硬貨の使い道
鍛冶師をよんで、来る間に簡単なデザインを考え提示する。
「このように、複雑かつ分かりやすい紙幣を作ることで、より我が国での信頼感と定住性をつけてもらう」
髭面の親父、鍛冶師高山に説明する。
「なるほど。では、我々はこの絵を紙幣に移すためのハンコを作れというわけですな?」
う~ん、ハンコと言うよりは活版印刷の版なんだが。
「これを、版にすることは可能か?」
「はい。できます」
「よし。どれでお願いする、納期は三日以内だ」
「み、三日ですと!無茶ぶりが過ぎます!」
まあ、そうなるだろう。
三日もこんな作業に取り掛かってられないだろう。
だが、そんな余裕はこの国にはない。
なけなしの金貨。
つまりはかねだ。
「その代わり、報酬は普段の倍払う」
高山は、非常に悩んでいた。
悩んだ末。
「……良いでしょう。その依頼、高山が全身全霊をかけて完璧に仕上げて見せましょう。三日以内に」
これで、下積みは良いだろう。
一週間後
何とか、紙幣を用意して今日から移行期間となった。
国として都市が一つしかないので情報は良く回っていた。
立地としては、海も陸地も十分すぎるほどあるが、土地を開拓する金銭も会社もない。
国家事業として国で人手を集めるしかない。
とりあえず、これで硬貨が集まると思えば、ちょっとは気が楽だ。
国が運営している場所の商業施設や役所ではすでに通貨の移行が始まっている。
商品の購入やサービスの提供前に紙幣に強制的に変え、そのまま生活してもらう。今回は料金ただである。
やがてすべての移行が終わった時、それは起きた。
「我が国の紙幣がございません!」
紙幣の製造と硬貨の計算をしていた役人が、そう訴える。
「まあ、そうなるよね」
ギリギリ国民の分の全ての紙幣が発行できたが、問題の国家予算の移行が不可能なのだ。
「まあ、追加分を買ってきて早急に移行するしかないだろう」
「畏まりました。集まった硬貨はどうしますか?」
「ドバニア帝国に炸裂液を発注しよう」
「炸裂液ですか?」
ダリアンが、正気かコイツ?みたいな怪訝な顔で見てくる。
失礼な。
実は、この炸裂液、振動を与えると爆破する。
ものの見事に、木っ端みじんに。
故に、あまり需要がない。
何せ、運ぶだけでも危険で高価かつ、使い道がほとんどない。
「ああ、それと、ポーションぼ瓶も発注しといてくれ」
「はぁ」
まあ、今はそれでいいさ。
そんな感じで、金の使い道は山ほどある。
どんどん増やそう。どんどん。
これで、経済破城したら洒落にならないけど。