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暖かい午後の日差しが降り注ぐ。
学園の廊下の先に、はちみつ色の髪が見える。
「ビヴィエット、今日も図書館へ行くの?」
今日も可愛らしいですね、なんて口が裂けても言えない。彼は、この国の第3王子、オリバー・アンデンゼルだ。
「オリバー様、どうしてここに?」
まさか、私を待ってたわけではないでしょう。
「質問に質問で返しちゃだめだよ、ビヴィエット。最近会話してないなと思って待ってたんだ。」
「申し訳ありませんわ、オリバー様。お話したいのは山々なのですけれど、今日は早く帰って来いとお父さまから言われてますの。図書館へも行きたいのですが、残念ながらその時間はありませんの。」
彼の青い瞳が、悲しそうに細められる。
この人と喋っているのを見られてはマズイ。先日私は、この人のファンから上履きを隠されたばかりなのだ。今年に入って、もう5つ目の上履きが消えた。
でも、お父さまから早く帰って来いと言われているのは本当。
お願いお願い、どうか引き留めないでください。あなたはとっても人気があるのよ、理解してちょうだい。
「用事があるなら仕方ないね、気を付けて帰るんだよ、ビヴィエット」
「ありがとうございます、オリバー様。それではまた明日。」
窮地を逃れた私は、脱兎のごとく馬車へと向かった。