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築き上げたハーレムにバグが起こりました

作者: 真瀬栞果


俺、笹原シンヤ高校二年生!実は、転生者なんだよね。この世界は前世でプレイしていた君の瞳を狙い撃ち!〜ドキュンバーン〜

略して、君バンと呼ばれているギャルゲーの世界なんだ。


そして今の季節は雪が降り積もる2月。そしてバレンタインデーの季節でもある。そう、俺のハーレムエンドはバレンタインで全員から貰えたら確定する。ただ、この感じだと好感度マックスだろうし、貰えるのは確実だろう。


そもそもヒロインは何人いるかというと、4人だ。


まずは市川ナノカ。幼馴染で同級生の、ツンデレで、ミディアムヘアの茶髪にくりっとした瞳の子。


篠原レイナ。一つ上の先輩で、世話焼きなところがある亜麻色の長い髪がめちゃくちゃ良い匂いがする子。


桜木セリカ。一つ下の後輩で、ツインテールで黒髪の恥ずかしがり屋の可愛い子。


宮本リイナ。バイト先が一緒の別の学校の同い年。普段は桃色の髪をしているのだがバイト中はウィッグを被って黒髪で働いている。


と、まぁこんな感じに女の子たちだ。


バレンタインまであと1週間前。まさか順調な攻略が直前になって、終わりを告げようとしていたことに気付きもしなかった。彼女に言われるまでは……。


-


俺はその時、頬杖をしながら1番後ろの窓側の席で、ぼぅっとしていた授業の合間の休み時間のことだった。


「シンヤ、ちょっといい?」


俺の机の前まで来て、幼馴染のナノカが深刻そうな声をしながら、呼び出してきた。


「どうしたの?」


心配そうに俺はナノカを見つめると、来てっと言われ、一緒に廊下へ向かった。

ナノカは俺を真っ直ぐに見つめ、一つ深呼吸をする。


「あのね、変なこというかもしれないけど、ちょっと聞きたいことがあるの。シンヤって前世って信じる?」


その瞬間ゾワっと鳥肌が立ち、その瞬間、廊下にいた人たちの話し声がまるで聞こえなくなった。


これは俺は何と答えれば正解なのか分からない。そもそも、この問いはこのゲームの中になかった気がする。それに自分が前世のことを覚えてることって言ってしまっていいのか悩んでいると、急かすようにナノカは話す。


「ちょっと聞いてる?」


そう声を掛けられ、ハッとしてナノカを見ると目が合ってしまう。


「もしかして、その反応……あるってわけだよね?そして、君は前世を覚えているっていう感じかな?」


ナノカは他人に話しかけるように、俺のことを君といい、少し冷たさを感じる声色だった。


言い訳をしようか考えたけれども、でもここは真っ直ぐに伝えるべきかのか。俺は悩んだ末に……。


「確かに前世を覚えてるよ。でも、まさか……ナノカも前世を覚えているのか?」


心臓がバクバク言っている。あぁ破滅するかも。


「覚えてるよ。でも、そう、やっぱりそうなのね……。だから今、私は君に攻略され途中と。あとちょっと、そうね、この感じだとハーレムエンド狙い?現実でハーレムとか、この国は一夫多妻じゃないけど?」


「一夫多妻じゃないのは知ってるけどさ。というか、攻略って……」


ほぼ答えが分かっているようなことを濁して、意味のない返答をした。


「どうみたって女の子を誑かしてるでしょ?あ、もしかして、こういうことかしら?愛人、浮気、色々あったわね。一夫一妻でも出来ること。」


「愛人とか浮気とか、そういうのはしたくない。それに俺はちゃんと一人一人に誠実に…!」


してるかは分からないけど、でもそんな愛人とか浮気なんて元々、小心者すぎて出来ない。でも、この世界がゲームの世界だからこそ、楽しんで楽しんで楽しんだ挙句に、将来この子だという子と結婚したいと思っているだけ。


