05 迷創断裂 兎河うさぎ
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遅れた場合は20時ごろになるかもです(土日は固定で投稿します)
読んでくれてありがとうございます!ゆっくり楽しんで。
まずは、女の子と話すうえで重要なのは、目をみることだ。
顔でもいい。
いや、やっぱきつい。
顔の背面の景色をみておけば、相手は勝手に目を合わせてくれてると理解してくれる。そうわかっていても、オレみたいな内向的な人間には難しい。
会話で重要なのは、話しを始められるかどうかであり、それ以外は二の次だ。
そして、次に相手が話す内容を聞いてあげられるか。これにつきる。
人間の瞳を直視するのは難しい。特に女性となるとなお難しい。
陰キャなら誰もが一度は思ったことがあるだろう。
俺は今、同じ問題に直面している。
「あのーどうされました?」
「あっいえ・・・」
目の前にいる少女、高森ミサキは不安げな顔でこちらを見つめていた。
隣に座るメイはすぐにでも帰りたそうだ。
俺たちは富山市内の某喫茶店にいる。
昼時であるが、平日の火曜日とあって店内は閑散としていた。俺は人が周りにいない窓際の4人用の席にメイと一緒に座っている。
2mほどのガラス窓から差し込む光が薄暗い店内を照らしており、直射日光がモロに当たるので席を変えてほしいと思った。
それもあって、対面に座るフードで顔を隠した高森ミサキの顔もはっきりとみえた。人見知りなのだろう。相手に顔を見せないのは、失礼だと言う人もいるだろう。
だが、それは俺と同じ内向型人間と陰キャにみられる特徴であり、痛いほど気持ちがわかるし、別に指摘しない。
それと、今回の依頼はそれだけ、初対面の相手に話すのを憚れる内容なのだろう。オレたちのような専門家であろうと警戒するのは当然か。
「お二人が来ることは存じてましたが、常森さんはやっぱり来られないのですね」
ミサキは少し残念そうにいった。
ちなみに常森とは、アタイさんの偽名である。
「すみません」
「いいえ!ただ・・・その、初対面の人と話すの緊張してて・・・」
彼女が申し訳なさそうに言ったので、俺も慌てて反応する。
「あっあっ、まあーえっーと、そんな警戒しなくて大丈夫・・・なわけないか。とはいえ、常森は所用があってどうしてもと、なので僕らがこうして、常森さんの代わりになればとーー」
「そうだニャ〜そう、警戒するなよ〜人間」
俺の隣に浮かぶ謎の生き物は腕組みをしてそういった。
「えっ!?」
3人が口を揃えていった。
「なっ、な、なんですか!そ、それは!」
「ソレとはなんにゃ!無礼な人間だにゃ!」
おとなしかったミサキが、突然姿を現した奇怪な生物を前に、少し興奮した面持ちで指をさして言った。
「勝手に出てくるなって言ったじゃん!」
俺が指摘すると、
「ニャ!別にいいじゃないか!減るもんじゃにゃいし」
ぷんぷんと、怒って飛びながらそう言う。身長は30センチあるかないかだが、片手に乗るような大きさであり、ミニキャラのような見た目をしている。銀色の長髪に帽子、和洋折衷を取り入れた服装スタイルにタイツの上からブーツを履いている。見た目だけだと、妖精にも見えなくはない。見た目だけだが。
俺は渋々、ミサキにその奇怪な妖精を紹介する。
「こいつは、ニャーと言って、まあー俺たちの相棒みたいな感じ?」
「ネコイーサとも呼ぶにゃ。本名はメイニャーにゃ!!それと、相棒じゃないにゃ」
情報が多いな。ご丁寧に初対面相手に挨拶とは、警戒心があるのかないのかわからないな。
「こいつらとは、主と従者の関係にゃ」
「オレたちが主でニャーが従者か?」
