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A.R.T.S.  作者: Mica
3/8

転入

「はぁーーー〜〜〜………」

なんでだ。なんでだよ。おかしいだろこんなの。どうして…。

「テストに合格してんだよーーーー!!」

現時刻午前8時、俺は真新しい制服に身を包み学園への通学路をトボトボと死にそうな顔で………走っていた。発狂しながら。

「あーーーーーーーー!!!!!!」

なんでこういうことをしているかというと、それはつい1週間前に遡……いや、もう言うわ。

起きたら保健室的な所だったから職員の人に声をかけ、雪希を返して貰ってから一緒に帰ってくると、ポストに学園からの合格通知が届いていたから、期待して開けてみるとまあ不思議、合格だったわけですよ(絶望)。

しかもその後制服やらスマホ型生徒手帳やら何やらが届いてしまって、結局始業式に行かざるを得なくなってしまったわけだ。

「ふざけんじゃねぇーーーーーーー!!!!!」

「ワッ!ワフッ!ワフ!ワフ!!」

俺が全力疾走しているせいで謎に頭の上にのっている雪希が髪に必死にしがみつきながらポンポンはねている。

ちなみに昨日拾ってきた白いポメラニアンの名前は5秒考え、雪希〈ゆき〉に決めた。

理由は毛並みが雪のように白くて綺麗だったからである。

頭の上でポンポンはねている雪希が可愛くだんだん見えてきた。ちょっと意地悪してみたくなったので首を左右に振ってみる。

ぶんぶんと結構強めで振る。

走りながら首を振っているので絵面的にはキチガイにしか見えないだろう。が、気にしない。

「ワフッ!?ワフッ!?!?ワフーーーーー!!!」

あ、飛んでった。が。

「ほい、ナイスキャッチ」

飛んだ雪の着地地点に先に回り込んでお姫様抱っこようにでキャッチした。

雪希は仰向けで目をグルグル回していた。

ごめん。

と、ある場所にふと目がいった。

「お前、メスだったんだな」





なんだかんだありつつぼちぼち学園に近づいてきた。

そして周りには制服に身を包んだ人達が増えてきた。

見たところ男女比率は女子が少し多いかなというくらいである。転入早々面倒臭いことに巻き込まれなければいいんだけどな。

ちなみこの学園には校門に8:30までに入らなければ遅刻になるのだが、今の時間は8:10なので結構余裕がある。

いやー、ショッピングモールだけじゃなく学校にも近いなんて、あのアパート、やるな!

「……とりあえず、職員室行くか」

と、呟きそこへ向かった。

職員室では俺とそんなに年が離れてない若々しい先生が案内してくれた。

転入手続きはもう終わらせてあるらしいので、あとはクラスのことだけだそうだ。

そしてこの人が俺が今日から転入する2ーDの担任だ。

「は、初めましてっ!今日っからお、御伽君の担任になります 。竜胆りんどう 晴華はるかです!まだまだ新人の身なので、ふちゅちゅか者ですが、よろ(ぶちっ) 」

顔も耳も首も全部が赤くなって、めっちゃ緊張しているのが見て取れる。

手や足だってプルプルしてるし、声も上ずっている。

終いには舌も噛んでしまって涙目にさえなっている。

多分、極度のあがり症なんだろうな。

「と、とりあえずよろしく?」

と、俺。

「あっ、はい!よろしくお願いします!」

と、竜胆先生。

もはやどっちが教師で生徒なのか文章だけだとわかりづらい。

それにしても新人教師を担任にするなんて、人手足りてないのかな?それとも世も末なのか?

「あ、あのね!先生、君にお願いがあるの!」

なんだろうか?この人の事だからそう難しい要求はしてこないとは思うけど。

やはり顔を赤くして、噛みながらも一生懸命、一文字一文字言葉にしようとしている。

なんというかこの人に休まる時って、無いんじゃないのかと思えてきた。

そして竜胆先生はこう言った。

「あの、ク、クラスの子達に君を紹介する時に、『それでは転校生を紹介します。入ってきて』って言ってから教室に入ってくるやつ、やらせて欲しいの!」

え?そんだけ?ホントにそんだけなの?

逆にそれって普通じゃないの?

「私ね、教師になって転校生を紹介するの夢だったの!やっぱり転校生の紹介といえば定番のこれよね!ねぇ、ねぇ、君もそう思わない?」

「あ、そうですね」

つい敬語になってしまった。そして俺は分かった。

この人あれだ。自分の大好きなことを語る時だけとかに饒舌になるやつだ。

そしてとてもめんどくさい。

まあでも、こんくらいなら。

「わかったよ、竜胆先生の夢を叶えるよ」

すると竜胆先生は万遍の笑みを浮かべた。微かに瞳も潤っている。

なんだろうか?それを見ていると、とても微笑しい気持ちになる。

「グスンッ、ありがと、ホントーにありがとー!」

これもこの人の人柄なんだろうなと、心に思った。

そして俺達は教室へ足を運んだ。





さあ、教室の前まで来た。

竜胆先生が「はーい、皆着席してねー」と言いながら、入っていく。

実質、転校はこれで2回目となる。1回目は山奥の小さな中学校の時である。

あの時はあさ5時に起きないと間に合わなかったんだよな。

というか、実際起きてたのは4時だけどな。

あの時の1時間の朝練で1日の体力をつかってたんだろうな。

今じゃもうそれもなくなってすんごい幸せ!

そして転校生の紹介に入ったので。

「それでは転校生の紹介をーーー」

「失礼しゃす」

俺は言いきる前に教室に入り、自己紹介をする。

「えっとー、御伽空宙っていいます。趣味はーー」

その時胸ぐらをガシッ!と掴まれ。

「なんで言いきる前に入ってくるのーーーーー!」

ブンブンブンブン!

かなり激しく前後に揺られる。

その時の先生の顔は、とてもお見せできる顔では無かった。

「ごめん、ごめんって!俺が悪かったから!もう一回やるから!」

TAKE2

「転校生の紹介をします。入ってきて〜」

そして俺はドアを開け、教室に入る。

なんかかなり疲れた。

きっとげんなりしてるだろうな俺の顔。

「さっきも紹介した通り、御伽空宙っていうんだけど基本多趣味なんで、よろしく……」

周りからはぎこちない拍手をいただいた。

そして何人かの人が、俺の頭を見ながらコソコソ話していた。

「あー、こいつの名前は雪希。犬種はポメラニアンで、昨日拾ったんだけど、すっかり懐かれちまったんだ。まあ、仲良くしてくれ」

みんなは納得がいったのか、さっきのぎこちなさと違い、受け入れてくれた顔で拍手してくれた。

「御伽君の席は、1時間目の授業が終わってから用意します」

「いや、今用意しろよ」

それはさすがに突っ込ませてもらうぞ?

「1時間目はE組と合同でアーツの実習だから、ごめんね。それに、御伽君まだ、実習の選択してないでしょ?」

あー、そういえばこの学校はそういうのをやってるんだったな。

確か、自分に見合った属性ごとの実習を取り入れてあるんだっけか?

先生を見ていて気づいたことがある。

「そういえば、先生、緊張が無くなったな?」

初めて会った時よりも全然すらすら会話が出来てるから、まるで別人と話している感覚なのである。

「あっ、私ね、1度顔を会わせて、知り合いになれば大丈夫な人なの。もう初対面の時とは嘘のように話が出来るようになるのよ」

自覚、あったのね。

するとふと思い出したらしく、竜胆先生が声をかけてきた。

「そういえば御伽君、朝の朝礼が終わったら学生会室まで来てって叢咲さんが言ってたよ?」

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