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カラスは春告げる  作者: ふく
第2章

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37/57

第37話 日に焼けた君は

カラスは、ウグイスにはなれないのかーー


~男子高校生が高校野球のウグイス嬢を目指すお話~

『業務連絡!今月最後の土日の件です。

土日の市のフラワーアートフェスティバルの司会は、吉森とみとちゃん、日曜の野球部練習試合については現在調整中とのことです。(真野くんにはまたちゃんと説明するね)

今日もお疲れさまでした!吉森』


家に帰ってきてからひと息ついた頃、僕の携帯がブーと鳴った。

放送部のグループラインだ。

放送部は部員数が少ないので、基本的に欠席者がいなければ緊急でない限り、特に連絡は回ってこない。

だけど今日僕が休んだみたいに欠席者がいた場合は、その日部員たちで共有したことがこのように業務連絡として送られてくるのだ。


今月最後の土日の件、市のフラワーアートフェスティバルの話は聞いていた。

毎年、うちの放送部が司会を担当していて、去年は当時新入部員だったみとちゃん先輩が担当してとても好評だったということ。

僕も外部での放送部の活動がどんなものか知るために、可能であれば是非参加して欲しいと吉森先輩から言われていた。だけど……。


「日曜の……野球部練習試合って何だろう」


ついさっきまで、楓くんのお芝居を観てあんなに晴れやかな気持ちになっていたのに、急に僕の心に暗雲が立ち込めてきた。


でも、僕は土、日と続けて開催されるフラワーアート案件に参加するように言われているので、日曜日の予定は決まっているのだ。


「だから、気にしなくて、大丈夫」


なんで、野球部。


僕はそのまま、晩ご飯も食べずにお風呂も入らずに、眠ってしまった。


     


「なんか、髪の毛いつもと違う?」


「……今朝、お風呂入ったから」


「すごいフローラルな香りする」


「急いでて間違えて母さんのシャンプー使っちゃったんだよ!」


思わず大きな声で前田に返してしまい、クラスメイト達の視線を一瞬感じる。

ああ、もうやだ。

以前、楓くんにリアクション芸がどうとか言われたけど、ついこの前はクラスメイトに「前田くんに対してはキレ芸炸裂してるよね」とサラッと言われてしまったのだ。

キレ芸。今のか……。

高校生になってから、気が短くなってる気がする。その自覚はある、カルシウムを摂取しなければ。


「真野くん、朝から良い声出るんだな~さすが」


僕がキレ芸なら、前田は煽り芸、なかなか極めてると思うぞ。


目が覚めるといつも通りの起床時間だったけど、生憎僕は昨日お風呂に入っていなくて、お腹もめちゃくちゃ空いていて、時間がどうしたって足りなかった。


「疲れた……」


朝っぱらから机に突っ伏してしまう。


「寝不足?」


「その逆?昨日家帰ってから気づいたら寝ちゃってて、そのまま朝まで」


「今日も放課後演劇部の公演観に行くんだから。寝るなよ」


「な!どの口が……」


キーンコーンカーンコーン


「おはようございます。8:15になりました。生徒の皆す、皆さんは、教室に入りましょう。」


皆すん。


「噛んだな」


「そうだね」


川崎先輩だった。

いつ何時もきれいな発声で滑舌もよくて、噛んだりするイメージはなかったので、少し驚いた。


この朝の予鈴が鳴り終わると、部活の朝練組(と、いつもギリギリ登校組)がドタバタと教室に駆け込んでくる。


今日もその中に、赤星くんはいた。


汗をたくさんかいたのだろう、タオルを肩にかけている。

確かに今日は朝から暑くて、数分外を歩いただけで汗ばんでくるくらいだ。

こうやって少しずつ、夏になっていくのだろうか。


ぼんやり赤星くんを見つめていると、しまった、赤星くんと目が合ってしまった。


「おはよう!」


「おう、赤星。昨日はありがとな」


「ううん全然!松原の演技はどうだった?」


「すごかったー。スターオーラをバンバン出してたよな、真野」


「うん、女の子の格好してたけどそれも違和感なくてなんかすごかった。でも前田、途中で寝てたんだよ」


「いや寝てない」


「強情だなー!」


「あははは、僕が観に行ってたら多分普通に寝ちゃってたと思う!」


赤星くん、正直者だ。


「赤星は?試合とか近々あるの?」


「あ、うーんと、春の大会はついこの前終わったから、6月に始まる夏大までは公式戦はないかな。練習試合はあるけど」


「そっか。観に行きたいな、野球」


「うん、良かったらみんなで来てくれたら嬉しい!」


キーンコーンカーンコーン


「あ、それじゃあね」


「おう」


「うん」


練習試合って、今月の最後の日曜日にやるやつですか?


「あいつ」


「へ?」


「赤星、この前の春の大会でもうベンチ入りしてたらしいよ」


「へえ、すごいね」


「すごいな」


自分の席に戻って着席した赤星くんの、首の後ろはもう、ちょっとだけ赤くなっていた。

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