第22話 帰り道にて
「そういえば、君の名前をまだ聞いてなかったな」
カタリナが、ちらりと俺を見た。確かに、まだ名乗っていない。俺は答える。
「あ、すみません。俺は、ハルっていいます」
「そうか。ハルか。いい名前だな。よろしく。私の名前は……」
「カタリナさんですよね?」
俺が、そう言うと彼女は一瞬驚いた顔をする。そして、すぐに嬉しそうに笑った。
「覚えていてくれたのか。嬉しいな」
その仕草に、少しドキッとする。しかし、彼女はNPCである。中身はコンピューターなのだ。いわゆる高度なAIというやつである。
「それじゃあ、街に行きましょか」
「ああ。そうだな」
俺は、リザリィーが残した『恐竜のタマゴ』を持ち上げた。大きいタマゴだが、見た目ほど重くはない。このアイテムは、草原を出るまでアイテムボックスに入れることはできない。しばらくは持って歩かねばならない。
タマゴを持って歩く俺の隣を並んでカタリナも歩く。彼女は、とても楽しそうな顔をしている。機嫌が良いのだろうか。いや、そもそもNPCに機嫌の良し悪しなどあるのか。
「何か楽しそうですね。カタリナさん」
俺の方から話しかけると、カタリナは一瞬ビクッとして頬を赤らめた。
「そ、そうか? 別に普通だぞ」
彼女は、そう言って目をそらした。
そうして、しばらく歩いていると無事に草原地帯を脱出した。「ピコーン!」と音がしてメニューパネルが開く。
『アイテム【恐竜のタマゴ】を入手しました』
そう表示された。それと同時に、俺が手に持っていた恐竜のタマゴは光の粒子になって消えていく。草原を出たことにより、通常アイテムと同じようにアイテムボックスに収集されたようだ。あとは、街に戻ってこいつを売るだけだ。
街までの道のりをカタリナと並んで歩く。道中、歩きながら俺は疑問に思っていたことを彼女に尋ねることにした。
「ちょっと聞いてもいいですか? カタリナさん」
「普通に、カタリナと呼んでもらってかまわないぞ。何だい? ハル」
「カタリナさん…… あ。いや、カタリナはどうして俺を助けてくれたんだ?」
NPCであるカタリナが、なぜプレイヤーである俺とリザリィーの争いに割って入ったのか疑問を感じていた。
「そ、それは…… 君が変な女に襲われていたから。だから、その。助けなきゃって思ったんだ。それだけだ……」
カタリナの答えは、何とも言えないものだった。正義感の強い設定のNPCだと思えば、納得できないこともない。
「そうですか…… ありがとうございます」
俺は、礼を言った。助けてくれた理由は、結局よく分からないが。もうすぐ街に着く。どちらにせよ、カタリナとはここでお別れである。
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