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美少女と爬虫類


 その日、シーザーの姉のシーナは出掛けていた。

 シーナは、クスナと一緒に家に帰ってきた。


 クスナは勝手知ったる他人の家とばかり、中に入る。

 暖炉の前で毛布にくるまって寝てる人物がいたので、てっきりシーザーが寝てると思った。


「おい、昼間っから何寝てんだよ?」

 クスナはいたずらのつもりで、シーザーにヘッドロックをかけてやろうと思ったのだが。

 だが、毛布から現れた顔はシーザーではなかった。


 見たこともない女の子が、クスナの腕の中でくうくう寝ていた。

 しかもとてもかわいらしい女の子だ。

「え!?」

 クスナは健康な成人男子である。

 その寝顔にどきりとしつつ、シーナの方を振り返った。


「この子、シーザーの友達?」

 シーナはきょとんとしている。

 知らない子のようだ。


「えっと……?」

 クスナは女の子を絨毯の床に寝かせた。

 室内は暖かいから毛布一枚でも風邪を引くことはないだろうけど、クスナとシーナは困っていた。


「ファッティ、この子、誰?」

 とシーナは聞くが、ファッティは会話はできない。答えるわけがない。



 そこへシーザーが帰ってきた。

「あ、お帰り」

 とシーザー。


「この子、誰!?」

 シーナはシーザーに尋ねる。

「この子、異世界間ゲートのそばで固まってた」

 シーザーは帽子の中のカメレオンを、シーナに見せた。


 突如、目の前に爬虫類を出されシーナは固まった。思わず……

「きゃあ!」

 クスナに抱き着く。


「あーあ、バカップルが真っ昼間からいちゃついてるよ」

 シーザーの皮肉に、クスナはそうじゃねーだろとつぶやいた。


 その時、シーナの悲鳴で女の子が起きた。

「あ、スティナ。もしかして、探してるペットってこれ?」

 寝ぼけ眼の女の子は、カメレオンを見て、ぱっと顔を輝かせた。


「そうそう、この子! ありがとう、見つけてくれたんだ」

 スティナという女の子は、笑顔で爬虫類をつかんでいた。

 こんなに見目麗しい女の子が、笑顔で爬虫類を……(以下同文)



 その様子に、シーナもクスナもどん引いていた。


 二人の視線に気づき、女の子は絨毯の上に正座をした。

「あ! 失礼しました。スティナ・レイ・アルフです。寒さに震えていたところをシーザーに助けられたの」


「あ、いえいえ、失礼なんてとんでもない。シーナ・ナユタ・ラングです。シーザーの姉です」

「俺はクスナ・ク・ガイル」

 なぜか二人も正座して挨拶した。


「この人、シーナ姉ちゃんの彼氏」

 と、シーザーがクスナの肩に手を置く。


「いや、そんな初対面の人に言うことじゃないから」

 クスナとシーナは照れていた。


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