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伝承
古の伝承は、星々の運行よりも確実な予言として、人々の間に根付いていた。その一節は、世界の歴史を動かす二つの極を語る。
伝承いわく「光の覇王生まれるとき、闇の騎士もまた現れる。闇の騎士、世界を滅ぼさんとする。それを阻止するのは光の覇王のみ」
大陸全土を覆う薄墨色の不安――それが、人々の心の大部分を占める色だった。彼らは闇の騎士の脅威に怯えた。しかし、賢者や学者の間で、あるいは酒場で働く者たちの間でさえ、この伝承に対する新しい解釈がささやかれ始めた。
「もし、伝承の順序が重要だとしたら?」
「光の覇王が生まれなければ、闇の騎士もまた現れないのではないか?」
この逆説的な問いは、恐怖に麻痺した人々の思考を深くえぐり、そして、ある一つの狂気じみた結論へと導いた。
闇の騎士の出現を防ぐ唯一の方法は、光の覇王の誕生を阻止すること。
人々は、世界を救うはずの光を、滅びの闇を呼び寄せる最大の原因と見なすようになった。
伝承は世界を救う英雄の到来を告げたはずだった。だが今、その伝承は、救世主を追い詰めるための、呪われた教典となり果てた。




