動き出す関係
テラシアは、学校へ向かう列車の座席で屍と化しているジブレーに水を差し出した。
「お嬢様…」
「…」
何とか頭を起こし、水を受け取りながら、ジブレーは何とか感謝を伝えようと何度か頷いた。
テラシアは微笑むと、ジブレーが生気を取り戻すまで、大人しく学校の地図を広げた。
「お、ジブレーお手製の学校案内図ね」
ヴィンのおかげである程度の教養はあるものの、知らない環境に身を投じることに不安や緊張はあった。
(それでも、ちゃんと卒業できれば色んな仕事を選べるようになるし、お給料だって全然違う)
何より、彼女は彼女自身の力で生きていくチャンスを掴めたことに、大きな喜びを感じていた。
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「あら、持ってきてくれていたのね」
正常運転に戻ったジブレーは、テラシアが熟読している学校案内図を見つけた。
「もちろんです! ジブレー様は絵もお上手で、とても読みやすいです!」
「ふふふ、なんでも褒めてくれるから本気にしてしまうわ」
列車が大きく減速したことで、ジブレーはようやく学校に到着する目前だと気付いた。
(サイティ、またしばらく話せないのね)
「あら~、テラシアがいるから大丈夫よ? 私はいつも通りウロチョロしてるし」
(そうね、見えなくてもいてくれるって思うと心強いわ)
テラシアとは食堂で別れ、ジブレーは学生寮に向かった。
その後、食堂の責任者に挨拶したテラシアに学内を紹介しながら、試験休みを終えた。
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「…本物?」
校内をのびのび散策する二人を、驚愕とともに見つめる者がいた。
思わず彼女達から隠れ、気を落ち着かせてから改めて確かめたが、並んで歩いていたのは確かにジブレーとテラシアだった。
「え?なんで?どうなってるの?それじゃあ…」
(シャロットはいつ死ぬの?)
テラシアの転入は誰にとっても予想外だった。




