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11話。 迷子の捜索依頼。

すっかり夏になりました。

毎日暑いです。


 ……んぎじゃじゃじゃじゃじゃ…

 …じょぃわじょわいんじょじょじゃじゃ……




虫うるさっ!


でも、モンスターじゃないし、やっつけるわけにいかないし、外なんだから意味ないし…



「鎧脱ぎたい…」

「ローブ暑い…」

「氷食べたいね…」

「……本当になぁ…」

「魔力の無駄遣い禁止ー。……あつーい…」



文句たらたら、今日もギルドの依頼です…


『迷い人、捜索依頼』


今向かっているのは、その迷子になった親子の住んでいた村です…




「ずいぶん深くなってきたなぁ…」

「……えーと…ああ、これだわ。いきましょ。」



小さな石を沢山詰み上げ、二対にした山がいくらか間隔を開けて並んでいる。

その間から、砂利をどかして雑草を抜いただけの簡素な道が見えた。


「あー、やっとついたー!」

「鎧、早く脱ぎてぇ…疲れたぁ…」

「暑いぃ…」







「お暑い中、遠路遥々おこしいただきまして…ありがとうございます。」

「手厚いおもてなし、ありがとうございます。」



ヤコウ村。

村人達は、皆フードを被っていて、目元以外を隠している。

暑そうだけど、これが正装なんだって。


長老宅は、茅葺きっぽい屋根に土壁の家。

意外と風がとおり涼しい。


しずしずと、お茶を運んでくるお姉さんも深いフードを被っている。

手袋もしてるよ…


「粗茶でございます…」

「ありがとうございます。」

「わぁ、このお菓子おいしーい!」

「ちょ、ちょっとアッシュ、コラ!お行儀悪いでしょ!」

「ははは、元気ですなぁ。」

「すみません…」

「いやいや、むしろありがたいですよ。…元気な声が村に聞こえるのはもう何ヶ月も久しぶりですからなぁ…」


「「……」」

「……(もぐもぐ…)」


まいったなぁ…

子供らしく振る舞っても、こんな空気じゃさすがに黙るよ…



「…あ、あの…迷子の親子についてなのですが…」

「はい、私の娘と孫娘なのですが…狩りを教えに行くと森へいって…そのまま…帰ってこないのです…もう半年になります…」


「…わかりました。 何か、お二人の持ち物を貸していただけませんか?同じ気配のする方向を探す魔法を展開します。」

「! い、居場所がわかるのですか!?」

「……わかるのは方向までです。通りすぎたら向きが変わりますからまたそこから方向を探します。しばらくはその繰り返しになるかと…」

「そうですか…君、部屋へ案内して差し上げて…」

「はい。…こちらでございます。」








通された部屋は、モンスターの毛皮で作ったベットがあるだけの、簡素な母親の部屋。

そのお嬢さん…つまり、お孫さんの部屋も、似たような作り。

ただ机と本棚があって、机の中には小さな箱があった。でも中身は空っぽ。


「若奥様もお嬢様も、持ち物に執着される方ではありませんでした。不要になればすぐに捨て、身の回りにはいつも必要なものしかありません。」

「徹底してるのね…」

「若旦那様がお亡くなりになってからの若奥様は、お嬢様以外のものに全く興味を示していませんでした。…ようやく食事もとられて、少しずつ笑顔が戻り、狩りがしたいと言い出したときには、皆喜びました。」

「狩り?」

「そうか、ヤコウ村は狩猟民族なんですね。だから村中に革製品や牙とかが沢山あったんだな…」

「はい、私達のヤコウ村は狩猟民族が集まり出来た村です。病人でも、狩りが出来るまで回復すればもう大丈夫だと安心できるものでした…なのに…若奥様もお嬢様も、帰ってこないのです…」



