生贄になった王子様達
お読み頂き有難う御座います。
生贄王子様視点です。残酷な幼少期が御座います。お気をつけを。
ヨカゲツは、見掛けは人であるが、知能豊かな悪魔の国だ。
幼少期を過ごしてきたから、自信を持って言える。
「お前達は良き生贄となる為、生かしてやる」
親という化け物に告げられた言葉は、他よりは未だマシだった筈だ。
生まれた国……ヨカゲツでは、ある一定の歳まで、余所の国の育児放棄気味の子供と同じように育てられる。
若しくは、雇い人に任せきり。
基本的にヨカゲツに住まう魔法使い……本と実験に齧り付く馬鹿には子供の世話など出来ない。
だが、ある日。
親の名を騙る悪魔共は、生き延びた我が子に告げる。
余所の子供よりも知能が無駄に高く、意味が解ってしまう子供に敢えて残酷に。
「お前は今から実験道具だ」
ヨカゲツの魔法使いにとって、ふたりめ以降の子供は、売り物ですらなく、親の好奇心を満たすだけの、玩具となる。
色んな酷いことが行われていると聞くが、確認する術はない。大体が閉じ込められて命を終えるから。
僕が知る家……王家に生まれた跡継ぎ以外の弱々しい兄弟は、ある程度育てられて魔物に放り投げて暴走させ、国の資源を奪う為の生贄。
魔物は魔力を喰らう生き物だから、ピッタリだと。
外に出れるだけマシだったのかもしれない。
心と体を壊される子供も増えていき……ヨカゲツの魔法使いは、滅びに向かっている。
まあ、クリアラ嬢の叔母様には薄々バレてたみたいだしね。内情は素直に吐いたよ。
でないと滅茶苦茶怖かったしね。ある程度頭脳労働は可能だけど。何せ栄養失調気味だし訓練も受けてないし魔力もショボいし、戦う術は無いんだ。
「よ、ヨカゲツとやらに討伐隊を組むべきです!!うおあああ!!」
「全くですデュバル嬢!!」
何も無い空間から水が溢れてくる。
涙だ。涙が襟に染み込んでいく。
透明な、優しい涙が。
でも、ついでに闇も溢れてくる。黒ずんだモヤ……。何度見ても凄いなこれ。
そして横に居た騎士が暑苦しかった。
僕に同情してこんなになってるのか。どれだけ善良なんだ。人の頭なんて簡単に砕けるような怪力の、魔物騎士デュラハンなのに。
こっそり実家の図書館から持ってきた魔物図鑑に載っていた憧れの魔物な令嬢は……ピュアだよなぁ。
精霊纏いだか精霊憑きの家とやらも、単純な造りだ。
「善良だね」
「ぐほっあ……ゆ、許すまじ……」
「お嬢様……!!」
この使用人も暴走したとは言え、主人思いだしね。良い環境だ。
騎士は弾丸のように帰っていった。どうやら僕の境遇を訴えて何とかしてくれる気らしい。本当だろうか。お人好しにも程がなかろうか。
「クリアラ嬢、クリアラ」
「ぐっ、うう……すみません。取り乱しました」
「大丈夫?」
暑苦しい騎士を帰してから、分かったことがある。
近寄ると……と言うか、触れると。僕の弱い魔力が彼女の顔に当たるらしい。すると、うっすら彼女の顔の輪郭が浮かんでくるのだ。
また、邸を引っくり返したような大騒ぎになった。
その甲斐も有りか無しかは知らないが。
クリアラ嬢とあの騎士が庇ってくれて蟄居というか、軟禁で済んだ。だが、正直、この能力のお陰で首を刎ねられなかった気もする。
何なんだろう。僕の……いや、兄弟姉妹の魔力は、魔物に好かれるということなのだろうか?
あまりの忙しさに即日Uターン帰還してしまったリゾナ殿と手紙をやり取りしていると、他の兄弟姉妹の所でも姿を変えた魔物の人達を元に戻したりしているらしい。
「魔物に好まれる魔力……なのか」
「まあ!相性が良いんでしょうか!?
でもこう、癒やし効果が顔に掛かってる気がしますわ、ジョエル様。美顔器的な……。顔を触るとモチっとしてきた気が致しますの」
「それは良かった」
何時の間にか、クリアラ嬢から溢れ、足元を覆っていた闇も消えている。
僕の魔力に美顔器的な威力……?本当にそんな効果は有るのかは知らないが、次の日には彼女の髪の色がうっすらと見えてきた。
鈍く光る黒……いや、もう少し、ほんの少しだけ薄い。これは、結構錆びた銀の色に近い?
「だ、脱色されてますわあああ!?何故!?」
「え、そう?」
「地味な黒い剛毛が、更に地味なカラーリングに!!もっとこう、キラキラ銀髪でなく、黒ずんだ色に!!」
クリアラ嬢の髪の元の色は黒だったのか。その髪を見てみたい気もしたが……。
「そう悲嘆した物でもないし、僕は好きだよ。落ち着いてて良いじゃないか。錆びたような銀も趣が有って」
「えっ、えっ……そ、そうですか?お好みならやったあですけど……」
「……うう、お嬢様がどんどん丸め込まれてるような気が……確かに素敵な御色目でお似合いですけど!!
お嬢様!使用人皆揃って、この髪色もお似合いだと大絶賛です!」
執事が涙ながらにクリアラ嬢へと訴えかけている。
重ねて此処の使用人は、主人同様面白くて善良なようだ。
平和だ。
窓の外を飛ぶ鳥は大きく、餌を食べ過ぎな気もするし、庭木を重量オーバーで折った蜂も大き過ぎるけど。
「……ドクロノウエが帰ってきましたわ」
さて、僕が軟禁されている間に色々決まったようだ。
罪を犯した僕の処置は……どうなるのだろうか。
「そう言えば、……何故、君の叔母様は何故あの鳥……ドクロノウエで、君に詳細な説明をなさらなかったのかな?」
「余所に入り込んで餌を摘み食いする悪癖が有る鳥に、国家機密は託せませんって……怒られましたわ」
「え?デュラハンの話は……ああそうか。荒唐無稽過ぎて、読んでも空想の産物扱い?」
「お、仰せの通りらしいですわ」
「この話も荒唐無稽だから、読まれても構わないって?」
「た、多分」
成程。隠すと碌な事にならないから却ってオープンに。
……ヨカゲツでは考えられないことだ。頭に乗るドクロノウエが重い。
闇が蔓延ったりするタウンハウスなんですけど、雰囲気は明るいです。




