テラシアの初任務
いつも人と話すことに躊躇や緊張など感じなかったテラシアだが、今回はいささか緊張していた。
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「こちらが、お嬢様のお手紙ですね…」
ジブレーの部屋にて、テラシアは一通の封筒を見つめた。
「えぇ、本当は直接シャロットさんに渡したいのだけど。いわば同級生なのにお使いを頼んでしまっていいのかしら」
「それはもちろんです! 私も、シャロットさんって方と話してみたいですし、お嬢様のお役に立ちたいです!」
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テラシアは意を決して、食堂でランチを楽しむ生徒達の席を回った。
手には食堂の責任者が作ったフルーツケーキがいっぱいのカゴを抱えていた。
(この中にシャロットさんがいるかもしれない…よし!)
「失礼します! こちら、テスト明けの生徒さんたちにボスからのサービスです!」
テーブルに置かれたフルーツケーキを見て、シャロットは目を輝かせた。
「いいんですか? ありがとうございます!」
シャロットが見せる輝くばかりの笑顔にテラシアまで嬉しくなり、ひととき緊張を忘れた。
「もちろん! へへ、ありがとうございます。味見したけど、おいしかったですよ」
「楽しみだなぁ…あれ? そういえば初めて見かけますね」
早速フルーツケーキを手に取ったところで、シャロットがふと見慣れぬ存在に興味を持った。
「はい! 今日から食堂でお世話になってます、テラシアと言います!」
「我々と同い年くらいに見えるが、もう働いているのか?」
シャロットの正面に座っていたタリスが話に加わった。
「そうですね、11歳です、あっでも一応来年から2学年に編入する予定です」
「ほんとに同い年だったのね。テラシアさん、私シャロットっていいます。よろしくね!」
「私はタリスだ。期の途中から編入することはできないのか?」
(シャロット!? この人がシャロットさんか! うわー!)
「えっ? あっ、はい! えぇと、急だったので途中からになりました、学校が初めてなので、むしろちょうどいいんですよ」
何とか質問に答えたものの、動揺が挙動に出た。
「学校が初めてなら私と同じね。良かったらだけど、力になれることがあったら教えてね」
親近感を感じたシャロットは、テラシアに微笑んだ。彼女にとっては渡りに船だった。
「本当ですか! 実は心細かったので、うれしいです! ランチタイムと夕食時以外は大体ヒマなので、学校のこととか、教えてもらえたら嬉しいです!」
テラシアは飛び上がって喜び、シャロットとの交流が始まった。




