やっぱ許せない結婚式当日
(花嫁衣裳はどうして白いのかしら?)
どうでもいいことを考えて気を紛らわせても、塞いだ気分は変わらない。
(私というモノの持ち主が、父から夫へと変わっただけなのに。今更こんなに気分が沈むのは、私にも結婚に夢見ていたものがあるみたい)
純白の花嫁衣装に艶やかな黒髪が映える、伝統的な美しい装いで出番を待つ少女は、15歳とは思えない大人びた表情で、生気のない瞳もまた、15歳とは思えなかった。
役割を終えた化粧道具を片付けながら、サーシャはその小さな花嫁を見つめた。
(王族っていうのも大変ね)
誰よりも高貴な血を引きながら、母親が犯した罪のせいで国を追われて、知らない国の知らない男に売られるなんて。
それにサーシャは知っていた。彼の仕える主人は、「生まれ」だけで人の上に立っているような奴らが大嫌いだということを。
高慢ちきな王女様が嫉妬に狂った母親のとばっちりで平民に落とされたと知り、ならば自分が世間に不慣れな姫様を保護しましょうと申し出たことを。
(旦那様も保護はわかるけど、何も20も下の娘と結婚しなくてもねぇ。まぁ、最初は色々大変でしょうけど、それを支えていかないとね)
自分の娘には幸せな結婚をしてほしいもんだわ、と思いながら、サーシャは自分の仕事を終え、少女を残して控室を出た。
だが、サーシャにも知らないことはあった。
クーデターを恐れる国王が、娘を平民に落とすだけでは足りず国外追放を望んだこと、
「堕ちた王女様」というプレミア玩具の出荷先を提案した者がいたこと、
最高の生まれでありながらも自分の保護「下」におかれる元王女に、しっかりと上下関係を教えてやるのを今か今かと待ち構えている男がいることなど。
一方、それら何もかもを知っていて、何もかもを許せない存在がいた。
それが…
「やっぱ許せなーーーーーい!!!!」