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第1話 キャラクターメイキング(前編)

 気がつくと俺は神殿のような場所に立っていた。ピカピカの白い大理石の床。奥に何本も立派な柱が並んでいる。


「ようこそ、アークソウルオンラインの世界へ!」


 背後から穏やかな女性の声がする。びっくりして俺は振り向いた。すると、そこにはまるで女神様のように美しい女性が立っていた。白いローブに身を包み、優しそうな笑みを浮かべて俺を見つめている。


「あッ! あ、あ、あの…… あなたは?」


「私は、この世界の案内人を務めております。女神のフローラと申します。お見知りおきください」


 引きこもりの俺が人と話すのは久しぶりだ。おまけに、こんな美人と会話なんて生まれて初めてだ。緊張してキョドって変な声を出してしまったが、女神フローラは優しく答えてくれた。


 しかし、俺は冷静になって気がつく。ここはゲームの中だ。相手はNPC。つまり、ノンプレイヤーキャラクターと呼ばれる存在だろう。最新のAIで人間らしく見せているが、コンピューターと会話しているにすぎない。


 そう考えると、少し冷静さを取り戻せた。そんな俺に、女神フローラは話しかける。


「これからこのアークソウルオンラインの世界で過ごすために、キャラクターメイキングをしてもらいます。まずは名前を決めてください」


「名前か…… 本名のはるでいいや。カタカナで『ハル』にします」


「承知しました。ハル様ですね。素敵な名前ですね」


 NPCに名前を褒められても何だかなぁという感じだが、俺はこの調子でキャラクターメイキングを進めることにした。


「では、ハル様。次にステータスを決めてください。初期ポイント100を次のステータスに好きなように割り振ってください」


 フローラがそう言うと、俺の目の前に突然パネルが現れる。咄嗟の事で「ひぃッ!」と少し変な声を上げてしまったが。ここはゲームの中である。別に不思議なことでも何でもない。


 パネルには、それぞれステータスの名称が書いてあった。『腕力』『体力』『器用』『敏捷』『魔力』『愛』と6つの能力が並んでいる。


「例えば、腕力を上げると武器を使った物理的な攻撃力が上昇します。体力を上げると打たれ強さや様々な肉体系のスキルを獲得できます」


 フローラが能力について簡単に説明してくれる。その中で俺は気になるものが1つあった。


「なあ、フローラ。この『愛』っていうステータスは何だ?」


 俺は、フローラに尋ねた。今まで色々なゲームをやってきたが、こんなステータスは初めて見た。フローラは、微笑んで答えた。


「この『愛』については、効果は不明です。でも上げておくと何かいいことがあるかもしれません」


 何だ、その漠然とした回答は。


 引きこもり生活の中で多くのゲームをプレイしてきた俺。定石で言えば、ここは100ある初期ポイントをだいたい均等に割り振るのが無難である。もしくは『腕力』『体力』などを高めにして戦士タイプのキャラクターにするか。


 まあ、少なくとも『愛』などという訳の分からないステータスは重要視する必要はないだろう。


 しかし、俺は気まぐれというか。何となく思いついたことがあった。そして、それを言葉にする。


「よし! じゃあ、この『愛』というステータスに初期ポイント100を全部つぎ込んでくれ!」


「承知しました。ハル様」


 俺の奇想天外な行動に、フローラは動じることなく了解した。まあ、NPCなので当たり前かもしれないが。



 名前:ハル

 レベル:1

 HP:45 MP:10


 ステータス

 腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:0 愛:100 



 とりあえず、現状で決定されたステータスなどが目の前のパネルに表示される。何ともいびつなステータスだ。だが、まあいい。ダメだったら作り直せばいい。どうせゲームなのだ。



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