1-8
ミルフィーとカイが警戒しながら塔を探索すること30分。
「いや何も無いな!?」
二人は既に最上階に到達していた。警戒していた罠など何処にも存在しなかったのでこんなに早い時間で到達出来たのだ。
「これより上の階は無さそうだな……。あの本の通りならこの階のどっかにエクスカリバーがあるってことだろ?」
「ああ……」
正直、カイは疑っていた。ここまで楽にのぼれるような塔に、果たして伝説の剣など存在するのだろうかと。
やはりあの本に書かれていた内容はすべて御伽噺であり、現実ではないのではないかという考えが頭をよぎる。
「よっしゃ、探そうぜー」
「……そうだな」
ミルフィーは探す気満々のようだが、カイは半ば諦めていた。どうせ無いと、タカをくくっていた。ミルフィーが諦めるまで適当に付き合ってやればいいとすら思っていた。
「……うわああああああっ!!」
隣の部屋からミルフィーの叫び声が聞こえる。カイは急いでそちらに向かうと……
「な、何だこいつ……!?」
カイが目にしたものは、ミルフィーに襲いかかる骸骨だった。
「カイ!どうやらオイラはやべえもんを起こしちまったらしい!」
「そんなもん見りゃ分かるわ!!何しちまったんだお前!!」
「だってよー!でっけー宝箱があったら触るだろ!?そん中にエクスカリバーがあるかもしれないだろ!?」
カイが部屋を見渡すと、隅の方に確かに大きな宝箱らしき物がある。成程、ミルフィーはこれに触れてスケルトンに襲われてしまったらしい。罠はきちんとあったようだ。
「仕方ねえ!オイラが引き付けてやっから、カイが宝箱を開けるんだ!」
「えっ!で、でも……!」
「武器が欲しいのはお前だろ!?さっさと取ってオイラを助けやがれ!それがアンタの最初の仕事さ!」
「……分かった!」
幸い、スケルトンのターゲットは最初に宝箱に触れたミルフィーのみのようだ。ミルフィーが宝箱から離れるようにスケルトンを誘導する中、カイはバレないようにゆっくりと宝箱に近づいていく。
「……よし」
無事、宝箱に辿り着いたカイは急いで宝箱を開ける。早くしないとスケルトンのターゲットがこちらに移るかもしれない。
ミルフィーもよくやった、と言いたげにカイに目配せした……が、
「……はああぁぁぁぁ!?!?」
宝箱の中身を見てカイは思わず叫んだ。叫ばざるを得なかったのだ。
宝箱に入っていたのは……ただの釘バットだったのだから……。