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ファンタジークロニクル弐〜弐と言っているもののこの話が序章なんだけどどう思う〜  作者: 有氏ゆず
第一話 二人が出会いし時、運命は動き出すんじゃないかな
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1-5




カイには夢があった。この村から飛び出して、広い世界をこの身で旅してやるという夢が。

そして魔物を狩り、お金を貯め、母親に楽をさせてやろうという夢があったのだ。


「でもこの剣じゃ無理だよな……」


だけど、旅に出る為の準備すら出来ないほど彼には金が無かった。


「……やっぱ、新しいの買う金とかないんだろ」

「……っ、聞いてたのか」

「まあな……。オイラ守るせいで壊しちまったんだろ、それ」

「それは違う。この剣はもう限界だった。このまま旅をしても、俺は途中で魔物に殺されていただろうさ」


男にはかける言葉が無かった。空気が悪くなったことを察したのか、カイは話題を変えようとする。




「……ああ、そういえば何か思い出したことは無いのか?」

「うんにゃ、何にも」


男はお手上げ、と言わんばかりに両腕を上げる。


「そうか。とは言っても何か呼び名があった方が良いだろ。だいぶ不便そうだし」

「でも自分の名前すら分かんねーんだよなあ」

「仮の呼び名なんだからこの際何でもいい。好きだったものとか思い出せないのか?」

「うーん、好きだったもの……ねえ」


男は考え込む。自分がニホン出身だということは思い出せたのだ。何か他に思い出せることもある筈だろう。




「……ミルフィーユ」

「ん?」

「ミルフィーユが、好きだった……ような気がする」


その時、男の頭にぽつんと浮かんだ単語が "ミルフィーユ" だった。男はそれを口にする。


「ミルフィーユだと長いな。ミルフィーはどうだ?」

「えー!何か響きが可愛すぎねえかい!?」

「それでも呼び名が無いよりマシだろ。何か思い出すまではお前の名前はミルフィーな」

「み、ミルフィー……ならせめて、苗字ってことにするぜ」


男は不服そうに呟く。こうなったら一刻も早く自分の名前を思い出さなくてはならない、そう心に誓った。




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