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プロローグ ―透明に生きる女の物語―

 “誰にも傷つけられたことがない私”が、誰かに壊されたいと願うのはなぜか。―― 社会的に“完璧”な30代女性が、崩れていく日々の記録。


 フォロワー921人。

 DM、ゼロ。

 リアクション、2。


 私は深川 ふかがわ・みおその名の通り、“深くて静かな水路”のような女。表情を崩さず、感情を抑え、完璧な社会人として生きている。


「澪さんって、完璧ですよね」

 何度聞いたかわからないその言葉。そう言われるたび、少しだけ微笑む。口角だけで。うれしいわけじゃない。ただ、もう慣れてしまっただけ。

 仕事は早いし、書類ミスはない。言われたことはすぐに処理するし、頼まれたら休日でも出る。

 同期より早く役職を与えられたけど、誰よりも早く「女」として見られなくなった。

 この社会で“優秀”と呼ばれる女は、優しい男には気に入られる。でも、選ばれは――しない。だから私は今日も、誰にも命令されないまま、勝手に自分を追い詰めていく。

「支配されたい」と言えば笑われる。

「壊されたい」と言えば引かれる。

「誰かのために生きたい」と言えば怪訝な顔をされる。

 それならもう、“ちゃんとした大人のふり”をして、誰にも気づかれずに壊れていこう。


 今日は日曜日、ランチは、冷凍ミールの低糖質プラン。社内では「美意識高いですね」って言われたけど、ただ、“誰か”の目に触れるかもしれないから。

 その“誰か”は存在しない。でも私は、存在しない誰かの命令のために生きている。

 仕事のメールは、五分以内に返信する。

 会話では笑顔を崩さない。

 鏡を見るたび、完璧な私がそこにいる。

 ……なのに、通知は鳴らない。

 ねえ。

 ねえ……

 ねえ、誰か……。

 ……私に、命令してよ。


           *



賞に応募中の長編小説(約10万文字小説)なため少しづつ公開中、この続きは、8月18日ごろ、ここに編集にて公開予定。


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