スティナ
「僕はシム。さっき、シムって呼ばなかった?」
そこで、あっとスティナは気づいた。
「私、イフタフヤーシムシムって言ったの。古代エルフの言葉で、ひらけごまって意味」
「え?」
古代エルフの言葉で『シムシム』はごまのことだ。
イフタフヤーシムシム(ひらけごま)を、呪文のつもりで唱えたのが、シムという名前の少年を呼んでしまったらしい。
「じゃあ、あなたのことはごまちゃんって呼ぶね」
「シムだって」
シムは自分と瓜二つの少年のことも気になっていた。
「そちらのイケメン過ぎる少年のお名前は?」
「僕はシーザー・レイ・ラング」
「私、スティナ・レイ・アルフで、私たち偶然同じ名前なの」
スティナが嬉しそうに語るから、シーザーも嬉しくなった。
「さてと、そろそろゲートが閉まりそうだけど、どこ行くの?」
と、シム。
「ついでに送っていくよ」
「本当? 嬉しい!」
「きみには薬草もらったしね。ただでいいよ」
「うん。ありがとう」
「そっちのイケメンのシーザーは? 一緒に行くの?」
それを聞いてシーザーは初めて、一緒に行くという選択肢もあったのかと気づいた。
だが、無論、それをするわけにはいかない。
シーザーは首を横に振る。
スティナは防寒着を脱いでシーザーに渡した。
「本当にありがとう。これ、シーナに返してくれる? 本当に感謝してるって伝えて」
スティナはシーザーにハグして、ほっぺにキスした。
シーザーは硬直した。
昨夜のことも思い出される。
はずかしいような、どきどきする誰にも言えない出来事――。
そして、スティナはカゴを持ち、シムの腕をつかみ、二人と一匹は扉の向こうの空間へと消えた。
シーザーは頬を押さえ、ぼーっとしていた。
しばらく、ゲートの前で動かずにいた。




