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恋愛模様・2

作者: 藤井桜
掲載日:2025/12/31



 机に肘を付いて親友のみっちゃんは真剣に私の話を聞いてくれる。

 私が恋愛話をするのは滅多にないことだしこんな大事な事、みっちゃんにしか話せない。



 みっちゃん、霧島みなみちゃん、幼稚園の頃からの幼馴染で信頼できる親友。

 さっぱりした性格で長い髪を三つ編みに結んでいる。



「じゃあ、愛美(まなみ)はその人に告白するのね」

「そんなこと出来ないよ! 見てるだけでいいんだもの」

「ふーん、でもね、あたしたち卒業まで後半年しかないんだよ?

 卒業したら何時もの電車乗らないかもしれないじゃない。

 それに愛美は大学に行くんでしょ?」

「そうだけど…」

「あたしね、嬉しいんだ。愛美とこんな風に恋愛話出来るんだもの。

 光太郎とあたしのこと気にしているんじゃないかってね」



 光太郎くんは同じクラスのみっちゃんの彼氏。

 図書委員会の副委員長。

 教室の窓辺で小説を読む姿がちょっとかっこよかった。



 私も少し気になった人。

 今じゃ仲の良いお友達だけどね。



「ううん、そんなことないよ! 光太郎くんはあこがれていただけだから。

 私はみっちゃんも光太郎くんも大好きだよ」

「でもさ、もう少し彼のこと知りたくないの?」

「それは知りたいけど。でも今はお話出来たことが嬉しいから。

 あ、でもね、勇気を振り絞って明日、もう一度声を掛けようと思うの。

 今日のお礼が言えるといいかなって」

「そっか、あたしは自転車通学だから一緒出来ないけど頑張ってね」

「うん、ありがとう。聞いてくれただけで嬉しいよ」



 親友ってやっぱり大事な存在だね。

 みっちゃんの言葉だけ勇気が沸いて来る。

 明日、きちんとお礼を言おう。



 * * *



 今日も会えるかな? 何時もと同じ時間の電車。

 電車でもすぐに見つけることが出来るようになってしまった。

 今日も同じ車両に乗っていますように!



 私は祈るような気持ちで電車に乗り込んだ。

 きょろきょろと辺りを見回す。

 生徒ばかりで、大人の人は珍しい。

 あの人を探して…。



 突然、がたんと電車が揺れた。

 発車と同時に車内揺れたんだ。



 私は驚いてしかし、どこにも掴まるところがない。

 今度は違う人の背中に頭をぶつけてしまった。



 痛い。

 どうして自分はこうもおっちょこちょいなんだろう。



 ふわり。



 すると、大きな手が私の腕を掴んだ。

 一体、誰だろう?



 痴漢?



 上を見上げるとあの人が居た!

 私の腕を掴んで助けてくれた。

 今日もまた、助けられてしまった。



「大丈夫?」

「す、すみません」



 まさか、貴方を探していてよろめきましたなんて言えない。



「ありがとうございます」

「どういたしまして。こっちおいで」



 人ごみから私を守るように移動してくれた。

 爽やかな笑顔。



 やっぱり、私はこの人が好きだ。



「何度もすみません」

「いや、ケガしてなくて良かったよ」

「昨日に続いて助けてもらっちゃった」

「覚えてくれていたんだ」



 あ、気付いてくれた。

 昨日、私が助けてもらったこと覚えてくれているんだ。



「響高校の生徒だね」

「はい!」



 他愛もない話。

 制服はこういうとき便利ね。

 すぐに覚えてもらえる。

 胸元には名札も付いているし。

 この電車、朝と夕方は生徒が多い。

 でも、その他の時間はがらがらだ。



 でも、年の差、感じてちょっと寂しくもなる。



「何時も一人なの?」

「あ、はい。ほとんどの子は自転車通学かlバス通学なんです。

 バスよりも電車の方が最寄り駅が近かったので。

 実は私、自転車乗れなくて…」



 ちょっと恥ずかしかったかな。



「なるほど。でもこの電車、女子高生にはきついでしょ?」



 通い始めて二年以上。

 確かにこの満員電車はちょっと憂鬱だ。

 だって、車両が二両しかないからだ。



「そうですね。でもあと半年ですから」

「そっか。高校の三年間って早いね。

 僕が高校卒業したのなんてもう十年近く前になるのかぁ」



 あ、それじゃあ二十八歳くらい。

 私よりも十歳年上なのか。

 年齢よりもずっと若く見える。



「ふふ」

「あ、おじさんだと思って笑った?」

「えっ、そんなことないです。

 何時も一人だったからこうしてお話出来る人が出来て嬉しいです」

「そう? ありがとう。じゃあ、僕で良かったら卒業までの半年間、話相手にどう?」

「いいんですか!?」



 うわうわ、お礼だけじゃなくてお話できるなんて嬉しい。



「では、宜しくね。霧島愛美さん。

 まなみさん、それとも、あいみさん?

 僕は利賀(とが)耕也(こうや)

「まなみです」



 名札から私の名前を知ってくれた。



 利賀耕也さん。

 名前と年齢まで知った。

 こんな嬉しいことはない。

 うん? どこかで聞いた苗字だ。



「あ、そろそろ降りる駅だね。

 響高校懐かしいなぁ」

「卒業生だったりします?」

「まあね。今、一番下の弟が通っているしね」

「なるほど、ああ、副会長だ!」

「うん、多分そうだよ」

「驚いた」

「ほらほら、急がないとドアが閉まっちゃうよ。

じゃあ、また明日」



 手を振って私は笑顔で電車を降りた。

 余りにも嬉しいことの連続で。



 まだ胸がどきどきする。

 また明日も会えるから。

 明日はどんなことをお話しよう。


 電車通勤って、ここでは珍しい。

 何をしているのか知りたい。

 副会長に聞けば直ぐなんだけど、それはしたく無い。


 明日が待ち遠しくなったのだった。



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