12話。 サンダーブリッツキャット(雷猫)
------さかのぼること 森へ入って約30分くらいのときのお話------
「なんでこんないきなりでてくるよ、大型モンスター!」
「きゃぁあああーーーーっ」
「えーとえーと、サンダーブリッツキャット!風属性の雷!だからえーと、ノムーラ・フェ!お力を!! 土砂床!!!」
ずどごごごごごごごごごごごごご!
『ぎにゃぁああああ!』
「ちぃ! 足止めにもならないか… 姉ちゃん、攻撃魔法!!」
「しゅ、集中してないとできないよぉ!!」
「もーー!どーすんだよこれぇ!? 村までいけねーよ!」
『ぐるぅぉおおおおおおおあああああ!!』
『コルォオオオオオ!』
がぶぅぅ!!
「ルーナン! 間に合った!!」
「あぶねぇ…!」
「ルーちゃん!」
『グルルル…』
「ルーナン!追い払うだけだよ!まだ子供だ、ころしちゃだめ!!」
『フシャァアアアアアア!!!!』
『(まじゅーが、にんげんのいうこときくな! うらぎりものめ!!)』
「!!??」
「どうしたアッシュ?」
「に、兄ちゃん、今何か聞こえなかった?誰かしゃべった…!」
「はぁ!? 俺たち以外に誰かいるのか?」
『(ママをかえせ、にんげん!! きらい、きらい、きらい、きらい!!!)』
『グルルゥォォォォォオオオオオオ!!』
『(にんげんなんか、いなくなれぇえええ! ママをかえせーーーーーーーー!!)』
「きみのママ… 殺されちゃったの? 人間に?」
「「!!????」」
『(!?)』
『クルルゥウ……』
「大丈夫だよ、僕たちはそんなことしないよ。 仲直りしよう、ママのところ、連れて行って。あやまらなくっちゃ…」
「「アッシュ!!??」」
「大丈夫、聞こえてる。君の声、わかるよ。 おいで…」
『(な、なんだよおまえ!! きみわるい!くるな!!)』
「うん、自分でびっくりしてる、でも、聞こえちゃったんだもの…ほうっておけないよ…」
『(やだ、くるな、 こないで………!!!)』
だだだっ・・・!
「あ、まって! ルーナン、追って!!」
『ルォウ!』
「ちょっとアッシュ!?」
「おい!!」
しばらく走って…追いついた先にあったのは…
「お、…お墓…?」
『ニャォゥ…』
『……クルルル…』
おそらく、母親の亡骸に土をかぶせただけだと思うが、その上に石が乗せてある。
このサンダーブリッツキャットには、「埋葬」の意思があったんだろう…
大きな体を震わせてにゃぁ!と鳴く…
そこに現れたのは…
「ぇ、ぇえ!? まさか…幻影!?」
ルーナンと同じくらいしか背丈がない、紺色に金のラインの猫。縮んだ!!??
いや、猫としては大きいけど… ルーナンも子供だけど狼だから。
それをさしひいてもさっきまでの巨大なモンスターとは比べ物にならない。
でも、ルーナンが腕に噛み付いてた…とすると…
「一時的な、肉体の強化ってことかな…すごいなぁ…」
そっか、このお墓に人間が近づかないように見張ってたんだ…
「………」
だまってお墓に向かって手を合わせてしゃがむ。
しばらくして立ち上がると
猫が、ぐいぐいと頭を押し付けてくる。
『にゃぁ…』
「…あれぇ…?声、聞こえなくなっちゃった…なんで……?」
『ルルゥ…』
「……まぁ、いっか。仕方ないよね。 ねぇ、もしよかったら、いっしょにこない? でも、今、お仕事でまたすぐ行かなきゃいけないんだ。 もし、もしね、僕たちと一緒におうちに来てもいいよって思ってくれたら、僕たちが戻ってくるまでルーナンと一緒にいてくれないかな?お迎えにくるから…」
『…みぅ?』
「お墓参りも毎年来るよ。 もうちょっと場所、移動したほうが安全だと思うから、姉ちゃんたちと相談するから… ママのこと、ちゃんとおまいりしようね。 大丈夫、約束するから、ね。」
『……』
「ルーナン、僕とお兄ちゃんとお姉ちゃんが戻ってくるまで、この猫さんと一緒に待っててくれる?」
『クルォォン!!』
「…ありがとう、ルーナン。」
「君にも名前、あげるね。 …ライ。」
『!』
「サンダーブリッツキャットには、雷猫っていう別名があるんだって。 そこからとって、ライ!」
『にゃ、にゃ!』
「お、気に入ってくれたかな? よかった。」
べろん!
「い、いでで! …猫の舌、痛いのは「むこう」と同じか…はは… じゃ、まっててね。すぐ終わらせてくるからね!!」
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そんなこんなで、姉ちゃんたちと合流して、おもっくそしかられて。
また三人で村を目指して歩いて、村について、迷子の親子を探して歩いているときに。
ルーナンとライに遭遇したのです。
何っていう偶然だよこれ!!
どれだけラッキーだよ!!
残念なのは…ライのお母さん…
もう少し早くあの依頼書がジュニアギルドに届いていれば…
二人とも無事に会えたかもしれなかったのに…
僕は、長老さんの話を聞きながら、ライの首にすがり付いていた…
「ごめん、ごめんね…ライ…らいぃぃ…」
『にゃぁ……』