8話。 蜂退治。
ぴぃー
ぴょろろろろー…
ぴぃぴぃぴぃ…
小鳥がさえずる。
ごろごろごろごろごろ…
…ぶふーぶふー……
荷台が揺れて行く音。
場所はモノトーン国から南東の森。
運よくロバ二頭引きの荷台に乗せていってもらい、すぐついた。
大きな赤いジョロキアキホーテ…馬みたいだ。
「もうすぐポイントさ、つくどー。」
「ありがとうございます、マードさん。」
「最近は、こだらわぎゃざぁー(若過ぎる)者も冒険者さなるだが。将来頼もすぃなぁ。」
「今日からジュニアギルドが始まったので、どんどん子供たちが冒険者になりますよ!」
「はっはっは。それはありがでぇ、オラもなんか依頼しようがね。……あぁ、入口ついたで。」
「「「はーい。」」」
「気ぃつけでなぁ。」
「ありがとうございました!」
「えーと…この黒いポイントツリーが、はぐれたときの目印だね。こーやってカードに登録しとくんだって。」
「こう?」
森に入ってすぐの小さなスペースにある長くて黒い杉…に似てる木。
メッシュ兄ちゃんが、カードでギルドの説明書と木を交互に叩きながら説明する。
ピー………
ピコン。
【集合地点ヲ登録シマシタ。】
「「おおぅっ!」」
「カードがしゃべった!」
【ぎるどかーどノゴ利用アリガトウゴザイマス、リーダー・メッシュ様、ナラビニめんばーノ皆様。ワタクシ、フィールド専用さぽーとめかノ、「フィサモ」と申シマス。ヨロシクオネガイイタシマス。】
「よ、よろしくお願いします…」
【ゴ丁寧ナ対応、アリガトウゴザイマス。ワタクシハ、「金属精霊」の加護ニヨル相互通話機能ヲ所持シテオリマス。ゴ質問ガゴザイマシタラ、マタかーどヲノックシテ呼ビ出シテクダサイ。】
「は、はい…」
【ソレデハ、オ気ヲツケテ、イッテラッシャイマセ。】
ピー、プチ。
「あー…」
「………はー……」
「……へー…」
「…行くか。」
「「……うん…」」
周りを見渡せば…小動物が木を駆け登ったり、こちらを見つめていたり。
今の所蜂の姿は見えてこない。
「ミリー姉ちゃん、兵隊ビーの中でも近衛兵隊ビーが作るロイヤルゼリーって、特に美容にいいらしいよ。ほらここ。」
「へー…ロイヤルゼリーだけを食べて育つとクイン・ビーになるんだ…ふーん…いいわねこれ。最優先で収穫するわよ!」
「はーい。」
「お前ら本読みながら歩くなよー…いきなり襲って来たらどーすんだよ!」
……がさ!
… ブブブブブブブブブブブブ …
「……でたぁぁぁああ!?」
「兵隊ビー!警戒区域に入ってたんだわ、アッシュ構えて!」
「あわわわわ!?」
ギャリン!
しゅぴん!
ぱしぃっ!
「どうりゃぁぁぁああああ!」
ズバッ! ぐしゃっ!
「火炎障壁!」
ぶぉぉああああ!
「やぁっ!」
しゅぱん! ぎゅるるる…
「ぶっ飛べぇぇえええ!」
しゅぽーーん!
ブブブブブブ…
「二、三匹逃げたか…」
「羽と針集めたら移動しましょ。大群に来られたら厄介だわ…」
「わかった!」
手早くムチを回収して、すぐに短剣でメッシュ兄ちゃんたちが倒した兵隊ビーから羽を切り取る。
針は毒耐性のあるミリー姉ちゃんが回収する。
「しかし使い方、うまいよなーアッシュのやつ…」
「は?」
「ムチだよ。薙ぎ倒すのも放り投げるのもあっさりマスターして…」
「…そうね…武器、選ぶ前に『ムチがつかいたい!』って先に言ったんだもんね…不思議なことってあるのね……」
「不思議で片付けていいのかなぁ…」
「兄ちゃん、姉ちゃん!おわったよー。」
「おー、こっちもだ。移動するか。」
「うん。」
ざっ
…ざざざざざざざざざざざざざざざざざ……
「わ?!」
足元でアリ?やらトカゲやら…
色んな生き物が擦り抜けていく。
「な、何……?」
「…やばいな…殺気が二つ…」
「……………!」
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ!
「おいでなすった、キングとクイーンだ!」
「「ぎゃーー!大群ーー!!」」
… カッカッ!
「フィサモ!」
【ハイ、メッシュ様。】
「今回の依頼はクラウンとティアラを持ち帰るだけでもいいのか?」
【…検索中…ハイ、討伐依頼デスガ、きんぐトくいーんハ王冠ヲ失ウト、ろうデ新シク作リ直スマデ巣カラ出テコナクナリマス。約一年間ハ、大丈夫デス。】
「…よし、サンキュ!聞こえたな二人とも!王冠をたたき落とせ!!」
「「お、おーー!」」
ブブブブブブブブブブブブブブブブブ!!
「でいやぁぁぁああああ!」
ばきばきみしみしみしベキバキパキポキベキ!
「木精霊! 力をかしてくれぇえええ!」
ざわざわざわざわざわざわざわざわ…
…みしみしぎしぎしぎし…
「棘刺包囲網ぉお!! んでもって、再起不能斬ぃぃいいいい!」
兵隊ビーの大群を相手にしているメッシュ兄ちゃんのほうから…あんまり聞きたくない音がする…
耳ふさいどこう…
「火精霊!お力を!! 炎上大砲槍!」
ずづづづづづづづづずずづどどどどどっどどぉおおお!
ブビビッビイィィイイ!
巨大な炎のヤリが、兵隊ビーをクイン・ビーとキング・ビーから引き離す。
「アッシュ!今よ!!」
「風精霊!発動ぉぉぉぉおおお!!」
どひゅぅぅぅぅぅぅうううううう!
兄ちゃんと姉ちゃんがどかどかやってる間に仕込んでおいた魔法を開放する。
「竜巻陣」 そのまんま、決めた範囲の中で竜巻を発生させる魔法。
「…届け!」
ぴしゅん! ぱしん!!
ゴロロン…
【……………………………!!!!!!!!!!!!】
王と王妃が一目散に逃げていく。
つられるように、兵隊たちも逃げていった。
「「「やったぁあああ!」」」
「王冠ゲット!」
蜜蝋でできた、クリーム色に輝くクラウンとティアラ。
【オメデトウゴザイマス。初クエスト、くりあーデ、ゴザイマス。】
「いよっしゃぁああああ!」
「ばんざーい!」
「やったやったぁ!」
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初クエスト。
『 キング・ビー、クイン・ビー 討伐依頼 』
クラウン・ティアラの入手により、クエストクリアーとする。