矛盾
目が覚めた。
まず視界に飛び込んできたのは、普段とは違う見慣れぬ天井。
だが、それには一度だけだが見覚えがあった。
そして、こんな時には耳障りな学校のチャイムが聞こえてくる。
とりあえず辺りを見渡すと、俺の寝ているベッドの側には幼なじみがいた。
そいつはチャイムが鳴り終わると同時に声をかけてきた。
「よお」
「…………」
寝たままの状態なのもあれなので、とりあえず体を起こす。
「目ぇ覚めたっぽいな………調子は?」
そう言われ、大きく伸びをし、軽く体を動かして調子を確かめる。
特にこれといっておかしいところもなく、違和感などは感じはしなかった。少し頭痛がするくらいだ。
「別に………問題ない」
素っ気なく答えてしまった。悪気があったわけじゃなかったんだが。
「そっか」
だかそいつは意に介すこともなく、淡々とそう言った。
「俺は一体、どのくらい寝ていたんだ?」
幼馴染みは「うー……ん」と唸りながら腕時計を見て考え。
「1時間くらいじゃね?…んで、このチャイムはちょうど5時間目が終わったところ」
どうやら、そこまで時間は経っていないようだ。
アーツを使って、挙げ句の果てには"イクシード"にもなったんだ。
本来なら、起きたら明日っ!というような状況を覚悟していたのだが、思いの外そうじゃなかったことに内心凄く驚いている。
実際そんなことはどうでもよく、今の俺の心にあるのは勝利したことによる高揚とした気分だった。
だけど。
「ちょっと待て。…なんで俺よりお前のほうが先に起きてんだ?」
「え…なんでって?」
「明らかにお前のほうが俺よりダメージ大きいだろ?まだ寝てなくていいのか?」
幼馴染みは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして。
「………いや、何を言ってんだ?………亮介」
そいつ……ベッドの側で俺を見ていた幼馴染みの御伽 空宙はそう言葉を発した。
「勝ったのは、俺だろ」
「………………は?」
ベッドにいるの轟 亮介はすぐには理解が出来なかった…………いや、理解をしたくなかったのかもしれない。
「意味わかんねぇぞ。…どういう………ことだよ……」
聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない。
でも……聞かなければならない。
そういう衝動に駆られてしまった。
「いや、お前……」
そこにシャッとカーテンを開けて保険の先生が入ってきた。
60代くらいの優しいそうな容姿をしたおばあちゃんだ。
「あっ、起きたのね、良かったぁ~。体調のほうは…」
瞬間、亮介は先生に飛びついた。
「先生っ!俺勝ったんですよねっ!さっきの試合、俺の勝ち……だっ……た……」
先生は一瞬戸惑ったものの状況を理解したらしく、亮介の肩に手を置いてフルフルと首を横に振る。
落ち着いた口調で彼女は結果を告げた。
「さっきの勝負は、轟君の敗けで試合が終わったわ」
亮介は唖然とした顔をした。
「あなたは、試合の途中気絶したのよ……立ったままでね」
「そんな………なんでっ!!」
亮介はベッドの横の棚に置いてある電子手帳を荒々しく掴み、先ほどの勝負の結果を確認する。
「…………………」
スクリーンを覗き込むと、そこには亮介の敗北が堂々と映し出されていた。
「多分、お前の集中力が途中で切れた上にイクシードしたところも加えて、精神がもたなかったんだろうな。それで、気絶した。どちらにしろお前は俺に敗けたんだ」
そして。
「今回も俺の、勝ちだ」
亮介はありえないというように、頭を押さえ込む。
そしておもむろにハッと顔をあげた。
「じゃあ、俺がさっきお前を斬りつけたのはなんだってんだよ………?」
……………俺を斬りつけた?
