第31話 メルティーの誘い
「行くぞッ! 俺のムチを喰らいやがれッ!」
相手が小学生だろうと容赦はしない。俺は、叫びながらムチを振るう。
パシィーンッ! バチバチッ!
暗殺者の女の子は、バックステップしてムチを避けた。ムチの先端が地面に当たり、火花が飛び散る。
「ふうん。電撃のムチか…… 当たるとヤバそうだね。でも、ボクに当てれるかな? ふふふ」
女の子は、余裕そうに笑っている。その間に、俺はムチを引き寄せる。
「これならどうだ!? 秘技! サイドワインダーッ!」
俺は、再びムチを振るう。ムチの先端が、生きている蛇のようにグネグネと蛇行する。
「へえ。面白い。でも、無駄だよ!」
女の子は、素早く横に飛んでムチを避けた。そして、グルカナイフをかまえる。
「今度は、こっちの番だよ!」
そう言うと、いっきに距離を詰めてきた。速い。ステータス『敏捷』がよほど高いに違いない。女の子は、グルカナイフで突いて来る。
カキーンッ!
俺は、左手に持ったショートソードで女の子のナイフを弾いた。しかし、女の子は素早く次々と攻撃を繰り出してくる。
キン! カキーン! キーン!
俺は左手のショートソードで、その攻撃をことごとく打ち払った。それどころか、逆に相手を押し返す。
「くそッ! やるじゃないか!」
女の子は、慌てて距離を取った。それを見計らって、右手に持ったムチを振るう。
パシィーンッ!
女の子は、咄嗟に後ろに飛んで避けた。惜しい。
「お兄さん強いねー!」
女の子が感心したように言う。カタリナとの数日間の訓練で、俺のプレイングスキルは上達していた。しかし、実はそれだけではない。
新しいスキル『二刀流』を俺は会得していたのだ。そのスキルは、『価格交渉』みたいに自動的に発動するサポートスキルで、両手に違う武器を持って戦う時に発動する。
先ほどのように、器用に左手のショートソードで攻撃をさばいて見せたのは、この『二刀流』の為せる業であった。普通は、数日間練習した程度で身に着くものではない。
カタリナが熱心に練習を勧めてきたのは、このスキルを習得するためだったのだ。
女の子は、「はぁ」とため息をつくとかまえを解いた。俺を見て、ニコっと笑う。
「ねえねえ、お兄さん。ボクと組まない?」
「はぁ!?」
俺は、思わず聞き返した。女の子は、かまわずに話を続ける。
「ボクと手を組まないか?って言ってるの。チーミングってやつだよ。ここで戦ってもお互い損するだけでしょ? それより、2人で協力してゲームを有利に進めようよ!」
女の子は、ニヤニヤと笑っている。それを見て、俺はリザリィーに騙された痛い過去を思い出した。あの時も、可愛い顔をして平気で人を騙す。小学生とはいえ、女ってのは油断できない。
「断るッ! お前と組むつもりはないッ!」
俺は、はっきりと断った。もう騙されるものか。女の子は「チッ!」と舌打ちする。
「せっかく、ボクが誘ってあげてるのに…… 仕方ないなぁ」
誘いを断った以上、戦いを続行するしかない。俺は、ムチをかまえる。しかし。
「ふふふ。じゃあね! ムチ使いのお兄さん。生き残ってたら、また会おうね! バイバーイ!」
女の子は、背を向けると走り去って行った。俺は、ポカーンとした顔でそれを見ていた。素早い逃げ足だ。俺の足では、とても追いつけない。追いかけるだけ無駄だろう。
「何だったんだ? いや、しかし。ある意味、恐ろしい相手だな……」
このゲームは、最後に生き残っていればいいのだ。少しでも苦戦すると判断したら逃げる。それを徹底しているのは、小学生とは思えない戦略家だ。
あの子とは、また出会いそうな気がする。そんな予感を感じながら、俺は次の目的地に向かって歩き始めた。
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