第3話 ゲームスタート
視界の青白い光が徐々に晴れていく。目に映るのは、三角の屋根の洋風の建物たち。どうやら俺は街の中にいるらしい。キョロキョロと辺りを見渡すと、俺が立っているのは広場のような場所だった。
「はぁい! あなた、初心者でしょ? このゲームは初めて?」
背後からいきなり声をかけられて、俺は慌てて振り向く。そこには銀髪の美少女が立っていた。銀色のロングの美しい髪に、青くキラキラした目。とても日本人とは思えない美少女だ。
「そ、そうだけど…… あ、あんたは?」
俺は、少しビクビクしながら尋ねる。銀髪の少女はニンマリと笑みを浮かべた。
「私の名前は、リザリィーよ。レベル4の『騎士』。一緒に冒険してくれる仲間を探してるの。ここはゲームのスタート地点の広場。あなたのような初心者が来るのを待ってたって訳」
言われてみれば少女は金属製の鎧を身に着けていた。腰には剣も携えている。レベル4ということは、まだ始めて少し経ったばかりのプレイヤーだ。ちょっと先輩ってところか。
リザリィーと名乗った少女は、にこやかな笑顔で俺の顔を覗き込む。
「ねえねえ。あなたゲームスタートしたばかりでしょ? 不自然にキョロキョロしてたからすぐに分かったわ」
「え? ええ。まあ、そうですけど……」
そんなに目立っていたのか、ちょっと恥ずかしいな。
「だったら、まずはメニューパネルを開いてごらんなさいよ。初期のスキルなんかが確認できるわよ」
「スキル? そんなものがあるのか?」
さっきのキャラクターメイキングの時には、スキルについての説明はなかった。
「メニューパネル・オープンって言えば開けるわよ。言ってみて」
「うん。メニューパネル・オープン!」
リザリィーに言われた通り口ずさむと、目の間にパネルが表示された。そこには、俺のステータスなどが表示されている。
名前:ハル
職業:バーサーカー
レベル:1
HP:45 MP:10
ステータス
腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:0 愛:100
スキル
バーサークパワー、愛のムチ
装備
ハンドアクス、冒険者の服
「ちょっと何これ!? ステータス『愛』が100って!?」
リザリィーが勝手に俺のメニューパネルを覗き込み驚いた声を上げる。
「ちょ、勝手に見ないでくれよ! べ、別にいいだろ!」
「普通、『愛』に極振りなんかしないわよ。『愛』は謎のステータスってされてるけど、実際は回復魔法なんかの効果を増加させるステータスって噂よ。バーサーカーじゃ回復魔法なんて使えないから、何の意味もないわよ! あはははははは!」
リザリィーは、俺の顔を見て大笑いしだした。なんて失礼な女だ。
「あなた。さっさとログアウトして、キャラクターメイキングをやり直した方がいいわ。ご愁傷さま」
そんな事を言われて、俺はますます腹立てる。この女! 絶対に見返してやる。
「じゃあね。愛に極振りしたバーサーカーさん。バイバーイ」
「ちょ、ちょっと待てよ! 仲間を探してたんじゃないのか?」
「悪いけど、あなたみたいなお荷物になりそうなのはゴメンよ。他を探すわ。じゃあね!」
リザリィーは手をヒラヒラさせて去って行った。
「何なんだよ! クソッ!」
ゲーム開始そうそう不快な気分だ。いきなり見ず知らずの他人に、ここまでコケにされるとは。確かに、『愛』に極振りは無謀な行為だったかもしれないが。ここで、あっさり引き下がる訳にはいかない。
「よーし! やってやろうじゃないか! 絶対に、あの女を見返してやる!」
俺は、今のキャラクターのままゲームを続ける決意をした。
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