ゆいこのトライアングルレッスンM〜ナイトブランカー〜
キィ....キィ....キィ
わたしが漕ぐたび小さく軋んで音を立てるブランコ
2月になって段々と日が長くなってきてはいるとは言え、薄暗くなったこの時間、吐く息は白い
わたしは人気のなくなった公園でひたすらブランコを漕いでいた
『ゆいこ、好きなんだ』
思い詰めたような顔でわたしを見つめていたむっくんを思い出す
『ゆいこは、今彼氏いないんだよね?だったら....オレ、早くゆいこに追いつけるように頑張るから....っ、早く大人になるから....っ、だからら....オレの彼女に....なってよ....っ』
ごめん....ごめんね、むっくん....
大好きだよ、大好きだけど....
溢れ出す涙に視界が霞んで行く
それを拭もせずにブランコを漕ぐ
胸が痛い
誰か...助けて....
「うぅぅ....」
堪え切れずに呻き声を上げた時
「ゆいこ?」
大好きな声がわたしを呼んだ
「へっ?...タクミ?ひろし!?....きゃぁ!」
大好きな2人の姿に慌てて涙を拭おうと手を離したわたしは、当然のようにバランスを崩しブランコから落下した
「ゆいこっ!」
「あぶないっ!」
2人の声と共の体に衝撃が走ったが、不思議と痛みを感じることはなかった
「ゆいこ、大丈夫か!?」
「いってぇ....ゆいこ、ケガは!?」
耳元で響くその声の近さに、慌てて目を開くと、わたしの下敷きになったタクミとひろしが、心配そうにわたしを見上げていた
「ご、ごめん!2人とも、大丈夫!?」
部活帰りなのか、ジャージ姿の2人は、起き上がりながら汚れを払った
「ブランコ乗りながら、手離すなよ、あぶねぇなぁ」
「ごめん、タクミ...」
「ゆいこ、大丈夫?」
「ありがとう、ひろし」
「...ってか、お互いナイス反射神経」
「....おう」
タクミとひろしがニヤリと笑ってハイタッチするのを見ながら、また涙が溢れた
「ゆいこ?」
「どうした?」
「.....わたし....ずるいよね...わたし...ずっとこのまま3人で一緒にいたいの...それが結果として誰かを傷つける事になったとしても...2人を手放せない....好きなの...ずっと一緒にいたいの....」
子供のように泣きじゃくるわたしの頭と肩に大きな温かい手が乗っかる
そっとさすってくれる2人の手の優しさに、涙は量を増すばかりだった
しばらくして、涙が落ち着いてきた頃
「....よし!ひろし!ブランコ乗ろうぜ!どっちの方が高く漕げるか競争しようぜ!」
「....小学生かよ」
「ゆいこも来いよ!2人乗りしようぜ!」
涙を拭いて顔を上げると、2人が優しく微笑んで手を伸ばした
「タクミ!高い!危ない!怖い!」
「しっかり捕まっとけよ!」
「タクミ、声抑えろ。結構いい時間なんだぞ。」
「そーだよね?職質されちゃうよ?」
「か〜んけ〜ねぇって!オレら、ナイトブランカーだからな!」
「はぁ?なんだそれ」
「そんなの、聞いた事ないよー!何、ナイトブランカーって!」
「な〜んでもいいんだよ!ゆいこが笑ってさえいれば、それだけでいい」
3人の笑い声が暗い空へと溶けていく
神様.....
願わくば、もう少しだけ....
もう少しだけこのままでいさせてください....




