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「待てコラ!話はまだ……っ!!」
今度は青年の後を追いかけようとするサンゴ。それはさせまいとケンは必死で取り押さえるが、そろそろ限界だ。
しかし、そこに救世主が現れてくれたのである。
「……どうしたんだ、ケン」
「その様子じゃ、何かやらかしたようですね?」
カイとセーヤだ。彼らは1階で情報収集を終えたのか、それとも2階の騒ぎを聞きつけたのか2階へと上がってきたのだ。
「二人とも!サンゴがやべえ!」
「まあ、それはいつものことですねえ」
「今度は何をやらかしたんだ」
「やらかしてない!あのクソニンゲンが……!!」
騒ぐサンゴを押さえつけながらもケンはとりあえず事情を説明すると、二人は納得してくれた。
「それはそれは……随分と "良い" 性格の人だったみたいですね」
「何かサンゴに似てるし、気が合いそうなんじゃないか?」
「何処が!?あんな性格悪い奴見たことないんだけど!?」
どうやら彼は自分を省みるということはしないらしい。三人は苦笑した。
「それよりどうしましょうか。突然酒場の客が全員帰ってしまったのでこちらに上がって来たのですが」
「……帰ったァ!?」
ケンは辺りを見回すが、確かに2階にも客は居なくなっている。先程までは確かに居た筈だが。
「まさか、騒ぎ過ぎたか……?」
「何?ボクのせいにすんなよな!」
いや、八割くらいはサンゴのせいだろう。騒いだのが原因だったとすれば、だが。
「それは無いと思うぞ。1階に居た客も皆帰っちまったからな」
そういえば店員すら居ない。まさかそんなことがあるのだろうか。
「……とりあえず外に出てみたけどよ。何だこれ」
何だか、町中が静かな気がする。人っ子一人居ないように思える。これは流石におかしい。王都なのに。
「まるで俺達以外全員が消えてしまったみたいだな……」
「ちょ、怖いこと言わないでよ……!」
先程まで騒いでいたサンゴもこの異常事態には流石に大人しくなり、身を震わせた。
「とにかく、人を探しましょうか。何処かに居るかも……」
「……何やってんだいアンタら!!」
セーヤが言い終わる前に突如、女性の声が響き渡った。声のする方を振り返ると一人のおばさんが家から顔を出し、手招きしている。
「ん?アンタらって……オイラ達のこt」
「早く来な!戦争が始まるよ!!」
「えっ、ちょっと待っ」
「早く早く!靴の泥なんて良いから入りな!!」
「いや人の話聞い」
「さあさあ!早く!」
結局おばさんパワーには勝てず、四人は無理矢理おばさんの家に押し込まれることになったのである。