを司祭の小屋に案内し、4人分の茶器を用意した。
「おじいさま、私の分は不要です」
先程から静かに控えていた黒い服の者がレースの方へ歩み寄った。
「これこれ、室内ではフードを取らんか。あとこっちに座れ。それに今回はただの紅茶だで心配するな」
「失礼しました」
はっとした様子でフードを外し、テラシアはロウの正面に座った。
彼女の動作に合わせて、金の髪が揺れた。