「どうしてもっと早く捜索依頼を出さなかったの?」

「あ、アッシュ?!」

「…この森では、外界との接触が極端に少ないので、町の大人達には警戒されてしまったようなのです…説明は村へきてほしい、と印してあったのも裏目に出たようで…」

「依頼は出してたんだ。」

「ハイ、そして今回ようやく…あなた方が来てくれました。ありがとうございます…大旦那様も大奥様も、きっと…どんな結果であれ……元気を取り戻してくださいます…」


深く頭を下げたお姉さんは、エプロンをぎゅぅぅっと握りしめている。

きっと、その若奥様とお嬢様が大好きだったんだ。



「…姉ちゃん、兄ちゃん。」

「「ん?」」

「見つけようね。」

「「当然よ。」だぜ。」






ミリー姉ちゃんは、お孫さんの部屋から持って来た小箱と、母親の部屋にあった枕もとのロウソクに、風系探知の魔法をかけた。


どうしても行きたいと言う長老さんを連れて、森を捜索する…




しかし

気配を探して森を歩き回り約二時間…

どちらにも反応がでない。

深い崖、険しい谷、土砂崩れのあった場所…

手掛かりは何も見つからない。



姉ちゃんは既に顔色が悪い…魔力の使いすぎだ。

マリマリ草のお茶もお腹がいっぱいで飲めなくなって来たみたい…



「姉ちゃん、代わるよ?」

「……ま、まだ大丈夫、アッシュは戦闘要員なんだから、警戒を続けてなくちゃ。」

「…うん……」

「ミリー、マリマリ草の蜂蜜漬け…口に入れとくだけでも違うだろ。かじっときな。」

「う゛……ありがと。……ぐあ゛ぁ、苦いぃぃぃ…」

「あわわわ…」



姉ちゃんの魔力切れよりも先に、心が折れそうになってた時。




  …プィィィィィ…


「……ん?」

「あっ!」

「あ、ああ!?」



「「「反応でたあぁぁぁぁぁぁあああ!!」」」




「メッシュ!もっとマリマリ草!お茶も!」

「おぅ、詰め込め!」


「(ばくばく…ごくごく…)おぐぇぇぇ……げふ…よし、行くわよ!」


「「おーー!」」


「長老、背中のってくれ!」

「アッシュ、モンスターの気配に気をつけてて!」

「ラジャー!」





  …ばたばたばたがさがさがさ…



小箱がカタカタ反応している。

ひたすら微弱な気配に不安が溢れ出しそうになる…


ただ、気掛かりなのは…


蝋燭がなに一つ微動だにしないこと…





親子なら、きっと二人でいるはずなのに…

まさか…


辛い予想が頭をぎる…






「近い!このあたりよ!」


「ライリエナー!」

「ライリエナさーん!」

「アグエナさーん!」

「返事してー!」




何もかえってこない。



「ライリエナ…」





  がさがさ…


「おい、ミリー!なんかいる!でかい…!」

「…こ、こんなときに…!!」


「……違うよ。」

「え?」




『ニャォゥ…』

『クルル…』

「ルーナン!ライ!!」



「な、なぁんだ…あんた達か…驚かさないでよ…」

「よかったぁ…」



ルマルウルフのルーナンと、今日仲良くなったばかりのサンダーブリッツキャットのライ。


灰色の毛並みに金目のルーナン。

紺毛に黄色いラインが栄えるライ。目は赤色。


村へ行く途中でであったから、ルーナンに任せて後で迎えに行くつもりだった。







「ら、ライリエナー!!」

『にゃぁぁぁぁ!!』



長老が、ライにとびついた。





「……は?」



「ああ、まさか獣姿になってしまっていたとは…力を使い果たしてしもうたか…アグエナはどうした?」

『ミャァ…うにゃぅぅ…ミャァォォォゥ…』

「…そうか、死んでしもうたか…辛かったろう…そうか、人間に…」



「あ、の…長老様…?」

「おぉ、すまぬ…実は……」


フードを外した長老の頭に…

白髪混じりな、もっふもふの黒猫耳!




「ヤコウ村の村人たちは全員、擬獣族 (ぎじゅうぞく・ティアグラ)なのです。」







「猫耳だぁあああーーー!」


いや、おじいさんだけど!

ついにでた!



つーことは村人全員、何かしらの獣耳!!

超見てええぇぇぇ!!

キターーー!!

獣っ子、キターーーーーー!

アッシュ、テンションあがりすぎです。

次回、獣っ子祭り。(何

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