第29話 ラストサムライ
目的地にしていた集落にたどり着いた。三角の屋根の洋風の民家が、数件建ち並んでいる。人が住んでいる気配はない。
俺は、一番手前の家のドアを開けて中に踏み入った。中は、いかにも空き家といった感じだ。探索していると、テーブルの上に回復薬が置いてあるのを発見した。
「お! 回復薬か。ラッキー!」
俺は、回復薬を手に取るとアイテムボックスに収納した。やはり、思ったとおり建物の中にはアイテムが置いてあるようだ。この調子で2軒目の民家も同様に調べる。2軒目の民家では、MP回復薬を発見した。
MP回復薬は、その名のとおりMPを回復する薬だ。HPを回復する通常の回復薬とは異なる。スキルを発動する度にMPを消費する俺にとって、MP回復薬は貴重品である。
続いて次の民家を探索しようと家を出たところ。バッタリと他のプレイヤーに出くわした。珍しく和風の甲冑を身につけた男だ。「ピコーン!」と音がしてメニューパネルが開く。
『名前:お肉丸 職業:侍 レベル:6』
相手の情報が表示される。なるほど、侍か。確かに、和風テイストな見た目をしている。
「ちッ! 先客がいたか……」
侍の男は、そう言うと腰から日本刀を抜いてかまえる。さっきのプレイヤーと同じ剣士タイプだ。俺も、ムチとショートソードをかまえた。
「行くぞッ! スキル『愛のムチ』発動ッ! 続けて、スキル『電撃ムチ』を発動ッ!」
ステータスを『愛』に極振りした俺は、戦いの際に毎回このスキルを発動しなくてはならない。その度に、MPを消費するので連戦はつらいところだ。
「ふッ。ムチ使いか。お手並み拝見と行こう!」
侍の男は、ゆっくりと距離を詰めてくる。俺も呼吸を整えて待ちかまえる。そして、射手距離に入った刹那、力いっぱいムチを振るった。
パシィーンッ! バチバチッ!
破裂音が鳴り響き、花火のように火花が飛び散る。しかし、侍の男はしっかりと刀でガードしていた。いい反射神経だ。さっきの剣士よりよっぽど手強い。
しかし、侍の男は距離を詰めてこない。何か警戒しているのだろうか。その隙に、俺はムチを引き寄せて、もう一度攻撃するチャンスを得る。
「行くぞッ! 秘技! サイドワインダーッ!」
俺は、叫びながらムチを振るった。侍の男は、刀でガードしようとする。だが、ムチの先端がまるで生きている蛇のようにグネグネと蛇行する。そして、ムチは男の腹部に直撃した。
パシィーンッ! バチバチッ!
再び大きな破裂音がして、火花が飛び散る。
「む、無念……」
侍の男は、膝をついた。そして、日本刀を杖のようにして何とか倒れないようにするが。勝敗は決した。男は、跪いたまま光の粒子となって消えていく。
「よしッ! 勝ったぞ!」
俺は、小さくガッツポーズする。ちなみに、『秘技サイドワインダー』とは、カタリナとの数日間の練習で編み出した俺のオリジナル技である。実戦で使ったのは初めてだった。
戦闘に勝利した俺は、残りの民家を探索して、アイテムを回収した。見つけたのは『火炎瓶』という攻撃用のアイテムだった。
全てのアイテムを回収すると、この集落にはもう用はない。さっきみたいに、他のプレイヤーが来る前に立ち去ろう。俺は、メニューパネルを開いてマップを表示する。右下に、残りの人数が表示されていた。
『残り172人』
もう既に半数以上のプレイヤーが脱落しているのか。残り人数が少なくなるほど強敵になる。
「さて、次の目的地はどこにしようかな?」
俺は、マップを見ながら考えた。基本的には、集落に寄ってアイテムを回収しながら島の中心部を目指したい。そのために効率の良いルートを決めると、次の集落に向かって歩き出した。
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