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生贄王子様は夜更かし令嬢を見つめたい  作者: 宇和マチカ


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12/14

闇の収まった後で

お読み頂き有難う御座います。

叔母様に説教されるクリアラ達です。

「大体、我が家がデュラハンの家系なのは王家も認定済みなのよ!

 でなきゃとっくに討伐隊が組まれて御家断絶されてるでしょ!!」

「なななななうぉ……」


 うおおおおお!!?と、叫びそうになったけれど思わず口を塞いだわ。淑女たるもの、流石に殿方の前では……いや、ジョエル様の前では狼狽えたわね。……うう、でも今は……。お話に集中すべきよね。


 しかし、そんな馬鹿なと叫びたいわ。

 何故、そのデュラハンである当事者の私は何も知らないの。ほら、未だに私ったら透明顔なのよ。


 ……ああはい、憧れの騎士様にも勿論バレましたとも。見るからに頭のない女の体が動いていると言うのに、全然動じられないんだけど、凄いわね……。

 いや、ジョエル様と使用人達もなんだけれど。


「スパークル家も、先代の……あのなってない精霊降ろしから弛んでるわ!」

「ほ、本当にその節は……」


 え、知らない。何そのなってない……オロシって……何?卸売り?

 ハッ、まさか精霊って実は卸業者の隠語なの?でも何の品物を卸すの?とか聞けない位に怒っておられるわ。叔母様は無茶苦茶怖いわね、相変わらず……。


「ああ、あの。物流に大迷惑を巻き起こしたんだったか」


 え、やっぱり卸業者だから?発注ミスでもしたのかしら。隣の隣の国まで響く発注ミスって一体……。と言うか、精霊ってやはり商会か何かなのかしら。辻褄が合うわ……!!


「ジョエル王子殿下!貴方もクリアラを煽った件を反省なさい!!」

「いや、そもそも何で叱られるだけで済むのかな?

 普通におかしいよね。僕はこの国を滅ぼしに派遣されたんだけど」


 はっ!ジョエル様が怒られる気配が!!


「いけませんわ未遂ですわよ!!叔母様!!」

「だったら!!大体、未遂を引き起こすような闇堕ちするなこの馬鹿姪!思い込みが激しくてメンタルの弱い子ね!!」

「うっ!」

「や、止めてあげてください!!クリアラ嬢から闇が!!」


 えっ、また黒ずんだモヤ……もとい闇が発生!?どうしよう!!

 私の落ち込みで発生すんのコレ!?大迷惑ね!?どうしよう!!


「それで、あの。貴女はデュバル家の……」

「当主の妹で、その子の叔母になります」

「あっ、御紹介が遅れましたわ、ジョエル様にスパークル様!叔母のリゾナです!!」

「王子殿下は兎も角、スパークルには名乗りたくもないわ全く!流石精霊降ろし!図々しいメンタルね!」


 そんなそ、怒らなくても……と言えないわ。

 ああ偉そう!!世界で一番とは言わないけれど!この家では一番偉そうだわ叔母様!!慣れていても怖!!


「全く!脳筋がこんな分かり易い小細工に操られて碌でもない!」

「うぅ……」

「いえその、私は騎士団の臨時資材置き場にボヤが先日有りまして。このお屋敷から向かいの土地の現場検証をしておりました。

 そこで……大荷物を出しておられるのを見まして。使用人が慌てて此方に来られましたし、私はこのお屋敷も被害に遭われたのかと誤解して、上官の命の元に……」

「えっ!?そうでしたの!?」


 そんなご事情で我が家へ!?

 偉い人の命令で、私をやっつけに来たんじゃ!?それで逃げ出すと勘違いされたんではなく!?

 それで絶望しちゃったわ、私ったら。メンタル駄目すぎる……。

 ……う、うわあ……。何だか滅茶苦茶勘違いしちゃったの、恥ずかしい!!


