騒がしきタウンハウス
お読み頂き有難う御座います。
とうとう大掃除決行です。
『王宮の文官に目を付けられた!? 訪れの事を何故早く書かないの! と言うか、うら若い令嬢ひとりの家に殿方を入れたら駄目でしょう!!』
叔母様にお手紙で滅茶苦茶怒られたわ。
いや、どうせいと……。それをご相談すべきだったのね。
私では埒が明かんし討伐されるからと、早馬で叔母様が駆け付けてくださるらしい。
……こ、心強いわ。ただ、不仲と噂の叔父様を護衛にご一緒されるってのが……タウンハウスにブリザードが吹き荒れないかしら。
それにしても、ドッシンバッタンと……下で大掃除中の物音が凄いわね。
「お嬢様、来客です」
「えっ、もう叔母様がお着きなの!? 早すぎじゃない!?」
どんな馬車を使ってるの。馬を良いタイミングで変えても1週間は掛かるのに……。怒りのパワーのせいなの?そんな馬鹿な。
「お嬢様、ジョエル殿下がお見えです」
何ですって!? ジョ、ジョエル様が!?
いや最近よく3日と開けず来られてるけど!! ちょっと今はややこしいのに!
あっ、まさか魔法使いパワーでその辺を察して!?
「ぐへえっ!? お呼びしてないわよ!?
お、お呼びしてないわよお!?」
「ぞ、存じておりますがどう致しましょう。お断りされますか?」
そんな不敬が許される身分なら良かったけれどね……。ええ、無理だろオーラが全員から出ているわ。
で、でもね。
「中庭にご案内……」
「も、物置等の荷物が山と積まれております……」
「応接間……」
「模様替えの為家具が空です……」
「しょ、食堂……」
「こ、この機会に食器や什器のチェック中で……足の踏み場もない状況です……」
……この、大掃除中のタウンハウスで、王族をお迎えするには……何処が相応しいのかしら。
おお、階段に迄荷物が運び出されつつあるわ。
……此処しか無いわよね。
「……未婚のご令嬢の部屋に入っていいのかな」
「申し訳有りません……このような体たらくで」
ドドドドドドッキーン!な展開よね。
まさか、自室に殿方を、それも他国の王子様をお招きするなんて。
今迄こんなドキドキな展開有ったかしら。いいえ、妄想の中でもそんなにないわ!
まあ?現実は? ……全くロマンチックの欠片もないけどー!
「凄い荷物が方々へ出てるね。まさか夜逃げでもするの?」
「い、いえ……!? あの、埃っぽいので、片付けを……」
「そうなんだ。魔道具でもありそうなら見せて欲しいなぁ」
「マドーグ……いえ、魔道具……のようなものは分かりませんわ」
「あの階段に置いてあった黄色い箱、魔力漏れてたな。後で見せて」
「はあ……ガラクタばかりですか」
……何気にチェックされていたわ。あの散らかりようを……。あああ恥ずかしい!!
と言うか、あの箱……物置に放り込んであったひとつよね?魔力って何。そんな怖そうなものが漏れていたの!? 怖!
「それで、王宮から使者が来たんだよね」
「ななな何故それをご存知で」
「この国で精霊に愛された一族って、スパークル侯爵家だろ?」
「せ、精霊に愛された?」
何それ!? 何なのそれ!? 精霊!? そんなオカルト系、私が言うのもなんだけど、非常識では!?
「あれ? 知らない? と言う事は、当代精霊の宿主様が昨日来た男の母親だって知らない?」
「そんなオカルトは存じ上げませんけれど!? 精霊の宿主って」
「まあいいや。それよりその能力を活かして君を視察に来たんだろうね」
よくないや、と強く言えないこの身分差よ……。本当に都会解らない……。この石造りの街並みがお気に入りな精霊が居るの? 木々溢れる辺境よりずっとファンタジーだったの!? そんな馬鹿な……。
でもだからキレット様が麗しくて格好宜しいのか。その辺は首が取れる程ガン振りするわ。納得だわ。まあ誰も見てくれないけど。
「調べたら、精霊に縁が深いこの国で魔物はご法度っぽいしね」
「せ、精霊の話なんて聞いたことが有りませんのに。
いやそれよりやっぱり私はご法度なんですか!? いえ、魔物が好かれるとか、聞いたことが有りませんけれど!」
「高位貴族の間でしか知られてないみたいだけどね」
うう、情報の隠し立て良くないのに……。
そしてやはり私は、討伐される運命なの!? そんな。
「泣いてるの?」
「え?」
「襟が濡れてる。ええと、この辺?」
「えええええええ」
う、うおおおおお!?
い、今! ジョエル様の指が! 私の頬……に!!
こ、これは……。
小説で見たような!傍から見たら乙女の涙を拭う王子様の麗しいシーン……!!
「不思議だねー。触れるのに見えないとか。あ、目玉に刺さってたりしない」
「だ、大丈夫……ですわ」
……傍から見たら空中を触っている王子様……だったけど!
いいえ、こういうのは想像力が大事なのよ!! 実際はちゃんと!
「お嬢様!!」
「いい所に!! 何よ!?」
「え!? いい所?」
「なななな何をされていたんですかお嬢様!! まさか未婚の令嬢の身の上で、王子殿下をムシャムシャ!?」
「何でよ!」
私が襲う側なのかよ!! 確かに魔物カテゴリにされてはいるけど! 只の領地を思う健気かつか弱い令嬢だっての! 酷いわモリー!!
「今の所貪られてないけど、そこの侍女。何が有ったの」
「はっ! そうでした! 大変ですお嬢様!! 通り向こうの空き地に……騎士の一団がやってきたと!! きっと、イチャモンを付けて、お嬢様を捕らえるおつもりですわ!」
「そんな馬鹿な……」
わ、私は、何もしてないのに……。
姿形はそりゃ、こんなのだけれど……。
「……庭に、騎士が来てるね」
「!?」
「さて、やけに仕事が早いなぁ……」
「も、元はと言えば貴方様が此方にいらしたから……」
「え?」
「お嬢様、スパイ疑惑を掛けられておられるのはこの異国の王子様のせいですよ」
「ちょっと、モリー?言い過ぎよ」
何故そんなに青い顔をしているの、モリー。
「ふーん?後ろ暗い事が有りそうだけど……?」
「あ、貴方様がいけないんです。お嬢様の呪いを解いてくださらないから、だから」
「モリー?」
え、何なの?不穏な雰囲気だわ……。
何故、騎士がウチに入ってくるの?招待した覚えはないわよ。
「この侍女が、手引したのかな」
「!?」
そんな、モリーが!? 何故、俯いたままなの……。
「お、お許しください……」
「ちょっと……」
どうして……?
どうしてなの、モリー。
魔の手は誰か。




