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秘密の守り人  作者: 北見剛介


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新たな誓い

「でも、それじゃなんで倉庫の前にいたの?あんなボロボロで」

「単純な話だ。家を追い出されたんだよ」

「追い出されたって、家賃は払ってくれてたんじゃないの?」

「急にやくざが家の中に入ってきてな。お前があの女のガキか。出て行きな、って。理由聞いたら母さんが、借金に追われて首吊ったから、担保として家を差し押さえる。わかったら出てけ。で、荷物まとめて出て行ったってわけだ」

「そんな・・・・」


また七瀬が涙声で口を抑える。別に七瀬がつらい思いをしたわけではないのに。なんで七瀬はそこまで泣けるのか、不思議だった。


「そっからは予想通りだ。金もろくに持ってねえから、ゴミ捨て場あさったり、万引きしたりで。まあ、きつかったぞ」

「ちょっと待って。面倒見てくれてたっていう人は?その人に何とかしてもらえば」

「一応あんたの家に住まわせてくれないか、無理なら少しでも金をくれないかと聞いてみたんだが、彼氏と住むから無理、お金は自分で使える分しかないから無理。断られちまった」

「何それ。家賃が払えて、お金がないってどういうことよ」

「多分俺に金を払うのが面倒くさくなってたんじゃないかと思う。多分新たにお気に入りの男でも見つけたんだろ」

「なるほどね・・・」


もはや怒りよりも呆れのほうが上回ってしまったのだろう。七瀬は非常に長いため息をついた。

「そうしているうちにここで私と会ったんだ」怜雄の話の流れを読んで、七瀬が言った。


「ああ。飯を食わせてくれて、風呂にも入れてくれて、本当にありがたかった。で、そこからは分かるよな」

「うん」

「そうだ、倉庫に住んでる理由話してなかったな。それは家にいると、どうしても昔のことを思い出しちまうからだ。今住んでる家は昔住んでた家じゃないけどな」

「・・・・そっか。ごめんね、無神経なこと聞いて」

「こちらこそ、聞いてくれてありがとな。なんかすっきりしたよ」


初めて自分の人生を、人に話した。別に人に話すようなものでもないし、話したところで何かあるわけでもないと思っていた。でも違った。自分の人生を、大変だったね、頑張ったね、と言われるだけで、人はこんなにも救われるのか。


話してよかった、椅子に体重を預け、天井を見ながらそう思っていると、急に七瀬が抱き着いてきた。


「怜雄はここにいるよね?」

やっぱり涙声だ。もう隠そうともしていない。

「ああ、いるぞ」

「約束、覚えてる?」

「約束?」

「この前怜雄がしてくれた約束」

「ああ、離れないからってやつか」

「嘘じゃないよね?」

「もちろん」

「今日ね、本当は怜雄に仕事辞めて、っていうつもりだった」

「・・・・そうか」

「何か危ないことしてるのは分かってる。だから、不安なの。怜雄が」


女の感というのはなぜこんなにも鋭いのだろうか。それとも、七瀬が、怜雄のことをよく見ているからなのか。ひょっとしたら重たい仕事があった時には自分の気づかない変化があるのかもしれない。それを七瀬が敏感に察知しているのか。


「でも話聞いてなんとなくわかった。何かあっても怜雄は私のところに帰ってきてくれる」

「女の勘か?」

「違うよ。私の勘」


まっすぐ、怜雄の目を見て言った。泣きはらした赤い目で、しゃっくりをしながら真剣な表情で見つめてくる七瀬。普段なら、少し笑ってしまうかもしれない。でも、今はそんな気持ちにはならなかった。一度思ったら、止められなかった。


「・・・ねぇ、急にどうしたの」

戸惑う七瀬の声が聞こえるが、嫌がってはなさそうだ。そのことに今更だが、ほっとした。

「いいから。しばらくこのままでいさせてくれ」

「・・・・しょうがないなぁ」

怜雄の腕の中で、七瀬が嬉しそうに答える。何があっても自分は七瀬を離さない。何があろうと必ず守る。心の中でそう誓った。


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