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食卓戦記  作者: 翠架
1日目 土佐豆腐と雨の日
7/10

猫の思案

普通の猫の平均寿命は12、3程度。家猫でも16年程です。

まあつまり何が言いたいかというとこの話の中の猫はフィクションです!



 我が輩猫である。名前は寧子ねいこ。気取って有名な小説の冒頭を真似てみたがこれであっているのか分からん。うちの奴らは本をあまり読まないからな。

 あ、先に言っておくが俺はオスだ。例え寧子という人間の女のような名であってもオスだ。寧子の子は子供の子。それ以上でもそれ以下でもない。



 少し前、爺さんが老人ホームと言うところに入った。一年前には庭に池を作ったり畑を耕していたのが嘘だったかのように物忘れが酷くなったり、常にボーっとしているようになったからだ。今まで爺さんと緑華と晶嘉の三人暮らしだった生活は一変し、兄妹二人暮らしとなった。

 はじめの頃こそ未成年の二人暮らしで大丈夫なのかと心配もしたが実際何の問題もなく暮らしている。あえて問題点を上げるとしたら妹の晶嘉が掃除できなさすぎると言うことか。


 この二人が爺さんの家に住むようになったのは今から三年前。中学二年生だった緑華と小学六年生だった晶嘉が寒い冬の日に「父さんと母さんがいなくなった」と言ってやってきたのだ。

 …勘違いされそうだから言っておくが、二人の両親は子供をおいて夜逃げしたわけでも死んだわけでもない。ただの海外赴任中だ。紛らわしい言い方をしたせいで色々な問題が起きたし、今でも同じ様な表現をしているようでよく勘違いが起きているがその話は割愛しておこう。長くなる。

 ともかく、あいつらは両親や爺さんが居なくともよく暮らしているのだ。




 日課の夕方の見回りに出かけたら、途中で雨が降ってきた。雨は嫌いだ。夜に降るとなかなか乾かない上に毛並みが整わない。何より家に入る前に毛繕いをしなければ室内が汚れる。

 走って家へと帰る途中、晶嘉と出くわした。真面目な顔をして俺と並列して走る奴を見ながら、相変わらずコイツ足早いな、と思った。ついでに晶嘉が真面目そうな顔をしているときは基本的に飯の事しか頭にない。せっかく人としては顔が整っているというのに残念なことこの上ない。


 家の玄関の、俺専用の入り口から入ったらふわりと美味しそうな香りが漂っていた。今日の飯は何だろうか。

 隣では晶嘉が靴をポイポイっと投げて早足にリビングへと向かっていた。オイコラ!せめて雨で濡れた服をどうにかしてこい!と言う意味を込めて抗議の声を上げたがスルーされた。あいつの行動はいつも淑やかさの欠片もない。お前は男子中学生か。




 十数分かけて毛繕いし終えリビングにいったらなんか緑華が打ちひしがれていた。どうやらまた晶嘉に飯を持って行かれたらしい。個別に皿に分けておけば良いのだろうが、なぜかこいつにはその発想がない。成績は優秀なのにひらめき力はあまりないようだ。

 そしてふと、視界の端にサラダの上に乗った緑色に輝くものが映った。



 あ、あれは……茹でブロッコリー!!


 生で食べれなくもないがさっと一茹ですることによって食べやすくなったブロッコリー。茹で汁にコンソメが入ると更に美味しくなる、絶妙な茹で時間を要求する代物だ。


 クッ、最近食卓に並ばないから油断していた…。こんな事ならもっと早く帰ってくれば良かった。

 未だ打ちひしがれる緑華を尻目にそろりそろりとテーブルの上のブロッコリーに近付く。

 おぉ…良い感じに冷めてるな。では、頂きます…。

 おぉ…このプチプチ感最高。ほんのりとコンソメ味がして飽きが来ない。緑華のやつ料理に関しては本当に高性能だな。いくらでも食べれる。むしろ毎日このブロッコリーでも良い。




「あ、こらっ、にゃー!」


「にゃぎぃっ!?」




 卓袱台の上に乗ってブロッコリーに舌鼓を打ってたら緑華に怒られた。怒られて十分近く肉球をぶにぶにされた。

 この野郎…許可なく肉球に触りおって…!慰謝料としてブロッコリー一年分を請求するッ!!




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