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1・狼さんと赤い頭巾の女の子

狼さんが、様々な物語の中を旅して、自分の幸せを探すお話。

1・狼さんと赤い頭巾の女の子


 狼さんは、とある森の中を歩いていました。この森は鬱蒼とした森ではなく、ぽかぽか陽気の明るい森でした。

 狼さんはふと、視界の端に赤いものが見えました。それは、森の中にあるお花畑でお花を摘んでいる女の子の頭巾の色でした。

「こんにちは」

 狼さんは女の子に近寄って声をかけてみました。

 女の子は振り返って狼さんの姿を認めると、あからさまに嫌そうな顔をしました。

「なにが『こんにちは』なの?」

「はい?」

「あんた、狼なんでしょ? だったらわたしを怖がらせないといけないんじゃない?」

 狼さんは、困ってしまいました。確かに自分は狼です。しかし、狼さんには目の前の女の子のことを怖がらせるつもりはありませんでした。

「どうして僕がそんなことをしないといけないのでしょうか?」

 狼さんはなるべく丁寧に、女の子を怖がらせないように質問しました。女の子は特に怖がった様子も見せずに、不思議そうな顔をしました。

「どうして、わたしにそんなことを聞くの? 狼というのは、怖がらせることが大好きなんじゃないの?」

「一般的な狼は、そうかもしれませんが、狼みんなが人を怖がらせることが好きな訳じゃないんです」

「ふーん……」

 女の子は狼さんの言葉に興味なさそうに頷きました。狼さんはさらに困ってしまい、分かりやすい説明をしようと思いました。

「つまり、人間だからといってみんな大人ではないでしょ? 大人だからみんな人間でもないんです。だから狼だからって怖がらせるのが好きな訳じゃなくて……」

「それじゃ、あんたは何でわたしに声をかけたの?」

「え? えっと」

 狼さんの説明に嫌気がさした女の子は、狼さんの言葉を遮るように質問しました。

「えっと、何をしているのかな?って思って」

「お花を摘んでるの。わたし、これからおばあちゃんのところに行くから」

「そうなんですね」

「それじゃ」

 花を摘み終わった女の子は終始、狼さんを怖がることなく、去っていきました。狼さんはしばらく女の子を見送っていましたが、ふとあることに気が付きました。

 それは、女の子が「狼だから」という理由で怖がったり避けたりしなかったことです。

「人間の女の子と、お話出来たのはこれが初めてかもしれない……」

 ふと、そんなことを思うと狼さんは嬉しくなって花畑でスキップをし始めました。

 バンッ!

 鋭い銃声が響いて、驚いた狼さんは辺りを見回しました。すると、足元の花に小さな銃痕がありました。銃声が聞こえた方角を目で追うと、銃を構えた男性が、こちらにじっと銃の狙いを定めていました。

 狼さんは慌てて駆け出しました。見晴らしの良い花畑を抜け森の中に駆け込みます。

「あれはきっと猟師だ」

 そう察した狼さんは全速力で逃げます。幸いなことに猟師は追ってきませんでした。息を整えながら狼さんは、人間って恐ろしい、と思いました。

「人間の方が狼より、ずっと怖い……」

 狼さんは走り疲れて、いつの間にか木の間にうずくまって眠ってしまいました。



1・狼さんと赤い頭巾の女の子 おわり


 初めまして、こんにちは。無月華旅です。まず、更新がだいぶ遅くなってしまって申し訳ないです。狼さんと一緒で、少し自分探しの旅に出てました……。いや、まぁ……私生活の不摂生と、創作意欲の低下によるものです……。今後は自分のできる範囲で、頑張って更新していこうと思ってますので、よろしくお願いします!

 最後になりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます。また、次回お会いしましょう。

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