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悪役令嬢14歳の春

今日の授業を終えたジブレーは、制服を脱いで新しく買った私服に身を包んだ。



「毎回よく思いつくわね」

「次々に新たな魅力を見せてくれる女神様を目にすると、自然に出てくるんですよ」


どんな格好をしても、ロウ・カスクと名乗った彼は必ず褒めてくれた。呆れた表情を見せつつも、無条件で肯定されるこの時間が、ジブレーの中で大切になっていた。


彼は生徒ではないため頻繁には会えないが、留学している生徒の様子を母国に報告したり、逆に母国の様子を留学生に伝えたり、連絡役として月に1,2度学校を訪れるらしい。

「うちの若様は留学したばかりで連絡系の魔法も使えないのですが、そのおかげでこうして貴女に会えると思うと感謝に堪えません」


「そう、ね、… ! まぁ、あなたがそう思うのは自由だわ」

思わず同意しかけたジブレーは、これはいけないと慌てて返事を修正した。



最初はどんな魂胆があるのかと構えていたが、初めて出会った日から数か月、彼はジブレーに何を求めるでもなく、たまに学校へ現れては駅前広場の店で食事をしたり、校内庭園のテラスでお茶をしたり、他愛のない会話をして過ごすだけだった。


ジブレーは拍子抜けしたものの、他に用がある訳でもないから(一人では入りにくいお店に行けるから)と会う回数を重ねるうちに、次はいつ会えるのかと考えはじめていた。



今日も、そんな何気ない会話が終わり、彼はジブレーに合わせてデザートと紅茶を楽しんだ後、いつものように帰り支度を始めた。

「来月は、いつ来るか決まってるの…?」

思わず、ジブレーは尋ねていた。


今までは、彼がふらりと学校に現れ、たまたま出くわしたジブレーが食事に誘われ、たまたま暇だったらそれに付き合うだけだった。たとえジブレーが決まった場所で、同じ本を広げて落ち着かない様子で待っていたとしても、彼女の口から「次」を聞いたのは初めてだった。


彼はそれを知ってか知らずか、嬉しそうに首を傾げながらジブレーに微笑みかけた。

「そうですね、今回は急ぎの伝達事項も無いので、ひと月後の同じ日を予定していますが…」



「次に会う約束を、私としてくださいますか?」

見つめられたその目に、言葉に、ジブレーの心臓が跳ねた。そっぽを向いてしまいたいのに、目をそらすことができず、一言だけ答えた。


「……ええ」


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