「は、はい……そうです。そう言えば弟がデュバル家にアドバイスしたとか何とか言ってたなと……」

「ええ……?」

「アレがアドバイス?」


 あの、モリーの話から聞いてもどう聞いても脅しとか……。滅茶苦茶上からコメントだったし……メガネ光ってたし……。


「弟もその、あまりその、外部というか見知らぬ令嬢とのコミュニケーションが得意ではなく……」


 いいのかしら、それ。叔母様もジョエル様も微妙なお顔だわ。


「スパークルは本当に……見た目と中身が最悪だわ。文官として致命的ね」

「面目有りません……」

「それで、スカスカな理論でブチ込まれたジョエル殿下はどうしますの?」


 スカスカ……。叔母様は口が相変わらずお悪いわ……。


「お縄に着こうか?仕方ないじゃないか。言うことを聞かないなら、国で惨たらしく殺されるんだ」

「そ、そんな……本当ですの!?」


 どんな物騒な国家なの、ヨカゲツ国……。バイオレンスが過ぎるわよ。


「ヨ、ヨカゲツは其処迄腐っているのですか」

「魔法使いの国なんて、利己的な性格破綻者ばかりさ。個人個人の事しか考えないし、何もかも輸入に頼ってボロボロ。輸入出来る金銭も無くなれば奪ってこい……だもんね」


 そんな……。ヨカゲツ国って、そんなにブラック国家なの!?まるで野盗だわ。魔法使いの国なんて、滅茶苦茶イメージでは和やかに発展してそうなのに!

 で、でも……近所の国なのに、何にも情報が伝わってこないって事は……国ぐるみでヤバいってことよね?そんなに恐ろしい国だったなんて……。単に私が田舎者で国際情報惰弱の可能性有るけど……。


「……そ、そう言えば此方に居らした時、とても痩せてらっしゃいましたね」

「何て事、ジョエル様……お、おいたわしい……」

「成程、国ぐるみで王子王女を魔獣人用の起爆剤的に育てて、生物兵器として他国へ」


 そんな……ヨカゲツ国は正気なの!?そんな酷い事を


「その通りです、レディ・デュバル」

「一応嫁いでいるからセーブン子爵夫人よ」


 いやそんなのどうでもいいわよ!!叔母様もクールに突っ込んでる場合じゃないわ!何て……何て境遇でいらっしゃったの!?許されないわ!


「な、何て事を!!」

「許される事では有りませんね……!殿下、是非我が国に亡命を!!」

「だが、私は犯罪を……」

「未遂ですわ!!ねえ叔母様!!ジョエル様をお守りしなければ!!」


 何てお気の毒でおいたわしいジョエル様!!

 キレット様も怒りに震えておいでで、義憤で顔が真っ赤だわ。この方、見た目通り滅茶苦茶良い方なのね……。なんて素敵なのかしら。憧れ……いえ、友愛が湧いてくるわ。


「……単純極まりないわね」

「え?」

「単純な脳筋共のせいで3ヶ月家に帰ってないけど……そもそも、脳筋共のせいで……色々押し付けられて……」


 うっ、叔母様の顔が怖いわ!!何で怒ってるの?た、確かにちょっとオーバーワーク気味なのに、此処まで駆け付けさせて本当に申し訳無いと思っているけど、お、お怒りはもう少し……!!


「……成程、利己的で……ねえ。それで、クリアラを」

「察しの良い方ですね」


 え?何?

 何でそんな怖い顔合戦なの?


「ねえジョエル様、貴方の兄弟姉妹もさぞかし単純な避難先を見付けられたようですわね?」

「よくご存知で。親との仲はマイナスですが、兄弟仲は良いんですよ。魔物が好きで研究テーマにしたい所と、頭脳労働が出来る所も似てますね」

「……ハァ」

「え、叔母様……。どうなさったの?ジョエル様をお救い出来るの?」

「私もスパークル家と、個人としても尽力致したい所存です!」

「有難う、ふたりとも。こんな僕に……」

「そんな!勿体無い」

「泣かないでください、殿下……」


 水色の睫毛に宿る涙が健気だわ……。うう、貰い泣きしてしまいそう。


「此処まで聞いてもそんなノリなの?……善良な気性の脳筋に好かれるコツをよく抑えておいでだわ……。魔力の力?」

「まあ、それなりに」


 正直叔母様とジョエル様、おふたりのお話はよく分からなかったけれど……。

 思い余って健気なジョエル様の御手をスパークル様と包んでいたら、滅茶苦茶叔母様に溜め息を吐かれてしまったわ……。


 で、でもジョエル様の亡命にご尽力頂けるみたい!

 やったわね!心から嬉しいわ!


憧れの騎士様が脳筋気味なのは結構好きです。

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