第1話 大好きだよ。ぼくも、君のことが大好きだよ。
ファニーファニーと一緒にこの忘れられた世界の地図を描く。いなくなってしまったみんなのことを思い出すために。
大好きだよ。
ぼくも、君のことが大好きだよ。
ぼく 旅人の少女。ぼくっ子。(小さなころから、ヨルお姉ちゃんの真似をしている)おもちゃのようなへんてこな形をした木の短剣を持っている。(ファニーファニーが、その剣。かっこいいね。って、とっても欲しそうなきらきらした目をしてよく言っている)忘れられてしまった世界の地図を描きながら、いなくなったヨルお姉ちゃんを探している。
ファニーファニー 伝説の種族である白い月兎の美しい真っ白な少女。ぼくと出会い、一緒に旅している不思議な兎。どこかの古い民族の仮面をよくかぶっている。そういう歴史ある古い変なものが大好き。(最近はへんてこな形の杖がお気に入り)
ヨル 死人のような白い肌をした物静かな旅人のぼくのお姉ちゃん。長い黒髪をポニーテールにしているお人形のように美しい少女。ある日、どこかにいなくなってしまう。妹のぼくのことが大好き。ぼくっ子。
この世界にはきっと私たち二人だけしかいないんだよ。きっとね。
ねえ。ちょっと。ちゃんと聞いてるの? わたしの声。聞こえてる?
忘れられた世界の中で。(きみと二人だけで歩く)
君と遊ぶように。君と空を飛ぶように。……、君と夢を見るように。二人だけで、旅をする。
どこまで歩いて行けるかな? きっとどこまでも行けるよ。二人でならね。
死とはいったいなんだろう? 冷たくなることかな? それとも忘れられちゃうことなのかな?
死んでしまったあとの世界。そんな世界がきみは本当にあると思うの?
わたしたちは孤独なの。
だから、誰かとつながりたいって思う。
それはとても自然な思いなんだよ。
きっと、……。たぶん、ね。
ファニーファニーのひざまくら
ぼくはゆっくりと目を開ける。
「やあ。おはよう」
とファニーファニーはずっとぼくの顔を見ていたのか、すぐに目を開いたぼくと目と目があって、にっこりといたずらっ子の顔で笑ってそう言った。
「ここは、どこ?」
とぼくは言った。
「どこだと思う?」
にやぁーと笑って、楽しそうな顔をしてファニーファニーは言った。
ぼくはファニーファニーの太ももの上に頭をのせていた。
世界は薄暗くて、とっても近くにいるファニーファニーの美しい顔も半分くらいは見えなかった。
ぼくはそんなファニーファニーの顔を(ファニーファニーの言葉にはなにも言わないままで)ぼんやりとした目でじっと見ていた。
「もうすぐ夜明けだよ」
とファニーファニーは言った。
遠くの空を見ると、暗い夜の空はほんのりと明るくなりはじめていた。
ファニーファニーの言っている通りに、もうすぐ暗くて、深くて、とっても長かった夜が明けるのだ。
世界はだんだんと明るくなっていった。
ぼくとファニーファニーはそんな『みんなに忘れられた世界』が明るくなっていく風景を一緒に見つめていた。
ぼくはファニーファニーの顔がちゃんと見えるようになるくらいに世界が明るくなると、ゆっくりとずっと横になっていた大地の上から起き上がって、ファニーファニーの太ももの上から頭をあげて、自分の足で立ち上がった。
それから、うーん、と思いっきり背中を伸ばした。
そんなぼくを見ながらファニーファニーはくすっと笑うと「おはよう」と大地の上に顔を出した太陽の美しい輝きの中で、にこにこと笑いながら、ぼくに言った。
「おはよう」とぼくはファニーファニーにそう言った。
世界百景
わたしたちはなんて孤独な世界に生きているのでしょうか? わたしたちはなんて残酷な世界に生きているのでしょうか? それはわたしたちの運命なのでしょうか? あるいは、犯した罪の罰なのでしょうか? どうか教えてください。神様。そして、わたしたちを救ってください。導いてください。まだ見たこともない、素晴らしい世界へと。