隣に座るメイがニヤついていう。
「違うにゃ!我が主人でお前らが従者にゃ。と言うことで人間、安心して話せ」
ニャーが言うと、
「あっありがとう。お優しいんですね、ネコさん」
ミサキは戸惑いつつも、気さくに笑っていった。
「ニャーにゃ。特別に本名で呼んでも構わんぞ」
褒められて嬉しかったのか、ニャーはドヤ顔で言う。チョロいなこのネコは。というかネコなのか。
「いきなり出てきたら、びっくりするだろ。それと、出てきてOKって言うまで不用意にでるなと言ったろ」
「別にお前らぐらいしか、ニャーのことは見えないにゃ」
見えるといっても、世界維持機関の人間と、俺たちとごく限られた者くらいしか見えない。見える基準は本人も含めて、俺たちもわかっていない。
「危ない奴がいたらボコろればいいにゃ」
ニャ―はファイティングポーズをしながら言う。
「何そのパワー系みたいな考え。脳筋じゃん」
「うさぎ、さっきからこの人間に対して、肩苦しい喋り方してるけど、にあわんにゃ。きもいにゃ」
このネコもどきは平然と人の悪口を言う。
「うるせえーよ!初対面の子に馴れ馴れしく話すの失礼だろ」
「でしょ?あっ・・・」
俺は、相槌をなぜかミサキに求めてしまった。
「馴れ馴れしさ、出てるぞ」
メイは呆れて言った。
「ふふっ仲が良いのですね」
クスリと笑って言うミサキに俺は答える。
「ははっ、よくいわれるにゃ」
ニャーはニヤリ顔で俺とメイの方をみていう。
「それ、おれのセリフ!いや、違うな・・・どこがだよ!」
「むしろギスギスだ。オレたちはいってみればただの腐れ縁だ」
メイはひきつった顔でイヤそうに言った。
結果的に緊張状態が和んだから、ニャーには感謝すべきなのだろう。
「話が脱線しちゃって、なんかすみません」
「いいえ、おかげで緊張がほぐれたので助かりました」
ミサキがそう言うと、ニャーは自慢げな顔をする。
「そうか、そうか、ニャーが出たのは間違いじゃないと、ふふん、特別に人間、ミサキと呼んでやっても良いぞ」
「えっ、こ、光栄です。むしろ言ってほしいくらいです!私もニャーさんて呼ぶので」
「おうーそうか、そうか、では、ミサキよろしく」
ニャーが片手で握手を求めると、ミサキは笑みを浮かべつつ、ニャーの小さい手を握っていった。
「ええ」
握手が終わると、ニャーはこちらに向き直った。
「うさぎ、メイもニャーに感謝しろよな」
「へいへい、ありがとう。助かったよ」
礼を言うと、ニャーは満足げな顔をした。
「と、こんな感じでオレたちもあんたと似たようなもんさ。ちょっとは信用できたか?」
メイがそういうと、ミサキは反応する。
「えっ?あっはい、もちろん」
ミサキは話し始めた時より少し明るい表情で答えた。
すると、ミサキが被っていたフードをゆっくりと下ろした。
ショートヘアで黒髪、片眼鏡をかけて、顔立ちもしっかりしており、文学系女子といった感じだ。いも系女子かと思っていたが、美形じゃん。
俺が驚くと同時に、ニャーに言った。
「ニャー、今は話を進めたいからーー」
「わかったにゃ。しばらく黙っとくにゃ。人間、こいつらが何かしでかしたらニャーを呼ぶにゃ。直々に守ってやる」
ニャーは文句を言いつつも、その場で一回転して姿を消した。
「別に消えなくてもいいのにな」と言うと「うさぎ」と、急に肘を当てられる。メイだ。早く本題に入れということだろう。俺は、話す内容を記録するため、デバイスで録音をすることを彼女に了承してもらうと、依頼内容の話に入った。
「まず、どこから話せばいいか・・・」
彼女は、少し迷いつつ、切り出した。
「私は、その・・・子供の頃から人のーー人やモノの終わりが見えるんです」