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家へ帰った私を待っていたのは、見知らぬ少女だった。
その傍らには、父もいる。
「あの、お父さま、そちらのご令嬢は・・・?」
「あの!私、今日からお世話になります、ミシェルといいます!このおうちに養子に入ることになりました!」
はちみつ色の髪を揺らし名がら、愛らしい顔の少女が頭を下げる。
今日の夕食のあとのお茶に蜂蜜が入っていたら発狂しそうだ。愛らしい顔の人間は、髪がはちみつ色と決まっているのだろうか。
「急な話ですまない、ビヴィエット。前も話しただろう?妹のシェリー、ビヴィエットからしたら叔母だね。 彼女に娘がいると。ミシェルは君の従妹だよ。」
「えぇ・・・。その話はなんどか聞いておりましたけれど、どうして養子に・・・?」
「シェリーの家は今大変でね、経営が上手くいってないらしいんだ。それでね、比較的安定しているこの家に養子に入れば、嫁ぐまでは困ることはないだろうと・・・」
父は苦笑いでそう答えた。
なるほど確かに、公爵家の養子に入れば、それなりに良い家から縁談が舞い込んでくるだろう。玉の輿にのって、実家の借金もついでに返してくれよ☆ということか。
なんと都合の良い話・・・、そしてそれを受けてしまうなんて、馬鹿な父よ・・・。
「私、兄弟がいなかったので、ビヴィエットさんがお姉さまになってくれてとっても嬉しいです!お姉さまって呼んでいいですか・・・?」
エメラルドの瞳が私の顔色を窺うように揺れる。ついでにはちみつ色の髪も揺れる。
「構わないわ、ミシェル。これからよろしくね」
できれば、よろしくしたくない。こんなに可愛いのだから、絶対この子には色恋のもめごとが尽きないだろう。縁談だってわんさか湧いてくるきっと。
ただでさえあの蜂蜜王子で私の周辺は賑やかなのだ。これ以上賑やかになってほしくない・・・。
溜息は誰にも聞かれることなく部屋に溶けていった。