「なんのことかはわかんないけど、夢でも見てたんじゃないか?」
「………そんな………………」
俺はそれきり黙って、またベッドに潜り込んでしまった。
幼馴染みはその後保健室を出ていった。
☆
保健室を後にした俺は、とりあえず教室に戻ることにした。
その間思い出すのはやっぱりさっきの亮介のことだ。
(やっぱりあのことは話しておいてほうがよかったかなぁ)
しばらく歩いていると、開けたところに出た。
周りを見渡しても誰もいない。
時計を確認する。6時間目の授業が始まってからおよそ5分ほど経っていた。
「ってもう授業始まってんじゃん」
亮介が目覚めたのは5時間目が終わってからだが、話していたせいでどうやら次の授業が始まってしまっていたみたいだ。
まあ、ゆっくり行こう。
そして歩き出した時に気づく。開けた角のところに一人女の子が立っていることに。
(さっき見たときはいなかったはずなんだけど、見落としてた?でも…………なんでゴスロリ服?)
まあいいや。気になる。めっちゃ気になる、ほんとなんでゴスロリなのかめっちゃ気になるけど、今はスルーすることにしよう。
(そういえば、俺お昼食べてないや、道理ですんげえお腹すいたわけだ)
さっさと教室に戻って飯を食おう、と気を紛らわしながらそのゴスロリ服の女の子を一瞥、側をすれ違った時そのゴスロリ服の女の子から言葉が発せられた。
「こんにちは、先ほどの試合拝見させていただきましたよ。御伽空宙さん?」
俺はあわてて振り返ってその子を見た。何故ならその子の口から俺の名前が呼ばれたからだ。
(………誰?)
俺にこんなゴスロリ服を着た小学生みたいな知り合いなんていない。ちょっと考えよう。もしかしたら忘れているだけかもしれない。
…………………………………………………。
(いや誰?ほんと誰だこの娘??でも、この声はどこかで聞いたことがあるような……)
そう思っているとその子はゆっくりと振り返り、その全貌があらわになった。
その顔は一度見たことがある顔だった。
「確かルイ……いや雰囲気?が違うな。お前誰?」
顔は闇属性女神のルインそのものなのだが、初めてあった時と雰囲気と声のトーンが随分と違う。あの時はもっと元気でちょっとおバカっぽい印象だったが、目の前にいるこの子は、もっと大人びている。
「私の名前は、シアン。ルインの…まあ、姉的な存在です。以後お見知りおきを」
「ルインのお姉ちゃん的か……そうか…………じゃ」
そして俺は回れ右して歩き出した。
「え!ちょ、ちょっと待ちなさいよ!もっとこう、なんかないの!?」
なんかないのと言われても………。
「なんで、ゴスロリ服?」
「趣味よ」
「そうか…スッキリしたわ、じゃ」
「ちょっとぉ!?もっとないの!?こう、ねえ!?」
俺の袖を引っ張りながらそんなことを言う。
いや、ねーよ。一番気になっている事を聞いちゃったんだからもうねーよ。
「もっと聞いてよぉぉぉ!」
やめろぉ!袖を!袖を引っ張るなぁぁぁ!!
俺へ振りほどく為に腕をブンブン振る。ゴスロリも負けじと必死にしがみつく。
格闘することだいたい20秒。ようやく離してくれた。
どうしても質問して欲しそうなのでさっきの発言から強引に質問を引っ張り出す。だってこの子さっきから涙目なんだ。
「それでさっきの試合見ていたんだって?」
それにシアンは涙を拭い、「ふふん」と胸を張りながらさそがし面白そうに答えた。無い胸張るなよ。
「ええ、観戦させてもらっていたわ。とてもとても興味深い試合だったわ」
「へぇ~、主にどんなところが興味深かったんだ?」
「そうねぇ~……」
そしてシアンは続けざまにこう言った。
「あなたが相手を気絶と見せかけて、眠らせたっていうところかしら?」
以前の投稿で投稿頻度を上げると嘘を申しましたことを謝罪いたします。
まことに申し訳ごめんなさいでしたm(。_。)m
これからはわたくしめの気分しだいであげよっかなぁ~って思っております。