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「母さん、頼む。こいつを休ませてやってくれ」
村に着いてすぐに見えた小さな家にカイは入る。
「あらあら!どうしたの!剣の稽古をしていたんじゃなかったの!?」
家に入るとすぐに初老の女性が慌てて駆け寄ってきた。カイの母親だ。
「狼に襲われてたところを助けたんだ。頭痛が酷いようだから休ませてやりたいんだけど……」
「ほらほら!そんなこといいからさっさとアンタの部屋に上がってもらいなさいな!」
母親はカイの説明の途中でグイグイと背中を押してくる。どうやら話が早いらしい母親だ。
「ほら、ここで寝てくれ。上着だけ脱いでもらうけどな」
そのままカイの部屋に押し込まれ、男は上着を脱がされてベッドに寝かされる。ベッドを汚さないために仕方ない。
「すまねえ……世話になる」
「気にするな。こっちこそ汚い部屋で悪いけどな、ゆっくり休んでくれよ」
男は安心したのかゆっくりと目を閉じ……すぐに寝息を立て始めた。
「しかし……この辺では見かけない服装だよなこいつ」
どうやらニホンという国の出身のようだが、カイはそんな国を聞いたこともない。服装も変だし、カイの知らない遠い国からやってきたのかもしれない。……しかし、記憶がないようなので聞くことは出来ないが。
「……頭が痛むみたいだし、無理させる訳にはいかないな」
カイは何とか男から情報を聞き出したかったが、何か思考すると頭が痛むようで無理はさせたくない。
それに彼は今、それよりも重大な問題があった。
「剣……どうすっかな……」
先程は男の為に平気な顔をしていたが、カイの剣はこれしかなく、新しい剣を買うような金も無かった。勿論剣が限界を迎えていることはカイも気づいていたが、金がない為無理矢理使っていた訳である。