「じゃ、そこまで言うなら、君は誰が一番好きなの?それとも皆んなお友達レベルだった?」


「それは……」


「それは?」


どうしよう。とりあえずハーレムエンドまでしてからって考えてたから、その先の一緒になりたいくらいの好きな人ってまだ考えていなかった。皆んな一人一人に良いところはあるし。


そんなことを考えていたが意を決して、つばを飲み込み、汗をかいている手に力を入れ、言葉を発しようとした時。


キーンコーン


カーンコーン


「…鳴っちゃった。じゃ放課後、逃げないでね?」


今まで見たことのないナノカの妖艶な笑みに思わず体がぞわりと震え、自分の胸に手をやり、あぁと答えて、自分の教室へと戻った。


そして放課後まで、ずっと自分の好きな人について考えていた。否、考えさせられていた。


-


「答えは出たの?」


そして放課後。俺とナノカは屋上のベンチに腰を掛け、隣に座ると、鋭い目で聞いてくる。


「あぁ、出たよ。俺は一番好きな奴ってのいない。ドキッとすることは確かにあったのは否定しないけど、でも恋とまではいかなくて。そしたら、皆んな友達なのかと聞かれれば、友達だったと思う。少なくとも興味のない奴とはこんなに一緒にいたり、遊んだりしないだろ?」


膝の上に拳を作り、俺は本当の気持ちをそのままナノカに、ぶつけた。


さよなら、ハーレムエンド。


この期に及んで、俺はそんなことを考えていた。その時、聞き覚えのある声の主がやってきた。


「なーんだ、ナノカちゃん。貴方、決着つけましょうって言って結局このザマじゃない」


「レイナ先輩!?」


「そうですよ〜!シンヤ先輩に誰が一番愛されていて、彼女になる権利があるかって決着付けるとか言ってたのに、シンヤ先輩がこんなじゃないですかぁ!」


「こんなって、おい、てかセリカ!?」


「ということで、シンヤくん。私たちこんな感じで1人に絞ってほしくて、シンヤくんの彼女になりたくて、代表してナノカちゃんが迫ってくれたのに。これなら、私が迫っても良かったかしら?あ、別の意味でも良いけど?」


「おいおい、学校違うはずのリイナまで何でこの学校にいるんだよ!!!」


「というわけで、誰か1人に絞ってくれない?バレンタインデーまでに。」


「バレンタインデーまでってあと1ヶ月弱だろう」


「だってバレンタインデーまでに決めないと、ダラダラこんな関係が続くんでしょう?」


「いやいや、そうと決まったわけじゃ…ってえぇ!?」


「攻略ね…確かに私は貴方に攻略されかけてたわね」


「あたしは、先輩に攻略されても、良いんですけどぉ〜、どうせだったら先輩の一番になりたいかな?」


というか、 さっきの答えはスルーなのか?それとも、ちゃんと具体的に言えということなのか?


「シンヤのことが特別その、す、好きって訳じゃないんだけど、でも他の子のものになるくらいなら、その、小さい頃から一緒なんだから、私といてくれたら良いじゃんっていうか」


「シンヤくんは見てて目が離せない子というか、私が付いてないとダメなんじゃないかなって」


「あたしは逆にシンヤ先輩はとっても頼り甲斐がある人で、ずっと一緒に居れたら、心強いですぅ〜!」


「私は一緒にバカやれる、あんたが好きだから。まぁ、それ言ったら友達でもいいじゃんって思うけど、でも、もっとあんたと色々したい…っていうか、はぁ〜言わせんな」


「そんなふうに思ってくれてたなんて、俺、凄く中途半端で適当なことしてた。なのに、こんな俺にもう一回チャンスをくれて、ありがとう」


俺は、一息つくと決心する。こんなにも俺のことを想ってくれているなら、今更だけど無下にするのは失礼だろう。ちゃんと決めよう。


「決めるよ。でも真剣に考えたいから、俺と一緒にデートしてくれませんか?」


-


今度こそ彼女たちに誠実に。そして、俺はこのデートで生涯愛することになった彼女を選ぶのだ。

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