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生贄王子様は夜更かし令嬢を見つめたい  作者: 宇和マチカ


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片付けの甘い部屋に使者

お読み頂き有難う御座います。

王宮からの使者が様子見に派遣されて来ました。

 …………。

 此処は、我がタウンハウスの応接室。ああ、昔から飾ってある領地の絵の額縁に埃が!目の前の衝立の模様に埃&手型が!!

 ……滅多に使わないから、若干掃除が……甘い!!

 コチコチカチ……コチ、と。我が家に何時から有るか不明の、十二時に不気味な人形の出てくる仕掛け時計の音が心臓の音と共に響くわ。


 ……何故後回しにせず、片付けておかなかったのかしら。

 凹んで仕事してないで、先ず、このタウンハウスを大掃除すべきだったのに。

 どうか、色々な粗が、バレないで……!!


「デュバル嬢、お加減は」

「よ、良いようです、と主が申しております」


 噛む所まで再現せんで良いのよ!ノリー!

 ……因みに、ノリーはモリーの姉なの。来客の豪華さにモリーが緊張で舌を噛んだもんだから、バトンタッチすることになったのよ。


 そう、その……豪華ゲストいえ、王宮からのご使者様は……。


「すみませんね、突然お邪魔して」

「スパークル侯爵家の方にお目にかかれて光栄ですすすす、と主が申しております」

「いえそんな、侯爵家と言えども、私はしがない三男ですしね」


 だから、言い間違いもスルーしてよ!!

 とヒソヒソ声で言おうとしたら、またそのまま言おうとしてるわこの子!!止めて!緊張するのは分かるけど!!


 はあ。どうしたもんか。……何でこんなややこしい時に来られるのかしら。

 出来れば、もっと……こう。ねえ?


 今日は王宮からの使者様をお迎えしたの。

 何と!

 私が救われて以来、憧れていた……あの!

 彼の方に愛される為に顔を変えたいと迄願った、憧れの、輝かしき騎士様。

 キレット・スパークル様の……!!

 スパークル侯爵家のご次男の!!


 弟様が!!


 ……そう、弟様がいらしたの。

 …………うん、御本人が来る訳無いわね。職種が違うのよ。メゲてないわよ。


 何故貴方が……!?実は貴女に密かにフォーリンラブで、姿が見えなくて超心配!文官が来る予定だったけど、来ちゃいました!

 だって君は震える僕の心を温める星……!!


 ……とまあ、訪ねてこられた使者様のご家名を伺った時に0.3秒でそんなストーリーが過ぎったけどね。


 お名前が違うって執事に突っ込まれて終わったわ。さよなら私の夢物語。

 そんな少女小説みたいな展開無いって知ってたけどー。

 メゲてないわ。ええ、メゲてない。……はあ。

 お声は似て……あまり似ておられないわね。衝立とヴェール越しでは顔をサッパリ。お兄様似のイケメンなのかしら。その辺は後でリサーチしたいわ……。


「……衝立越しでよく分かりませんけど、このお部屋、黒っぽいですね」

「!?」


 何と、この部屋まで煤が……!?え、何処に!?

 使ってなかったから、まさか、更に灰が掻き出せていない!?この白いのは埃でなく、灰!?

 ……いかんわ。ちょっと明日は使用人全員集めて大掃除よ。


「最近、隣の隣のヨカゲツの……大使、ジョエル様がよくお見えだとか。何かプレッシャーを掛けられたりされておられませんか?」

「……い、いいえ?仲良くして頂いてますと主が申しております」


 ……お、おおう。まさか、もしかして私!?スパイ容疑を!?

 そんな!私、何も!本当に仕事しかしてないのに!!

 と言うか、そんな事が出来る器用さなんて無いのに!!今、顔の関係で色仕掛も無理だし!!って、そうしゃなくても無理ね!くすん!


「どちらかと言うと、室内に居られる方なのに、よくお知り合いになられましたね」


 ……ええと、ええと……ああそうだ!


「わ、私の帽子にご興味を持たれたのが切っ掛けだと主が申しております」

「帽子?……ほう。魔道具か何かですか?」


 マドーグとは。帽子屋?それとも新たなお菓子屋さんかしら。話の流れ的に、帽子屋の方を聞いた方が良さそうかしら。


「マドーグ?帽子屋でしょうか、と主が申しております」

「いや、魔法の……。気の所為?

 でも、この国じゃ珍しい闇の気配……?」


 ……ギクウ!

 ま、魔物カテゴリに分類されて、ジョエル様にこの前も闇を纏ってる?とか言われた……その手のお話!?


 でもやったね!だって、誤魔化そうにも知識がない!

 無知な魔物カテゴリとして、語れないものは誤魔化せない!

 無知の勝利!


「魔法のお話はジョエル様から少し聞きました、お伽話のようで楽しいですね、と主が申しております」

「……デュバル家に魔法の心得は?」

「当家は武骨者ばかりで、その手の知識に疎く申し訳有りません、と主が申しております」


 やっとこさ慣れてきたわね、ノリー。良いわよ!

 息継ぎの仕方が漸くナチュラルになってきたわ。


「ふむ……まあ、闇纏い、いや病み上がりのご令嬢を疲れさせても無作法ですね。何となく分かりました。マークしておきます」


 ふうー!やれやれ、やっと終わったかしら。長かったなぁ!

 ノリーも伝言に慣れた頃に……って。


 ……え?

 何ですと?


「最近、各国で小規模なテロ行為が頻発して、ヨカゲツ国の関与が疑われています」

「え……」

「え、と主が申しております……」


 いやもう言っちゃったし!!ワンテンポ遅いわノリー!!じゃ、なくて!


「貴女が頑なに何を隠されているかは、今は暴きませんが……」


 その時メガネが光った!と後でノリーが言ってたけれど、私はそれ所じゃ無かったの。


「闇纏いで有るなら、王宮へ保護を求めなさい。大使殿に……利用される前に」


 そして格好良く去っていったそうだけれど、どうでもいいわ。


「ええ……?」


 ……いや、どういう事よ。

 そんな思わせぶりな科白を残して……。

 具体的な解決策とか一切無しで、私貴女の事情悟ってますよ!みたいな雰囲気で帰られても……。


 でも、私がそのヤミマトイ?とやらに該当するなら……迂闊に喋ったら一族郎党討伐されるパターンでしょ?

 だって、この国……基本、排他的で、マイナスイメージの非現実的な者が嫌いだもの。妖精とか可愛くてキラキラ系は好きらしいけど。

 流石に分かってるわよ……。だって、今の私は見るからに禍々しい。


 いや、もう……滅茶苦茶考えて疲れた!!でも、手紙を書かなきゃならないわ。



思わせぶりな憧れの人の弟。都合良く光るメガネ装備です。

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