第36話 罪と罰
俺は、回復薬を飲んでHPを回復させる。それから、メルティーに尋ねた。
「さて、お嬢さん。これからどうする?」
「そうだね。下手に動き回るのは危険だし。しばらく、ここに居てもいいんじゃないかな」
メルティーは、そう答えた。確かに、移動すれば敵プレイヤーに出会う確率も増える。俺は、メニューパネルを開いてマップを表示させた。戦闘エリアを示す円は、どんどん小さくなっている。しかし、現在地はまだ円の中なので大丈夫だ。そして、右下にある残り人数を確認した。
『残り25人』
バトルロイヤルもいよいよ終盤だ。ベスト5位以内に入れば、特典アイテムがもらえる。そこまでは、何とか生き残りたいところだが。
俺が、落ち着かない様子でソワソワしていると、メルティーがこっちを見てニコっと笑った。
「大丈夫だよ。お兄さん。ボクは、スキル『気配感知』を持っているから、敵が近くに来たら分かるんだよね」
「ほう。それは心強いな」
俺は、そう答えたが。本心では彼女のことを一切信用していない。いつ裏切られるか分かったものではない。隙を見せないように気をつけなければ。
それから、10分経過した――――
マップを見ると、現在地もそろそろエリア外になってしまう。さらに、右下の残り人数を見ると。
『残り12人』
つまり、自分と目の前にいるメルティーを除けば、残り人数は10人である。座ってくつろいでいたメルティーが立ち上がった。そして、俺に声をかける。
「それじゃあ、お兄さん。そろそろ移動しようか」
「ああ、そうだな」
俺とメルティーは、隠れていた建物から出ると廃墟の街を歩き始めた。戦闘エリアの中心は、この街から南の方になる。そこを目指して歩いていると。メルティーが不意に立ち止まった。
「シッ! お兄さん。ストップ!」
「何だよ? 急に……」
前を見ると1人の騎士風の男が立ちはだかっていた。大きな盾と槍を持っている。メニューパネルが開いて、敵プレイヤーの情報が表示された。
『名前:ハヤト 職業:騎士 レベル:9』
俺は、メルティーをジト目で見た。
「おい。暗殺者の『気配感知』は、どうしたんだよ?」
「ごめんなさい。いや、相手が気配を消してたみたい。あははは」
メルティーは、笑ってごまかした。騎士の男は、槍をこちらに向けた。
「妙だな。このイベントは、生き残りをかけたバトルロイヤル。それなのに、なぜ2人で行動している?」
こうなっては、戦いは避けられない。俺は、ムチとショートソードをかまえる。メルティーもグルカナイフをかまえた。
「なるほど…… 2人がかりってことか。卑怯な連中だ。まとめて成敗してくれる!」
騎士の男は、そう叫ぶと槍をかまえた。
「メルティー! 行くぞ! スキル『愛のムチ』を発動ッ! さらに、スキル『電撃ムチ』を発動ッ!」
俺は2つのスキルを発動させると、思いっきりムチを振るった。
パシィーンッ! バチバチッ!
騎士の男は、大きな盾でムチを防ぐ。火花が散った。
「こっちだよ!」
その隙に、メルティーが接近する。男は、それを槍で突こうとする。しかし、メルティーは咄嗟に横に飛んで避けた。その隙に、俺は再びムチを振るった。
パシィーンッ! バチバチッ!
ムチの先端が、男の腕にヒットした。電撃のダメージで火花が散る。
「くそぉッ!」
男は、スタンして動けない。悔しそうに叫んだ。その間に、さらにメルティーがグルカナイフを振るう。
騎士の男は、あっけなく倒れた。そして、光の粒子となって消えていく。
「ふふん。楽勝だったね!」
メルティーは、嬉しそうな顔でこっちを見た。
「ああ、そうだな……」
しかし、俺の表情は曇る。今の騎士の男は、簡単に倒せたが、決して弱い敵ではなかった。1人で戦っていたら苦戦したに違いない。
自分は、すごく卑怯なことをしている。そんな罪悪感が、俺の心に残った。
よかったら、ブックマークや評価ください。
よろしくお願いします。




