15話。 因縁。
ちょっとだけ、アッシュたちがキレちゃいます。
残酷ってほどじゃないんですが、普段の彼からは想像つかないかも…
お兄ちゃんはもともとどす黒い人ですが…
翌朝ー………
柔軟、ランニング、縄跳び…
そのほか諸々…
各々準備運動を終えて、いざ!ジュニアギルドへ…!
「お待ちしておりました、メッシュ・マルタさん。そしてメンバーの皆さん。…今回のギルド認定チームランク初期試験の試験官を勤めます、オーハラ・シンカーです。どうぞよろしく。」
「よろしくお願いします。(×5)」
「それでは、地下闘技場へご案内します。」
特大の陽蓄日輪石が置かれた燭台から、かなり明るい白っぽい光が広がる闘技場。
蛍光灯なんかより目に優しい……やっぱりいいね、魔法!
それに太陽に当てておくと光をたっぷり溜め込むから、使い捨てになるロウソクより経済的だし!
エコだね!
小さくても三つくらい使えば一晩中充分役に立つから一般家庭用も夜間の照明などとしてしっかり普及している。
うちにも各部屋にニ、三個ずつおいてあるよ。
試合会場はテニスコートくらいの広さ…
正面にはガンガンと体当たりの音が響く暗い檻…
「ルール説明は受けていますよね?」
「はい。」
「では、早速始めたいと思います。……あの檻が開ききるまでは、こちらのラインから出ないくださいね。」
「はい!(×5)」
「き、緊張してきた…」
「ルーナン、相手は1匹かい?」
「(くんくん…)いえ、複数…約20匹…結構密集しております、中型の爬虫類で土属性です。」
「……よし、アッシュ、ライリエナ、ルーナン、三人で最初から思いっきり突っ込め。まずど真ん中だ!」
「「「了解!」」」
「ミリー、お前は正面から見て左へ構えてろ。俺は右だ…アッシュ達が左右に分散させたと同時に放て!あとは各々…暴れてやろう!」
「任せて!アッシュ、うまく逃げなさいよ!」
「ご心配なく。小生がお守り致します…」
「蹴散らすのは任せてにゃぁ!」
「よし、やるぞー!!」
「「おー!!」」
黒い鎧のメッシュと黒いローブのミリアーナ。
赤い闘着のライリエナは念入りに屈伸をしている。
なぜか灰色スーツが気に入ったルーナンは、ネクタイを締め直している。(たった1日で着方覚えたよ…)
そして僕は、金属繊維の固めな上着とズボン。薄手の胸当てと胴巻きに愛用の針蛇皮のムチ。
ま、ふつーの冒険者スタイル。
「それでは……試験開始!!」
……がらがらがらがら………
檻が開く…
「「えぇ!?」」
「あっ……………!?」
「主殿…あれは……!」
「マッドドラゴンにゃぁぁ!アッシュ、早く構えにゃいと!」
「まて、ライリエナ、まずい……!!」
「言われたはずですよ、一番苦手なモンスターが出る、と……!」
ガゴォォォン…!
「うー…っ!なんだかわからないけど、先行くにゃ!」
「だめだ、ライリ…」
「「「動くな!!」」」
「ふにゃ!?」
「火精霊、お力を。 溶岩表大陸!」
「木精霊、力を貸せ!寄生木剣士!」
「風精霊、お力を…暴虐風気圧!!」
ボゴォォォ……!!
ずぶしゃっ!!
ぐしゃ……みち、ぐしゅ……
「ひ、ひにゃぁぁぁあああああ!」
「あぁ……やってしまったか…」
「な、なんて技を……!!」
「…ふっ、ふっ……」
「はー…はー……」
「……ふぅ…」
約2分後……
マッドドラゴンの死骸が、山積みになっていく……
「いや……いやにゃぁぁ……!!」
「…落ち着いて、大丈夫だから……しかしまいったな、主殿…どうするつもりだ…」
びきびきびき……めき、めき…
ずず、ずぶずぶ……ごきん!ずりゅ……!
