『救世主』 の意味
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「ん~?」
ふと意識が覚醒して、うっすらと目を開ける。 眼の前には見知らぬ風景。 どうやら、まだ夢の中っぽい。 ふわぁ~ぁ。
うん、まだ眠いしね、明日(今日?)は休日だから二度寝しても問題無いし。
「失礼します。 どなたかお目覚めでしょうか?」
二度寝を決め込もうとした時、コンコンっとドアをノックする音と控えめな声。 そっとドアが開いて顔を覗かせたのは、清楚系の美貌のお姉さん、やっぱりヨーロッパ風。 で、周りを見廻した彼女と、そんな彼女を見てた私の目が合って……。
「お目覚めでしたか。 失礼しますね。」
「あ、はい。」
あ、つい、返事しちゃった。 眠いのに……返事しちゃったら一応でも起きなくちゃだよね?!
ふわぁ~ぁ。 ノックの音で一度は引っ込んだ欠伸が復活して零れ出た。
……と軽く伸びをしながら上半身を起こしてたら、視界の隅で何かが動く。 そちらを見ると、同じく上半身を起こしながらビックリ顔の女官長と、横たわったまま目をこする最初に見た中性的イケメン。
で、ふと気づいてビックリ、彼女たちの周りには『眠れる森の美男(笑)』の群。
何コレ? 夢にしてもワケ分からなすぎでしょ。 驚きで少し目が覚めたかも。
その後、少しずづ、『眠れる森の美男(笑)』たちも目を覚まし……なぜか皆そろって驚いていた。
しかも皆して、ぼーっとして、目を見開いて固まって、呆然として、周りを見廻し、顔を見合わせ、それから私のほうを向いて再び固まって……と再起動まで結構な時間かかってた。
「1年に1度の『眠くならない病』の大量発症?」
「はい、ほぼ同時期に───」
「王宮と神殿を中心に、主に王都のあちこちで───」
「で、異世界からの被召喚者が眠りをもたらしてくれるから『救世主』?」
「はい。」
最初に見た中性的イケメンは主席神官で、今回の召喚のメイン担当だったらしい。
不眠が続いてはあちこちの機能に障害が出て国の存続にさえ影響しかねないと考えた国王が、大至急で解決策を探すように王宮から臣下に指示。 結果、50年に1度こういうことが起きていて、異世界の救世主に救われて以降は召喚して助けてもらっていたと判明。
で、召喚を管轄する神殿に方法や条件を調べさせて、判明・実行、その結果が私だったらしい。
ちなみに、王宮も神殿も眠くならない病の大量発生場所の上、どんどん被害が増えていて……。 このままではマズいことを我が身と目の前の状況とでイヤというほど痛感してたし、眠れないから調べる時間は作れるし、ってことで、みんな張り切って調べたそうだ。
召喚は長時間に及ぶけど、眠くならない病の発症者が担当するから問題無かったんだって。
「召喚相手は、浅すぎず深すぎない眠りの中にいること。 起きれば失敗して召喚無効で力も体力も無駄になります。 逆に深すぎると必要な魔力も時間も増える一方で、こちらが対応しきれずに術が途切れて失敗、やはり召喚無効で力も体力も無駄になります。」
「え? あれ? ちょっと待って。」
状況説明の後、召喚の条件も教えてくれたわけなんだけど……。 起きちゃダメで、眠りが深すぎてもダメ、ってどこかで聞いたような?!
『あ~っ、それ以上深く眠らないでぇっ!!!』
『こっちを気にしなくていいから! 起きちゃダメだからね? でも、それ以上深く眠るのは待って!』
……最初に聞いた言葉と、結局は無視して眠った言葉だったり?! おやぁ?! しかも、あの声、主席神官に似てたような……。
「もしかして、あの声───」
「聞こえてました? それでも眠ってしまいそうで焦りましたよ。 ギリギリ間に合ったわけですけど。」
「私に呼びかけてたのは───」
「はい、私です。」
「それは、どうも……。」
確認できたのはいいけど、私、最終的には声をガン無視して眠った気が……。
ってことで、どうしても最後の言葉が気まずさに負けたんだけど、主席神官も周りも気にする様子が無いので、私もキニシナイことにした。
だって、結果的には召喚は成功して私はここに居るんだし、ね。