恋愛模様・2
机に肘を付いて親友のみっちゃんは真剣に私の話を聞いてくれる。
私が恋愛話をするのは滅多にないことだしこんな大事な事、みっちゃんにしか話せない。
みっちゃん、霧島みなみちゃん、幼稚園の頃からの幼馴染で信頼できる親友。
さっぱりした性格で長い髪を三つ編みに結んでいる。
「じゃあ、愛美はその人に告白するのね」
「そんなこと出来ないよ! 見てるだけでいいんだもの」
「ふーん、でもね、あたしたち卒業まで後半年しかないんだよ?
卒業したら何時もの電車乗らないかもしれないじゃない。
それに愛美は大学に行くんでしょ?」
「そうだけど…」
「あたしね、嬉しいんだ。愛美とこんな風に恋愛話出来るんだもの。
光太郎とあたしのこと気にしているんじゃないかってね」
光太郎くんは同じクラスのみっちゃんの彼氏。
図書委員会の副委員長。
教室の窓辺で小説を読む姿がちょっとかっこよかった。
私も少し気になった人。
今じゃ仲の良いお友達だけどね。
「ううん、そんなことないよ! 光太郎くんはあこがれていただけだから。
私はみっちゃんも光太郎くんも大好きだよ」
「でもさ、もう少し彼のこと知りたくないの?」
「それは知りたいけど。でも今はお話出来たことが嬉しいから。
あ、でもね、勇気を振り絞って明日、もう一度声を掛けようと思うの。
今日のお礼が言えるといいかなって」
「そっか、あたしは自転車通学だから一緒出来ないけど頑張ってね」
「うん、ありがとう。聞いてくれただけで嬉しいよ」
親友ってやっぱり大事な存在だね。
みっちゃんの言葉だけ勇気が沸いて来る。
明日、きちんとお礼を言おう。
* * *
今日も会えるかな? 何時もと同じ時間の電車。
電車でもすぐに見つけることが出来るようになってしまった。
今日も同じ車両に乗っていますように!
私は祈るような気持ちで電車に乗り込んだ。
きょろきょろと辺りを見回す。
生徒ばかりで、大人の人は珍しい。
あの人を探して…。
突然、がたんと電車が揺れた。
発車と同時に車内揺れたんだ。
私は驚いてしかし、どこにも掴まるところがない。
今度は違う人の背中に頭をぶつけてしまった。
痛い。
どうして自分はこうもおっちょこちょいなんだろう。
ふわり。
すると、大きな手が私の腕を掴んだ。
一体、誰だろう?
痴漢?
上を見上げるとあの人が居た!
私の腕を掴んで助けてくれた。
今日もまた、助けられてしまった。
「大丈夫?」
「す、すみません」
まさか、貴方を探していてよろめきましたなんて言えない。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。こっちおいで」
人ごみから私を守るように移動してくれた。
爽やかな笑顔。
やっぱり、私はこの人が好きだ。
「何度もすみません」
「いや、ケガしてなくて良かったよ」
「昨日に続いて助けてもらっちゃった」
「覚えてくれていたんだ」
あ、気付いてくれた。
昨日、私が助けてもらったこと覚えてくれているんだ。
「響高校の生徒だね」
「はい!」
他愛もない話。
制服はこういうとき便利ね。
すぐに覚えてもらえる。
胸元には名札も付いているし。
この電車、朝と夕方は生徒が多い。
でも、その他の時間はがらがらだ。
でも、年の差、感じてちょっと寂しくもなる。
「何時も一人なの?」
「あ、はい。ほとんどの子は自転車通学かlバス通学なんです。
バスよりも電車の方が最寄り駅が近かったので。
実は私、自転車乗れなくて…」
ちょっと恥ずかしかったかな。
「なるほど。でもこの電車、女子高生にはきついでしょ?」
通い始めて二年以上。
確かにこの満員電車はちょっと憂鬱だ。
だって、車両が二両しかないからだ。
「そうですね。でもあと半年ですから」
「そっか。高校の三年間って早いね。
僕が高校卒業したのなんてもう十年近く前になるのかぁ」
あ、それじゃあ二十八歳くらい。
私よりも十歳年上なのか。
年齢よりもずっと若く見える。
「ふふ」
「あ、おじさんだと思って笑った?」
「えっ、そんなことないです。
何時も一人だったからこうしてお話出来る人が出来て嬉しいです」
「そう? ありがとう。じゃあ、僕で良かったら卒業までの半年間、話相手にどう?」
「いいんですか!?」
うわうわ、お礼だけじゃなくてお話できるなんて嬉しい。
「では、宜しくね。霧島愛美さん。
まなみさん、それとも、あいみさん?
僕は利賀耕也」
「まなみです」
名札から私の名前を知ってくれた。
利賀耕也さん。
名前と年齢まで知った。
こんな嬉しいことはない。
うん? どこかで聞いた苗字だ。
「あ、そろそろ降りる駅だね。
響高校懐かしいなぁ」
「卒業生だったりします?」
「まあね。今、一番下の弟が通っているしね」
「なるほど、ああ、副会長だ!」
「うん、多分そうだよ」
「驚いた」
「ほらほら、急がないとドアが閉まっちゃうよ。
じゃあ、また明日」
手を振って私は笑顔で電車を降りた。
余りにも嬉しいことの連続で。
まだ胸がどきどきする。
また明日も会えるから。
明日はどんなことをお話しよう。
電車通勤って、ここでは珍しい。
何をしているのか知りたい。
副会長に聞けば直ぐなんだけど、それはしたく無い。
明日が待ち遠しくなったのだった。