べきゅっ …どちゃっ…
「ふう……これで終わりですか、オーハラ試験官?」
「は、はい…」
血みどろのメッシュ兄。
まぁ、僕も反り血と泥でぐちゃぐちゃだ…
ミリー姉ちゃんはまだきれいなほう…
マッドドラゴンたちは、ほぼ一切抵抗できないまま、全滅した。
3分59秒。
僕たちの結果。
ランクはDとなり、 AからFまでの中で、下から三番目。
ま、それなりってこと。
「ありがとうございました…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!そのままの格好で出て行かれるのはかなりまずい!!」
「…あぁ……そうですね…」
「…本当にどういうことなんだ……あの呪文は、含有魔力の最上限から半分以上一気に消耗する高位魔法じゃないか! ジュニアギルドにいる年齢で、使える魔法じゃない!!」
ぬらしたタオルをわたされて、顔や服をぬぐっている間、オーハラ試験官さんはずっと不審そうな顔をしている…
一方のルーナンは、ライを必死になだめている…
悪いことしちゃったな…
でも、おさえられなかったんだもん…
「母が、教えてくれたんです。 緊急事態に備えて…またあんな目にあわないためにって。」
「え?」
「俺たち、小さいころに誘拐されかけたことがあったんです。 そのときお袋はパニックになりかけてて、俺たちを助けるどころじゃなくて…ひどく後悔してたんです。 だから、自分の身は自分で守れるようになってほしいって言って、4歳くらいのときに、ひとつづつ教えてくれました。」
「そ、そんなばかな!? 子供に教えていい魔法じゃないぞ!!」
「母もそう言っていました。 だから、本当に緊急事態にだけって約束しています。」
「…アッシュは覚えたばっかりだったな。含有魔力が生まれたてから結構高くてすんなり使えるようになりやがって…むかついたなぁ!」
「か、かんべんしてよぉ…」
「今のどこが緊急事態だったんだ!!?」
「「「マッドドラゴンが相手だったから。」」」
「はぁ!?」
「本当にいやだったんです、トラウマで… だから、出来る限り戦闘は避けてきたのに…ここで出てくるなんて…」
「暴走しないように必死に呪文思い出してさ。 マジあせったぜ…」
「…赤ちゃんだったから覚えてないけど、拒絶反応出っ放しでした…やっと落ち着きましたよ。」
「あっしゅ…」
「主殿…」
「ごめん、ルーナン。迷惑かけて… ライ…怖かったよね、ごめん…」
「…嫌にゃ…」
「ライ?」
「あんな怖いアッシュを見るのはもう嫌にゃぁ! あんな呪文もう使っちゃだめにゃ!約束してにゃぁぁぁあああ!!!」
ぼろぼろ泣きじゃくるライ…
「主殿、いくら憎い相手の乗っていたマッドドラゴンと同じだったからっていっても、彼らは関係ありません。やりすぎです、慎んでいただきたい…」
「うん、反省してる…もうしないよ。 大丈夫。」
「ひっく、ひっく…」
「………ごめんね、ライ…」
「う、うにゃぁぁぁあああ……」
結局、ライの機嫌を直すのに
山鳥の煮込み料理を3人前おごるという約束をすることになった…
早くお仕事いってこなきゃ…(滝汗)
「いってきまーす!」
「一人で大丈夫か?」
「うん、すぐもどるよー!」
「(むすぅ…)」
「ライリエナ、そろそろ機嫌を直したほうが…」
「うるさいにゃ、だまるにゃ。」
「はいはい…」
スーツ、大好きです!
ルーナンの服装、考えに考えた結果。
スーツ絶対似合うの!!
一番年上だし、大人になったルーナンはもっともっとスーツの似合う男前になりますよ!!
そして、アッシュに従順なの!
狼万歳!!(何がだ)
でも結局ルーナンもライも出番ないし…あれぇ?(冷や汗)