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幸せな日々がやってきた。

その日の夜、僕とみうは家の近くにある公園に行った。

学校の敷地ぐらいの大きさのあるその公園から綺麗な星空を眺めに来たのだ。

僕たち以外誰もいないこの街は光らないから、星がよく見える。

「星ってなんでこんなに綺麗なんだろう?」

純粋にみうが聞いてくる。

大人なら「君の方が綺麗だよ」なんて言うかもしれないが、僕は子どもだから言わない。

「なんでだと思う?」

「そうだねぇ……」と考えこんでから僕は言った。

「儚い……からかな」

「儚い?」

その言葉にみうは反応する。

「あの星たちの光って何万年、何億年をかけてこの地球に届いているんだよ」

「そうなんだ」

「つまり、あの光は何万年、何億年も前のものなんだ」

僕は視線をみうから星空に移す。

「だから、この光を届けた星はもう消えているかもしれないんだ」

「え?」

みうは少し驚いた顔をした。

「だからあの光もいつか消えてしまう。そういう儚さがあの光を綺麗にさせているんじゃないかな?」

僕の問いかけにみうは答えなかった。

ただ悲しそうな表情をしながら、星たちを眺めていた。



この世界に来て二日目。

僕たちは小学校にあるプールで遊んでいた。

「いヤッホーい!」

柄にもなく、僕は子どものようにプールに飛び込む。

やっぱり夏といったらプールだ。冷たい水が僕の心と体を癒してくれる。

みうは泳げないらしく、さっきからプールの中で僕の平泳ぎを見ている。

「泳ぎ教えようか?」

みうは「うん」とうなずき、僕のところにやってくる。

僕は彼女の両手を繋ぐ。

「まず、足を上下にバタバタさせてみようか?」

僕がそう言うとみうはバタ足をする。

初心者だと、バタ足が上手くできない人がいるが、みうは上手にバタ足をしている。

それには美しさすら感じた。

その後も僕は彼女にクロールのときの腕の動きを教えた。

すると彼女は一度でマスターし、さっきまで泳げなかったのに、クロールができるようになったのだ。

僕の頭の中で黒髪で長髪のおばさんが「みう、恐ろしい子」と白目を剥きながら言っている。

みうはクロールで端から端まで泳いで往復し始めた。

あまりの綺麗な泳ぎに僕はついつい見蕩れる。

そして、楽しそうに泳ぐ彼女を見て、心の中で微笑んでしまう。

端についた彼女は僕のほうに泳ぎながらやってきた。

すると。

僕にいきなり抱きついてきた。

「えっ? どうした?」

みうは天使のような微笑みを浮かべながら僕にいう。


「捕まえた」


僕の顔が一瞬で赤くなる。やばい、可愛い。

「じゃあ、そろそろ冷えてきたし帰ろうか!」

僕はすぐにその場を去り、男子更衣室に向かう。

逃げたのではない。戦略的撤退だ。

その日は、ずっと、僕はみうと目を合わせることができなかった。


この世界に来て三日目。

僕はある感情に気づく。

僕はみうが好きだ。

まともに恋愛したことがなかったから気づかなかったが今確信した。

「今日も楽しかったね」

なんて言いながらみうは僕の隣で微笑む。

彼女の微笑みは僕の心を癒してくれる。

親との喧嘩でついた僕の心の傷は、あんなに深かったのに、もう治りかけている。

夜道を僕たちは歩く。

今夜は満月だから明るくてよく見える。

みうの綺麗な顔もだ。

この気持ちは伝えるべきなのか悩む。

この気持ちを伝えたらみうはいなくなってしまうんじゃないか?

そんなことを考えてしまうのだ。

星のように儚さがさらにみうの魅力を引き立てる。

みうに触れなくてもいい。

僕はみうの隣にいればそれでいい、それでいい。

「ねぇ? 手を繋ご?」

みうがいきなり聞いてきた。

すみません。さっきのは嘘です。

とても手を繋ぎたいです。

彼女に触れたいです。

「いいよ」

平然を装って僕は返答する。

みうの手。とても小さくて、可愛い。

僕らのこの姿を見て、星たちは微笑んでいた。

みうは右手で夜空に指さし、星座の名前を言う。

それに対して僕は「正解」と言う。

みうは「やったぁ」と言って微笑む。


あぁ、こんな幸せな日々がずっと続けばいいのにな………。























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