第45話 湖の女神
金色に妖しく光る湖面。さらに、ブクブクと泡まで立つ始末。俺が、ボーッと眺めていると湖面からそれは現れた。
水色に輝く腰まである長い髪。胸元の開いた白いドレス。美しい女の人が、水面の上に立っていた。後光がキラキラと輝いている。その美女が口を開いた。
「はじめまして。私は、湖の女神。アクエリアスと申します」
「は、はじめまして……」
湖の女神。そんなのがいたのか。女神は、冷ややかな目つきで俺を見る。何やらご機嫌がよろしくない様子。
「この湖で釣りをするのはかまいません。自然の恵みです。しかし、電気ショックを使った漁法は別です。自然の…… そう、魚に対する冒涜。すなわち、湖の女神である私に対する侮辱です。断じて許すことはできません!」
女神は、淡々とした口調で話す。しかし、その言葉からは強烈な怒りが感じ取れた。これは、ヤバい!
「す、すみませんでしたッ!」
俺は、すぐにその場に土下座する。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「……頭を上げなさい」
女神の言葉に「ははーッ!」と、恐る恐る頭を上げて上目遣いで女神の顔色を伺った。すると、さっきまでの氷のような表情が溶けて、女神は優しく穏やかな顔つきになる。
「ふふふ。あなたの素直な態度、気に入りましたわ。それに、よく見たら愛らしい顔をしているわね」
女神は、俺の顔を見て微笑んだ。あれ? 許してくれた雰囲気? チョロいな。
「正直に罪を認めて反省した。あなたのその行いに、私は心を打たれました。褒美を授けましょう」
「は、はあ。ありがとうございます!」
とりあえず礼を言う。謝ったら逆にプレゼントをもらえるとは。ちょっと急な展開で、頭の整理が追い付かない。
女神が両手を広げると、そこに金色に輝く美しい斧が出現した。
「これなるは、ゴールデンアクス。この湖に伝わる聖なる武器です。ありがたく受け取りなさい」
「は、ははーッ!」
メニューパネルが開いて、メッセージが表示される。
『アイテム【ゴールデンアクス】を入手しました』
「それでは、若者よ。さらばです。二度と湖に電撃を流してはなりませんよ」
そう言い残して、女神は霧のようにスーッと消えていった。俺は、ポツンとその場に取り残される。
「いったい、何だったんだろう……?」
怒られるかと思ったら、結局はアイテムをもらえてラッキーじゃないか。しかも、かなりのレアアイテムと見た。俺は、さっそくメニューパネルからアイテムボックスを呼び出した。手に入れたばかりの『ゴールデンアクス』の詳細情報を確認する。
『ゴールデンアクス』
湖の女神の洗礼を受けた由緒ある武器。
唯一無二のユニーク武器。
名前のとおりゴールデンな見た目だ。
勘違いされやすいが、純金ではない。
代わりに、金のメッキ加工が施されている。
ユニーク武器には珍しく特殊効果がない。
簡単に言うと、金メッキの普通の斧である。
そこそこの攻撃力はある。
唯一無二なので売却不可。
「……何だこれは? 要するに普通の斧と大して変わらねえじゃないか!」
しかも、売却不可って。思わず湖に投げ込んでやろうかと思ったが、またあの女神が現れると厄介なのであきらめた。
「とりあえず、メルティーたちの所に戻るか……」
俺は、電撃で獲れたアーマーフィッシュ7匹を回収して元の場所に向かった。この数だと1位になるのは、難しいかもしれない。
「あッ! お兄さん! どこに行ってたの?」
「いや…… それより、お前ら何やってるんだ? 釣り勝負は?」
最初の釣り場に戻って、俺は唖然とした。メルティーもカタリナも釣りはしていない。湖に膝まで浸かって水のかけ合いをして遊んでいた。
「釣りなんて、もう飽きちゃった。それより、お兄さんも一緒に遊ぼうよ!」
「そうですよ、ハル。水が綺麗で、とっても気持ちいいです!」
メルティーとカタリナは、キャッキャッと水遊びをしていた。彼女たちにとって釣りの勝負など、既にどうでもいいらしい。今までの俺の努力は何だったのか……
「仕方ないな。お前ら……」
そう言いながら、俺も湖に入って輪に加わることにした。楽しければ、それでいいのだ。深く考えるのはやめだ。
よかったら、ブックマークや評価ください。
よろしくお願いします。




