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光の覇王・闇の騎士  作者: 原田広


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無意味な勝敗

闇の騎士の言葉は、アリスの胸に突き刺さり、光の覇王としての彼の使命を根底から揺さぶった。彼は、自身の光が世界を救う力だと信じていたが、もしそれが闇と同質の破壊衝動だとしたら?

闇の騎士は、その思案を見透かしたかのように、さらに追い打ちをかけた。

「光の覇王よ。お前が私を倒したところで、何が変わる? お前が放った力で、街は消し飛び、山は砕けた。それは、私がもたらす破壊と、どこが異なる?」

闇の騎士は、崩壊した大地を踏みしめながら、静かに、しかし絶対的な真実を語るかのように続けた。

「我々は、この古き世界の『矛盾』が生み出した双子の運命。お前が世界を救うというのなら、世界を滅ぼす役目もまた、私ではなく、お前の光が担うのだ」

そして、彼の言葉は、アリスの最後の抵抗の意志をも砕くかのように響いた。

「どちらが勝つかなど無意味なのだ。我々の存在は新世界を産み出すためなのだからな」

「勝敗は、この世界の終焉を示す指標にすぎない。お前が勝てば、浄化の炎で終焉を迎える。私が勝てば、虚無の闇で終焉を迎える。いずれにせよ、旧き世界は滅びる」

アリスは、自身の剣を握る手が汗で滑るのを感じた。

(全て、無意味だというのか? 父や母が命を懸けて守り、賢者が命を賭して託してくれたこの力が、ただの破壊の道具だというのか?)

彼の光のオーラが、一瞬、弱まった。彼の心に生じた迷いと絶望が、力を抑えつけたのだ。

闇の騎士は、その隙を見逃さなかった。彼は漆黒の剣をゆっくりと持ち上げた。

「さあ、光の覇王よ。無益な戦いを終わりにしろ。我々が共に世界を終わらせたとき、初めてお前の使命は完遂するのだ」

闇の騎士は、勝利を確信したかのように、終焉の刃を振り下ろす態勢に入った。


その瞬間、アリスの胸の奥底で、何かが弾けた。それは、賢者の教えでも、伝承の呪いでもない、彼自身の「心」から湧き出た、純粋な意志だった。

(破壊が、新しい世界を産む? 否!)

アリスは強く目を閉じた。彼の脳裏に浮かんだのは、かつて両親が彼を包んでいた温かい布の感触、そして賢者ヴェリタスの、最期の瞬間に見せた安堵の笑顔だった。

「違う!」アリスは叫んだ。

彼は闇の騎士の破壊の論理を否定した。破壊が新しい命を産むのではない。「守られた命」だけが、新しい未来を創るのだ。

「破壊が新しい世界を産むのではない。闇から希望を守り抜いた命が、未来を築くのだ!」

アリスは、自らの存在を否定し、世界から逃げた両親の悲しみ、そして、その両親を守ろうとした自分自身の愛こそが、この光の力の根源だと悟った。光の覇王は、ただ破壊するのではない。闇から守り抜くために存在するのだと。

彼は再び剣を構えた。その光は、もはや闇の騎士と同じく世界を消し飛ばすような「浄化の炎」ではない。それは、「命を守り、育むための、純粋な希望の光」へと変質していた。

闇の騎士は、アリスの光の変化に、初めて驚愕の表情を見せた。

「なんだ、その光は…」

「これが、光の覇王の真の力だ!」

アリスは、渾身の力を込めて、闇の騎士へと向かって駆け出した。破壊のための力ではなく、希望のための光を放ちながら。

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