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秘密の守り人  作者: 北見剛介


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9/21

怜雄の仕事、七瀬の秘密

今回は若干の性的描写がございます。苦手な方はあらかじめご了承ください。

「わかったか?俺らの身元がばれた時に、彼女が巻き込まれる可能性があるってことだ」




言われてみればその通りだ。なぜ今まで考えなかったんだろう。自分たちが相手のことを調べられるのだから、相手も自分たちのことを調べることができる。そんな単純なことを忘れていた。




「・・・ここまで言えば、俺が何を言いたいかは、わかるよな?」


「・・・・・ああ。でも、できない」


「何言ってんだ。お前の都合で彼女が殺される可能性だってあるんだぞ?」


「わかってる!!」




思わず大声を出してしまった。我に返って浩二の顔を見ると、一瞬驚いた顔をしながらも、数秒後には怒りとあきれたような表情に変わっていた。




「確かに、浩二の言ってることは正しい・・俺が七瀬から、離れれば・・危険な目には合わないってのも・・・わかる。でも・・七瀬は、俺が守ってやらないといけないんだ」


「どういうことだ?」


「詳しくは、話せない。でもあいつは、もともと、いつ襲われてもおかしくないんだ」


「随分と物騒な話だな。襲われるってなんだ?」


「ある未解決事件に関係があるんだ。今はそれしか言えない」


「・・・・なるほどな」




浩二は目をつぶり、腕を組んで何かを考えている様子だった。




「今言ってた、守ってやらないといけないってのは、お前にしかできないことなのか?」


「ああ、俺にしかできない」


少しの間の後




「・・・・そっか、わかった」




納得した様子の浩二が、怜雄のことを笑顔で見つめていた。




「お前がそこまで言うなら、俺は何も言わん。とりあえず身バレには引き続き注意な」


「ああ・・・」怜雄の口から、声が漏れた。


「ん?どうした」


「いや、なんか強引に、あの子から離れろ!!とか、言われるだろうなぁと思ってたから」


「なんでだよ。お前がそこまで言うんなら、きっと何かわけがあるんだろ?」




笑いながら浩二は怜雄の肩をぽんぽんと叩いた。




「頑張れよ」


そう告げて、浩二は部屋を出て行った。





       2003年 岩森七瀬


「ナナちゃぁん、出番だよぉ」




ねっとりとした店長の声が、待機室のドア越しに響いた。聞くだけで鳥肌が立つような声だ。深く息をついて立ち上がる。




今の七瀬はワンショルダーの、極限まで胸元がはだけたドレスを身にまとっている。これを着れば、自分は岩森七瀬ではなく、源氏名の「ナナ」にならなければいけないのだ。笑顔を張り付け、男の欲求を満たす存在にならなければいけない。そう自分に言い聞かせながら待機室のドアを開けた。




廊下に出て、右に曲がり、しばらく歩くと、無機質なドア。それを開けると10畳ほどの接客ルームがある。そこには、真っ赤なソファがひとつ、存在感たっぷりに鎮座していた。




ソファには、どこかの会社の会長を名乗る男が座っている。白髪交じりの髪、たるんだ顔。どう見ても70は軽く超えているだろう。七瀬の太客であり、金は大量に落としてくれるが、セクハラがひどいため七瀬はこの客を一番苦手としていた。




「ナナちゃん、やっと会えたねぇ」




男が笑いながら、七瀬の膝に頭を擦り寄せてくる。




「やめてくださいよぉ〜」




笑顔を保ちつつ、さりげなく頭をどかす。もっとも心の中では、顔をしかめて舌打ちしていた。




「うーん、その態度もそそるなぁ。それっ」




今度は下種のような笑いを浮かべながら胸をもんできた。気持ち悪い。七瀬の心の中で




「キャッ、もう会長さんたらぁ」




可愛らしく悲鳴を上げ、笑いながら軽く客の腕を叩く。本当なら思いっきりひっぱたいてやりたいところだが、流石にそんなことをしたら首になってしまう。せめてもの抵抗として、席を立つときに靴を思いっきり踏んでやろうと心に決めた。




「それより会長さん、お酒飲まないんですかぁ?」




「うーん、そうだねえ。じゃあ、山崎の25年をストレートで頼むよ」




「はぁい」




席を立つと同時に




「いてっ!!」


「きゃっ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫、大丈夫」





そうは言いながらも靴を脱ぎ、痛そうな表情で足をさすっている客を見ると、少しすっきりした。


ボトルを取って、氷を入れ、グラスに山崎を注ぐ。出来上がったものを客に手渡すと実においしそうに飲んでいた。七瀬も何回か飲んだことはあるが、正直なところ何がおいしいのかよくわからなかった。




「山崎は美味いなぁ。でもやっぱり・・・・」




そうして会長は下心を丸出しにした表情で七瀬のほうを見た。




何が起こるかはもうわかっている。七瀬は嫌悪感が顔に現れないよう、必死に笑顔を張り付けた。




七瀬は、口の中に二口ほどウィスキーを含み、目を閉じて、客の唇に自分の唇を合わせた。すると、すぐさま客の舌が七瀬の口の中に入り、いたるところをなめまわし、犯していく。




怜雄、きついよ。助けて。




そんな言葉たちが七瀬の心に浮かんでは消えていく。きついとき、つらい時に七瀬はいつも怜雄を呼ぶ。怜雄なら声に出さなくても、七瀬の心の中にきて、そっとキスをしてくれる。怜雄と七瀬が夜に行う、お互いの口に舌を入れ、愛を確かめ合う、甘いキス。それさえあれば、七瀬の心は、どんなどん底からでも救われる、そんな気がするのだ。




七瀬がそうして心の中の怜雄に思いをはせている間に、どうやら地獄の時間は終わったらしい。客のほうもどうやら長い時間のキスにつかれたようで、その後はキスを迫ることはなく、ただただ七瀬相手にたわいもない話をしたり、たまに胸を触ってくるだけだったので、まだ楽だった。




時計を見るとちょうど23時を回ったところだ。そろそろ来る。これから始まることを想像してしまい、思わず身が固くなった。

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