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17.

 精神的ダメージ回復を果たせぬまま四限目の体育をむかえた。心のHPはレッドゾーンだが、そんなことは言ってられない。


 水着に着替え、プールに移動する。


 我が校は男女合同で水泳の授業を行うという割と珍しい高校だ。当然、男子は色めき立つ。


 ちらりと平泉の方を窺う。スクール水着で推定Bカップの胸の形が強調されている。


 さぁ、あそこが俺のゴール地点だ。しかし、そこに辿りつく方法が見つからないのだ。


 体育は隣のクラスと合同だから、由美莉の姿もあった。ガタイのいい体育のおっさん教師が吹く笛の音で次々にスタートしていく中、プールサイドで順番を待っている。


デカ乳コンプレックスの由美莉からすると、スクール水着を着てボディラインを露わにするのは泣きたい気持ちなのだろう。胸を隠すように腕を前でクロスさせている。


 しかし由美莉、それは逆効果だ。


 そのポーズは恥じらいというスパイスが効いて、よりいっそう艶めかしさを身に纏うことになる。俺の心のHPはぐんぐん回復。アソコのHPまで便乗しそうだ。


 しかし、そんなエロスの泉をケダモノどもが見逃すはずがない。


「由美莉ちゃん、やっぱいいわ~」


「たまらんぜ、ウヒヒ」


 隣で新聞部のバカ二人は当然の権利とでも言うように、遠慮せずにガン見している。


 俺は、二人同時に頭から水の中に沈めてやった。別に由美莉の保護者ではないが、水着姿を目に焼き付けて、夜のオカズにしようなどと考えている連中の餌食にされるのを黙って見てはいられない。


 二十五メートルをクロールで3本こなすと、自由時間となった。


 ここではしゃぐほど俺はガキではない。今は戦いの真っ最中――野球も例のミッションも含めてだが――体力を温存しておかなければならないのだ。プールサイドで体を休め、作戦を練ろう。


 と、思ったら井伏と坂口がやってきて、左右の腕を取られてしまった。


「何なんだよ?」


「女だらけの水着大会にようこそ~」


「ポロリはないけどね! ウヒヒ」


 俺は、不覚にもプールへと投げ込まれてしまった。女子どもが水を掛けあってキャッキャ言ってる輪の中へまっしぐら。


――あ、由美莉がいる!


 ざっぱーん!


 く、苦しい。水中とはいえ、なんでこんなに呼吸が……そして、何だこの柔らかい感触……


 もうお分かりだろう。そう、俺の顔面は由美莉の胸に挟まれていた。


――同じおっぱいでも感触って違うのね……


 平泉の時との比較を興奮度というカテゴリーにおいて、脳が勝手に数値化しようとしていたその瞬間……


「ギャー! 死ね、直人ぉおおおおお」


 俺の意識は地平線の彼方へ飛ばされた。

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